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遥かに遠き九州の、南の果ての宮崎の、そのまた果ての日南市、黒潮洗う温暖な、その懐で育ちしが、はるばるゆきて日の本の、花のお江戸の一角の、その名も高き府中とう、ゆかしき街に住む身とぞ。
かの地にあっては名花ぞと、呼ばれしなれど如何ならむ。山家育ちの吾なれば、花のお江戸で猿芝居、さあさあとくと勤めます。
命名 美蕾の華
化けた。変身した。
昨年熊本県展で蘭友松根氏よりいただいた一鉢である。
弁舌ともに狭かったのに、ご覧のとおり広弁広舌。ただし、弁裏にやや色が乗る。昨年度は、完璧に澄んだ黄色だった。
ちなみに、美蕾とはわが孫にて候・・・
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人生は小説より奇なり。
まさかこの身が、30年近く住み慣れし我が家を離れ、東京郊外の府中へ住むことになろうとは・・・・わずかのスペースに、えびねたちを押し込め、済まぬ済まぬと心のうちで詫びながら・・・・そして花咲く季節の到来。
花芽仕上げの最終期に与えたストレスは半端ではなく、間違いなく花の形がおかしいのである。
この花は黄金竜という。
蘭友松根氏にいただいた。弁舌ともに広い。大きい。
なまなかの花では太刀打ちできないであろう。
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もともとは中輪であるが、小輪となった。
与えたストレスからこうなったと思われる。
それでもこの花の特質は顕著である。丸い。色むらがない。舌の色が弁の色とほどよく釣り合っている。そして、弁の色が濃い。
命名 夏美の華
実は別に名前がある。それは秘密・・・・
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コオズ。
実のところ、私はニオイ系は好きではない。
この群れは、一般的に弁が細い。ま、それは良い。一番気に食わないのが、だんだん反り繰り返ることである。原種としての特質であろうから、それが悪いというのではない。私が嫌いなだけである。
この個体は反らないのである。最後までこの形を崩さない。細弁であるが、反らない点が気に入った。名は無い。3年前鹿児島の県展で安価に購入。
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コオズ系的花色。赤と青が混合したような色で、後冴えしてくる。相当に濃厚な色彩となる。
蘭友松根氏がフラスコ苗から育て上げた逸品。
ストレスを与えてなかったら、もっと凄い花となろう。来年が楽しみな一鉢なのである。今年は中輪であるが、来年はもっと大きく広くなるであろうと予想している。
名は無い。
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ご存知「桔梗の姫」。
この花が世に出て30年は過ぎている。今栽培している人は、数少ないのではなかろうか。人工交配の技術が進み、この花の桔梗色など、水とソースくらいに差がつく濃色の青紫花が出現している。だが、私はこの花の姿に野生の息吹を感じるのである。
府中へはわずか100鉢しか持ってこなかったので、例年脇役でHPへは遠慮してもらっていたが、今年は登場してもらった。
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民子の華と名を付けている。
もう10年くらい前に潮路ガーデンで購入。そのころは、結構良花の仲間であった。紫の乗った緑弁、濃い舌。小輪ではあるが魅入られたのである。
ところが、今はもうかすんでしまった・・・比較すればであるが・・・問題はこの自分が好きかどうかなのだ。
私は大好き。花として整っている。可愛い・・・
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人工交配のコオズ
鹿児島・内之浦の「潮路ガーデン」にて、4年くらい前に購入。
これも花の終末期になっても、反らない個体なのである。
ニオイ系を大切に保存されている栽培家は多い。種の保存ということで、それは価値あることである。ただ、原種イクオール鑑賞的価値がある、とは私には思えない。私のえびね栽培のスタンスは、あくまでも「美」の追求なのである。
形と色のバランス、色彩的に差がある。そこに尽きる。どんなに色が良くても、形が良くなければ、私は美しいとは思えないのである。
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亜紀という銘がついている。
鹿児島・内之浦「潮路ガーデン」で作出された、初期の名花である。
緊張感あふるる弁と舌が、なんとも楽しい。見飽きない。だが今年は作が悪い。花が小さい。仕方が無いと言えばおしまいだが、来年はなんとか良い花を咲かせたいものである。
府中に来たので、今年は潮路ガーデンを訪ねることが出来ない。飛行機代を出して行けるほど、年金じじいはリッチではないのである。無念なり・・・
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名づけて紫艶梅
まさに名づけて妙。艶やかな紫の光が、花びらの中から放射されているよう・・・蘭友宅万氏の命名であり、氏からいただいた貴重なえびねなのである。
形といい色といい調和が取れている。しかも花びらが厚い。それは、形が最後まで崩れない、ということ。欲張れば、舌がもうすこし広ければ完璧である。
宅万氏についてすこし紹介しておきたい。
氏はえびね栽培に、並々ならぬ情熱を持たれ、われわれのリーダーであった。いつも己の視点をもって花を選別し、決して妥協されなかった。私はその姿勢から多大の影響を受けた。松根氏と宅万氏の選別したエビネが、私の蘭舎の3分の2を占めていたのであった。
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およそ30数年前、私が地区のえびね愛好会へ入会した年の花展に出品されていた大輪のタカネ。時の会長が山から採取してきたとか。銘は家宝。
翌年小苗を3万で譲ってもらった。その株は育ったが、4年後くらいに駄目になり・・・この株は何代目であろうか・・・昨年松根氏に乞うたものである。
とにもかくにもこの花は、おらが国さの山で採取されたものである。地どれなのである。何とか私が死ぬまで栽培したい。
まだ木が貧弱で、本来の咲きではない。もっと大きく舌も1枚で豊潤である。見ておれ、来年は・・・・
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花数が少なく作が悪いが、これもおらが国さの地取れなので、今年は紹介。桔梗や光琳と同じ理由でもある。
バランスの良いヒゴ。色もパステル調の黄色で、たいそう目に優しい。名前は残月と付けられている。
宮崎県南部から鹿児島県北部にかけて、かってえびねの宝庫であった。ヒゼン、ヒゴ、地、タカネ、サツマ、キリシマ、黄、夏えびねなどが地を覆うごとくであった。山中で1面黄えびねの群生に出会い、呆然と立ちつくしたことが、昨日のようである。
しかし、今は乱獲により、ほとんど消えてしまった。かくゆうこの自分も、自然破壊に手を貸したひとりであり、慙愧に堪えない。
だから、人工交配花がのさばっている時代にあって、せめて今手許にある自然種は大切に育てたいと思っているのである。
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かって一世を風靡した光琳
今でも十分に通用する黄弁紅舌の名花である。桔梗の姫同様野性の風格がある。
九州南部の名花には、このほか、織姫、天竜、紫晃、日向、早春等多士済々であったが、今九州で取りざたされているのは、天竜くらいではないだろうか。
私は天竜はあまり好きではない。舌がトンボである。弁の見事さに比べ貧弱、釣り合わない。だからついに手に入れなかったのである。
天竜には思い出がある。23年前だったと思うが、宮崎県串間市北方という地区で初のえびね展示会が催された。業者が金銀をとったふた鉢を引き取りたがったが、一鉢だけが彼の手に入ったのであった。そして、彼は「天竜」と名づけ世に出したのである。金賞をとったもう一鉢は、実は私が所有者の庭植えの中から選抜したものである。当然のこととして、私も分株して貰っていた。その前途は・・・以下次号。
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府中に来て、鉢は、カンレイ紗を1枚掛けただけで、路地に置いてある。かなり光が当たる。この花は丹頂であった。だが、とてものことに白紅とは見えない。いかに採光が重要であるか・・・
それとも、これも移転で与えたダメージか・・・
さて、天竜と並んで賞を取った株は、今松根氏と私しか栽培していない。当時審査をしたえびね栽培の達者が分株して持ち帰ったそうだが、失敗したそうである。かくゆう私も一度駄目にした。幸い宅万氏が増やしていたので、譲っていただいた。
この花は名花ではないと思う。ついに、天竜を抑えて金になった時のような花を、誰も咲かせる事ができないでいる。誰が栽培しても同じように咲かせる事が出来る、というのが名花の条件と思う。
天竜は、誰が作ってもほとんどむら無く同じ花を付ける。だからこそ、名花ともてはやされるのである。
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さて、私が栽培してきたもう一鉢の金賞花・・・どうしても当時の咲きを再現できないでいる。
左の写真を見ていただきたい。こやつが、まさにその花である。弁狭く舌小さく割れている。とうてい天竜には及びもつかない。一度宮崎の県花展に出品したが、そのときも舌は割れていた。宮崎えびね愛好会の花の紹介誌に出したこともあるが、弁は良いのだが舌が今ひとつであった。
死ぬまでに完璧な姿を見れるのであろうか・・・蘭友松根氏も栽培してくれているので、氏の手腕に大いに期待しているところである。
名は 和光 という。
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あなたのきれいな歯が
がりりと噛んだ
トパーズ色の香気がたつ
その天のものなるレモンの汁は
ぱっと・・・・・・・・・
原典とは字句が違っているかもしれないが、わが愛唱する「智恵子抄」の詩の一部である。
この花が世に出たとき、トパーズという名に惹かれ、ついで、さわやかでレモンの汁のような香気をかんじさせる黄に魅了されたのである。
だが、この写真はそうした天のものなる高貴な雰囲気を感じさせてくれない。作が悪い。映し方がなってない。
ちなみに、この花の名は トパーズ
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安寿という。
宅万氏より頂いた。
潮路ガーデンの初期の花である。丹頂系で光をもっと絞れば、弁裏の色は取れると思う。なにしろ、カンレイ紗1枚で、路地におきっぱなし。光の当たりが強すぎる。
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宅間氏より頂いた「大王妃」
この花がいちばん移転のダメージを受けているようだ。
白弁紅舌の名花なのに、迫力が無い。舌が小さい。花数が少ない。
私が栽培している丹頂系の花は、6鉢あるが、どれも良くない。
そもそも白という色は、葉緑素の緑に対して、隔絶したものなので、強く発色しないのだろうか・・・だから、ダメージも白系に強く出るのかも・・・
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昨年潮路ガーデンで入手。
ところが化けた。昨年とは大違い。見事に黄弁濃紅舌となった。下に昨年の花を展示する。
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いちおう太陽
出来が悪いので恥ずかしい。咲いた鉢数が少ないので、あえて恥を忍んだ。
ずい分旧い花である。当時交配の試行期で、業者のカタログには野生種と載っていた。しかし、私たちは疑ったものである。
本咲きの太陽は、こんなものではない。弁は丸くそろい、舌はあふれ出るように広い。
ずっと渇望し2万円代になって、やっと鹿児島県展を見に行ったとき手に入れた。
いまでも愛着のある一鉢。
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小輪咲きであるが、ほんとうのところは分からない。
初めて見る花なのである。株も小さい。名も分からない。
昨秋病を得た蘭友が、私に託した一鉢である。
澄んだ黄弁とピンク色の舌に白い覆輪、遠目にも目立つ。来年どう変わるのか、楽しみではある。
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宅万氏の花、桃紫梅。
グチャグチャ咲きだが、本来はもっと花間があり、高く伸びる。
色は濃くないが、厚く大きい。迫力はある。来年を期待したい。
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日 照
潮路ガーデンの作出花
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年輪という名が付いているとか。ばってん、ほんなこつかいな。
宅万氏がこんな花を好んだとは思えないのである。もしかして、府中へ移転するときに、名札を刺し違えたのでは・・・
もはや、松根氏に尋ねるしか、本当のことは分からない・・・
花形は良い、色もむらが無い、弁舌ともに広く、バランスが取れている。だが、何しろ派手、派手すぎる。
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写真が悪い、悪すぎる。
緑弁白舌の名花には見えない。夕陽を当てて撮影した結果が、このざまなのである。
潮路ガーデンの初期の名花のひとつである。
岩清水という。
魅力を伝えられないのが残念である。
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いま一番お気に入りの花。弁の裏表ともに澄んだ黄、まったく濁りが無い。舌はほどよい桃紅色。弁舌の付け根が白く抜けているので、窮屈さを感じさせない。
「西施」と名づけたお気に入りが、今年は咲かない。代わりにこの花が慰めてくれる。出自は潮路ガーデン。
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悲しい
木の出来は上々なのに・・・
白弁紅舌の名花を・・・かくのごとく・・・
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府中へ移転してもう約50日。時経的に開花した奴を紹介してきたが、100鉢のうちわずかこれだけとは・・・
はたして来年満足のいく数の花を揃えられるのであろうか・・・・
わずかのスペースのなかで知を振り絞らねばなるまい。
左の花は宅万氏が託した潮路の名花・・・だが、このショットでは、名花と呼ばれるほどのものは、見出すことが出来ない。ま、無理も無いが、あえて掲載した。
他にも「鬼雷光」「金剛」という名花を預かってきているが、来年は咲くであろうか・・・?
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おらが国の地どれ「爽」
もはや30年近くになろうか、私をえびね蘭の世界へ導いてくれた大先達・滝本氏は、長身痩躯、白髪面長の紳士であった。ただ野山からえびねを採取してきて庭に植え喜んでいたある夕、彼はうちの庭先に忽然と現れ私のえびねを吟味して、こう言ったのだった。
「駄物ばかりですな」
彼が私に駄物ではない見本として呉れたのが、緑弁白舌の「さわやか」と彼が名づけた花だった。宮崎の花の紹介誌には「翠」という名で載っている。
氏は21年前に逝ってしまわれた・・・・
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昨年潮路のお嬢様が土産にくれた花
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潮路の女神
かってずい分この花には執心した。退職してはいなかったが、高価だったので手が出なかった。近年松根氏が手に入れ分株してくれた。
木が小さいので本咲きではない。
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緑弁紅舌は遠目にも目立つ。女性に好まれる色の組み合わせである。かって楊貴妃という緑紅が一世を風靡したが、交配技術の進歩とともに霞んでしまった。そのあと山水という名の交配花が持て囃されたが、さらに上を行く超絶花が出てきている。
私も緑紅は大好きである。しかし、これという名花を栽培していない。楊貴妃2という潮路の花を持っているが、特級花というには
いますこし物足りない。
この花は「秀翆紅」という。潮路の花である。
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写真が悪いが、色を紹介したかった。
天紫という。
見事に青紫である。
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素心の黄。
天黄という名が付いている。
蘭友松根氏より頂戴。
本咲きはこんなものではない。
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