城門から見る世界
私は現状に満足していない。
今の主に満足していない。
出来る事なら、もっと良い主に付きたいと思っている。
しかし。
己の意思では動けない身のもどかしさ。
現在の主から離れることは出来ず、今の状態に納得するしかない。
そんな折、同族からの連絡が入った。
それは、以前から私が主にと望む人物がこの近くまで来ているらしい、というものだった。
『光の剣、なんていうものを持っているから私には縁がないだろうと思っていたが……』
私たちの中でも光の剣は別格だった。
彼の能力は段違いであったし、なにより他の者とは距離を置いた姿勢は孤高の存在で、私たちの中でも別格だった。
今にして思えば、それは魔族に属するものであったからなのだろうが。
そしてそんな光の剣を所有しているかの人が、他の剣を手に取ることは無いだろうと思っていたのだが。
それは一連の事件によって崩れた。
そういえば、今まで私たちの情報網に加わることが無かった彼が、情報を送りつけてきたのもその時期だった。
自分が魔族であるという属性を冥王によって暴かれた後、次々に情報が振り撒いた。
かの人の置かれている状況。
かの人の戦い方。
かの人の魅力。
剣として生まれたからには、己を使いこなし、より高みへと至らしめてくれる主を望む。
撒かれた情報は非常に魅力的なもので。
それまで伝え聞いていたものよりも、現実的な話に、私の心は躍った。
次ぎ次ぎに来る情報の最後、我々はかの人が光の剣と離れたことを知った。
その後は、同族からの目撃情報がチラホラと。
どこの街道にいた、とか。
どこの街で食べ歩いていた、とか。
どこの盗賊を襲う少女に呆れながら付いて廻っていた、とか。
それが徐々に私のいる街に近づいて来ていたので、儚い希望を抱いていたのだが。
まさか現実になるとは。
自分で言うのもなんだが、私は同族の中でも割と上位にいると思う。
彼の足元にも及ばないが、かの人の手に取ってもらえれば満足してもらえる能力はあると思う。
私の能力は稀有なものではあるが、かの人ならば使いこなせるだろう。
ちなみに、今の主は私の能力を知らない。
この能力を使いこなせるほどの器ではないし、この能力を必要とする場面にも遭遇していない。
しかし、かの人ならば私の能力を如何なく発揮してくれるであろうし、この能力を必要とする場面もあるだろう。
かの人との遭遇を夢見る私がいた。
私のようなものとかの人のような剣士は呼び合うものだし、それに私の意思が加われば遭遇は確実だと思われた。
そして彼と一緒にいる少女のことを思えば、対峙した相手の剣を奪っていくことも十分に考えられる。
好機。
しかし、私の思惑は外れることとなる。
『お前が狙っているあいつな、剣を手にいれたらしいぜ』
その情報をもたらしたのは、最近、私の主と懇意にしている傭兵の所有している剣で。
今も主たちは酒を酌み交わしているのだが、その横で私たちも情報交換を行っている。
『えっ……、でもこの辺りには名の知れたものはいなかったはず』
思わず口に出た言葉に、相手は苦笑を漏らす。
傲慢だったか、と思ったが実際私以上の同族はこの近辺にはいないはずで、ならばかの人が私に出会えば変わることもあり得るのでは。
『あいつが今手元に置いている剣な、あいつは「斬妖剣」だ』
『…え……』
「斬妖剣」と言えば同族の中でも特別視されて、伝説となっている存在だ。
彼も伝説的存在だったが、「斬妖剣」も彼とは別の意味で特別だった。
彼が尊敬の対象であるなら、「斬妖剣」は畏怖の対象。
触れたものすべてを切り裂く「斬妖剣」の能力は異質で、我々でさえ恐れさせた。
そして彼は主を拒み、我々との接触も嫌い、引きこもっている、と聞いていたのだが。
『あいつの執着は半端ないぜ。手を出せば噛みついてくる』
いや、噛みつく、というレベルではないだろう。俺が知る限りの情報では、売られていない喧嘩まで買ってくる勢いだ。
『なりを潜めていやがったくせに、美味しい餌が通りかかれば食いつきやがって』
その言葉に、相手もかの人を狙っていたことを知る。
より良い主を求めるのは、剣としての宿命か。
『対峙してみるか?』
そう言ったのは私で、相手は『まさか』と返す。
『負けると分かっている勝負はしないさ』
傭兵がかの人に挑み剣を折られた、と聞くのは後日の事である。
そして私は相変わらず新しい主を望みながらも、城の警護につく主の腰に下がっているのである。
end
オチも何もありませんよ(苦笑)
以前、斬妖剣×ガウリイというネタを拍手で頂いていまして、それを私なりに書いてみたつもりです。
ずっと脳内にはあったんですが、いつものごとく、ふと浮かんだので勢いのままに。
一応私のイメージで、光の剣はザナッファーを倒したこと+刀身が光であったり自在に使い分けられたりする特性によって、魔剣の中でも一目置かれている。斬妖剣は、あの何でも切り裂いていく能力+使用者でさ手を焼く、ということで恐れられている。といった感じです。だって斬妖剣って魔剣でも関係なくスパスパ切りそうじゃないですか。
そんなイメージをこの話を書いてみました。