第29回マーチングバンド・バトントワリング全国大会について
田野中学校教諭 斉藤 眞人
去る1月19日・20日の両日、東京・日本武道館において第29回マーチングバンド・バトントワリング全国大会が開催されました。宮崎からは久保田宏之・真理先生のマーチング親子鷹を先頭に、三股中学校吹奏楽部の中山先生ご夫妻、都農高校吹奏楽部の大枝先生、それに不肖私田野中学校吹奏楽部の齋藤と生徒10名と、大挙しての上京となりました。まずもって東京まで勉強に駆けつけた面々の熱意に最大の敬意を表したいと思います。特に今年は小林ジュニアマーチングバンドの皆さんの全国大会出場という快挙もあり、これを機に宮崎のマーチング熱も一気にヒートアップさせて行きたい所です。以下昨年に引き続き2回目の鑑賞をさせていただいた感想を述べてみたいと思います。マーチングに関してはいまだに久保田先生親子の後塵を拝してばかりの素人同然の私です。的を得ない感想になりはしないか心配ではありますが、あくまでも感想ということで心広くお許しいただければ幸いです。
@演奏あっての演技である! もしマーチングの演奏だけを録音したCDと、演技のみで音の入っていないビデオとがあったとしたら、どちらを購入するでしょうか。今回私が一番痛感させられたことは、何よりも演奏、いわゆる音楽そのものを大切にしなければならない ということでした。良い音・良い音楽には、自然とそれに見合った演技が伴っていたように思います。編成の大小にかかわらず、一人一人がしっかりとその楽器本 来の豊かな響きで演奏することが何よりも大切ではないでしょうか。その意味で九州代表の千代田中・諸富中の両校は、きわめて小さい編成でありながらも堂々としたサウンドであった点が大変印象的でした。大編成の団体でも無理やり複数のソプラノサックスを編成していた団体が多かったようですが、ピッチのずれなどが耳につき、決して効果的だとは思いませんでした。またパーカッションも、音量的なバランスよりもむしろ、ピット・バッテリーに関係なくしっかりと叩けているかどうかが大切だと思いました。簡潔に言うと「そろっているかどうか」ということになるのでしょうか。そろっていさいすれば相当な音量でも音楽的に受け入れられるし、いくらバランスに配慮してもそろっていなければ邪魔に感じてしまいました。見てくれの格好よさに惹かれてあれこれと視覚的な部分に目が言っていきがちな日ごろの自分の指導を、大きく反省させられました。やはりサウンドです! A個性をどう表現するか・・・ 一般の16団体は、いずれも本当に見事でした。その団体ならではの個性が充分に伝わってきたように感じたからです。どの団体も地区予選を経て武道館に集っているのですから、一応のレベルはクリアしていて当然です。そのレベルの中でいかにオリジナリティを見る人に伝達するのか。とても大切な問題です。今年は全般的にアジア物、日本的な物が流行していたように思います。ややもすると「またか」みたいな雰囲気を感じてしまいがちですが、九州代表の北筑高校の「蒼風」と、玉名小学校の「玉杵名万象」は、ともに既成のものとは一線を画した見事な説得力でした。更に福大大濠の九州ではおなじみのバンカラな気質も、充分に武道館のお客さんのハートをつかんでいました。また大牟田高校の「カルミナ・ブラーナ」は、同じ選曲が3団体連続しましたが、しっかりと大牟田の風を感じることができました。過去の団体のいわゆる「ネタ」を模倣する(わかりやすく言うとパクリ!)もかなり多かったようです。私は「パクリ」肯定派です。良い物を真似するのはとても自然な発想だと思います。大切なのは「真似する」ことよりも「どのように真似する」 のかではな いでしょうか。創価学会鹿児島の皆さんは、創価ルネバンの「ライド・ザ・ウインド」のバスドラムの感動のエンディングを彷彿とさせる堂々のシンバル隊の登場、見事でした。「他団体の模倣」「斬新な発想」「伝統スタイルの踏襲」いずれもとても大切です。自分たちのバンドはこうありたいという想いは、なによりも崇高な誇りではないでしょうか。 B恐るべし!ガードの表現力 明らかにこれまでの私の認識が浅はかでした。ガードの重要性は充分に理解していたつもりだったのですが・・・恥ずかしいです。ただ上手に旗をふれば良いとか表情が豊かで演技力があるとかいうレベルではなく、バンドの表現をサポートする立場から一歩も二歩も抜きん出た「独立した」表現体となっているように感じました。またどの団体もガードのデザインや手具等の工夫が見事で本当に楽しめました。小林ジュニアマーチングバンドのガードの皆さんの愛らしい演技が印象的でした。また一般の人気バンド「横浜インスパイヤーズ」のガードの男性が本番直前に客席に知人を見つけ破顔一笑素晴らしい笑顔を見せたのを見て「ああこの人たちは心からマーチングを愛しているんだなぁ」と感動しました。その思いが決して不自然ではない素晴らしい演技力につながっているのではないでしょうか。 C客席のマナー・・・ 宮内庁で雅楽を聞いているのではないのですから、ある程度のリラックスは当然あるべきでしょう。感動したときの自然発生的な歓声等は、演技も盛り上がるしなによりも出演者の皆さんの励みになるはずです。しかし、私の周囲にいた関東のとある有名校のOBの皆さんの態度は、少々残念なものでした。マーチングをやった者であるならば、その苦労はわかるはずです。ましてや1月まで続けてきた中学校3年生・高校3年生の頑張りは、本当に胸を打ちます。だからこそ演技の良し悪しを超えた崇高な次元に、我々は感動するはずです。あのOBの諸君もついこの前までは出演者だったはずです。われわれ指導者の指導のあり方を考えさせられました。 D早く来年にならないかな・・・ 見終わっての一番の素直な気持ちです。本当に素晴らしい大会でした。田野中の生徒10名は、憧れの創価ルネバンのあまりの素晴らしさに、天理愛町のビデオに釘付けになったあのヘリコプターの登場に、涙を流して感激していました。つれてきて良かったなぁと、全団体の出演者の皆さんに感謝の気持ちでいっぱいです。新しいアイデアもいっぱいいっぱいもらいました。そう、大切なのはこれからこの経験をどう生かすか。わざわざ東京まで我が子を生かせた保護者の方々の想いを受け止めて頑張らなければなりません。「百聞は一見にしかず」武道館の空気は武道館でしか味わえません。今から来年の大会が楽しみでなりません。 |
以上簡単ではありますが、私の感じたことを気楽に書いてみました。他にも吹連主催のコンクールのあり方などにも考えをめぐらせましたが、いずれにせよマーチングは本当に素晴らしいものであることをまたまた痛感させられました。今の久保田先生の御歳まで私はあと28年・・・そのとき大会は57回。一生マーチングからはなれられそうにありません。また今回高等学校の部の招待演奏で見事な演技を披露した沖縄県立西原高等学校の米澤君。彼は久保田先生の都城西中時代の教え子でもあります。その雄姿を見ながら、親元を離れての彼の3年間の苦労に目頭が熱くなりました。教え子の雄姿こそわれわれ教員の一番のエネルギーであることもあらためて実感させられました。留守番の部員に大会のビデオを見せることが待ち遠しくてたまりません。以上拙文にお付き合いいただきありがとうございました。