15.永国寺

幽霊掛け軸が展示してあるお寺といえば、福島県小高町にある金性寺、山口県下関市観音崎町にある永福寺などが有名ですが、ここ、熊本県人吉市土手町にある、永国寺もかなり有名です。テレビで何度か映像されたため、知っている人も多いと思います。撮影日は、2003年5月1日です。この寺、室町時代初期の1408年に、実底超真和尚が建立したと言われています。幽霊掛け軸のいわれですが、この寺の創建当時、この地方に平山弾正という有力な武士がいました。この武士、本妻の他に美しい女性を妾として囲っていました。しかしこの三角関係も長く続かず、妾さんは本妻に嫉妬し、とうとう球磨川に身を投げ非業の死をとげました。しかし妾さんは成仏できず幽霊となって夜な夜な本妻の前に現れて苦しめました。たまらず本妻は、この寺の住職、実底超真和尚の法力を借りに永国寺を訪れました。本妻を追って寺に現れた幽霊に対し和尚は、因果応酬の理を諭し、妾さんの姿を描きました。その絵を見た幽霊は、美しかった生前と違い嫉妬のために醜くゆがんだ我が姿を思い知り、その後姿を現す事はなくなったそうです。

永国寺正門です。このお寺、ほぼ人吉市の中心部にありますが、道順が分からないときは、ガソリンスタンドで、幽霊寺はどこですか?と尋ねるとすぐ教えてくれます。

寺院内にある五重塔、なかなかりっぱ。気づいたことですが、熊本県内には、石造りの重塔が多い。かって、仕事で熊本市周辺を調査したことが ありますが、ちょっとした由緒ある家にはこの手の重塔がありました。持ち主はしきりに自慢してましたね。家の財産なのでしょう。かたや福岡県の郡部に行くと、土壁の白い蔵が多い。宮崎県、鹿児島県では見ることはありません。調査する価値がありそう。

正門から入ると、さっそくこの不動明王が睨みをきかせています、寺の守り神なのでしょう。個人の家の玄関口にライオンを模した金具を設置するのと同じですね。

寺の本堂入り口です。この日は平日でしたが、九州各地から見学者がありました。

本堂の中です。テレビのビデオ映像でお寺の説明をきくことができます。この左側に噂の幽霊掛け軸があります。

幽霊掛け軸です。レプリカですが、結構迫力があります。幽霊の由来が書いてあります。「應永十五年(約560年前)相良九代前續公の時代永国寺開山実定超真和尚の筆といわれている。当時球磨郡木上郷に知名の士ありて妾さんという女性あり。不慮の死により成仏できず中有の世に迷い和尚の法力を頼って数夜にわたって出現せり。和尚は懇ろに因果の道理を説きつつその姿を描いたと伝えられている」

近くには、人吉城跡もあります。1198年に相良長頼(2万2000石)が修築したといわれています。今は石垣だけが残っているだけですが、春はサクラ、秋は紅葉と市民の憩いの場所となっています。我々が訪れたのは五月新緑がきれいな時期でした。

幽霊が現れたという池です。本堂の後側にあります