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「ガウリイさんも、人が悪い」
急に、俺にだけ聞こえるように投げ掛けられた言葉に、俺は困惑する。
そしてすぐに、最近のゼロスの様子がおかしかったことの原因を悟ったのだった。
「その話、後でいいよな」
俺の言葉は、同意を求めているようで、実は強制の言葉。
現にゼロスは、口をつぐみこちらをただじっと見ているだけ。
そこに少し離れていた所にいるリナから声が掛かった。
「ねぇガウリイ。あんたは今夜泊まる所は、朝ごはんの美味しい所と、大きなお風呂がある所、どっちがいい?」
「美味しい朝ごはんがある所〜」
「よね〜」
リナが笑顔で、宿屋の情報を教えてくれたらしい露天の店主に礼を言っている。
そんな日常の風景の中、ただゼロスの視線のみがいつもと違っていた。
夕食を済ませ皆がそれぞれの部屋に入った後、俺は細く鋭利な三日月が照らす屋外へと出た。
もちろんそれは、ゼロスと話す為で、宿屋から出て建物の影に入るとすぐにその魔族は現れた。
「案外、遅かったな」
「…皆さんが周りにいましたから」
「そうじゃなくて、俺の事に気付いたのが、ってこと」
「………」
ゼロスが黙り込む。
「ま、どーでもいいけど」
多分、今の俺はいつも通りの笑顔を浮かべているはずだ。
それがどうゼロスの目に写っているかは、俺の知ったことではない。
「あなたの目的は…」
「目的…、ね。そうだな、わがままな旦那様に懲らしめるために家出中、とか」
意外に直球で聞いてきた相手に、俺もそれなりに直球で返す。
「…あの…、それはどういう……」
「言葉通りなんだけど。我ながらうまい表現だと思ったけど、分かりにくかったか?」
きょとん、としているゼロスなんてめったに見られるものじゃない。
少し俺の気分が良くなる。
「そうだな〜、ほんとわがままばっかり言うあのバカにいい加減こっちの堪忍袋の緒も切れて、こっちに来たんだけど……」
さっきより分かりやすく説明したつもりが、同じことを言葉を変えて言っただけだったかも、とは言ってから思った。
相変わらず、ゼロスの顔には疑問符が大きく書かれている。
うん、なかなか満足。
というか、改めて考えると、本当に単純な状況なんだよな、と思う。
何しろこれ以上説明できない、というぐらいに言葉通りの状況なのだ。
ただ一般的なものと規模が違うだけで。
旦那様が、魔王で、家出が世界を飛び越えてこちらに来たってことだけなのだが。
「あのバカが、俺が家出したことで反省したかどうかは疑わしいけどな!!」
いろいろ考えていたら腹が立ってきたので、口調も荒くなる。
それにゼロスが微かに驚いた表情を浮かべた。
「……お怒りのところ申し訳ないんですが……、あなたはどなたですか?」
「えっ……、分かっててこの話始めたんじゃ……」
ゼロスの視線が明らかに泳いでいる。
俺は一つため息を零した。
「じゃあ、どこまで分かってるわけ?」
「え〜っと、ガウリイさんがあちらの世界の高位の方という事までですが」
ずいぶんと曖昧な答えに、ガウリイは再び「え゛っ…」と固まった。
二人の間を静かに夜風が吹き抜けて行く。
そして月明かりは優しく降り注ぎ。
周囲は穏やかであるにも関わらず、2人の間にはぎこちない空気が流れていた。
「…俺、高位の神族だけど…」
「え゛………っ」
「寧ろ、神、なんだけど………」
多分俺の本体をこちらに出したら、お前さんは一発で消滅するだろうな〜、なんて軽い言葉でその場を和ませることは、勿論出来なかった。
何しろゼロスが先ほどから小刻みに震えているのだ。
これが人間だったなら、気絶する、といった方法もあるのだろうが、憐れながらゼロスにはそういった機能は無いらしい。
もしかしたら、魔族は気を失ったら消滅するのか、などとどうでもいい考えが俺の頭をよぎっていった。
「ちなみに、さっき言った旦那は魔王だから」
あ、ゼロス、消えかけてる……。
おわり
自分で種を撒いて、自滅しているゼロス、なお話でした。
違うから!!
いや、間違ってないけど。
この話を書くにあたって、いろいろ考えましたよ。あ、設定とかね。
で、まあこの話は闇撒×ガウというのは前提なので、旦那=ダークスターというのは最初から決まっていたのですが、さてガウリイの立ち位置をどうしましょう、というところで最初は魔王配下(直属)ぐらいを考えていたんですが。
この話、2/3ほど書いて放置していたので(苦笑)その間にいろいろ考えまして。
いっそのこと神にしちゃったらどうかな、と考えたら結構嵌りまして。
勢いのまま書いてしまいました。
一応もう少し設定はあるのですが、この話では書くタイミングが無かったのでいずれ。
初めて書いてみたCPですが、いかがだったでしょうか?