≪ランタン用オイル 2個≫
「……奥方様。これは……」
「うん。ちょっと俺が手が離せないから、メモに書いてあるものをそこら辺の店で買ってきてくれないか。
その姿にも慣れてきたみたいだし、俺以外の存在とコミュニケーションをとる練習になるだろ」
メモ用紙を手にして困っている姿は、普通の人間の子供のようで可愛らしい。
ちょうど背格好も10歳前後の少年の姿だから、さしずめ「初めてのお使い」といった所か。不安げに俺を見上げくる瞳もいっそうその感を煽る。
「あ〜っ、もう。可愛いなぁ!!」
がばっ、と抱きつけば、オロオロと手や足をバタつかせている。
それは一層俺の庇護欲をそそるもので。
「可愛いっ、可愛過ぎる〜っ」
「…お、奥方さま〜っ」
そんなことをしながらなんとか烈光の剣をお使いに出したのが小一時間前。
そして俺は。
もちろん。
烈光の剣の後を付けている。
魔族の初めてのお使い、なんてレアイベント、見逃せるわけがないだろう。
もともとこのお使い自体、烈光の剣のこの世界への順応度を判断するための物なのだ。
べ、別に俺の楽しみとかじゃないぞ。
道具屋の前で入るのを躊躇っている姿に思わず出て行きそうになったり、「お使いかい、えらいね」と頭を撫でられて照れている姿に感極まって泣きそうになったり、と有意義な時間を過ごした。
そして俺は烈光の剣が戻る前に、急いで宿屋に戻ったのだった。
「……奥方さま〜〜っ」
「お疲れさ…ま……」
てっきり笑顔で帰ってくると思っていた烈光の剣は半泣き状態で。
部屋に入ってくるなり、俺にしがみついてきた。
お使い自体は上手く済んだはずだからそれ以外で困ったことがあったのか?
俺が思いつく困ったことといえば、リナたちにこいつの存在がばれる事だが、こいつには宿屋に入ると姿を見えなくなるするようにさせているから、リナたちに見つかった、という事はないと思う。
「どうした?」
俺に頭を押し付けてくる烈光の剣の頭を撫でて問いかければ、烈光の剣は素直に顔を上げた。
「途中まで一緒にいてくれるなら、どうして一緒に行って下さらなかったんですか!!
先に帰っちゃうし……。寂しかったです………」
ぎゅ〜っ。
「そっか、寂しかったか。…ごめんな」
烈光の剣は俺の腕の中でもしばらくぐずっていたが、時間がたつと落ち着いたのか「奥方さまにも理由があったんですよね、ごめんなさい」と言った。
良心が痛む。
まさかここで理由が好奇心とは言えず、とりあえず「うん」とだけ俺も答えたのだった。
そういえばこいつはあいつが俺の監視に寄越したから、たとえ隠れたって俺の存在は認識できるんだよな。
俺のつめが甘かったか。
『今度の参考にしよう』
烈光の剣の頭を撫でながら、早々と次回の計画を立てる俺だった。
おわり
烈光の剣の「初めてのお使い」でした。
一応、今までずっと剣の姿でいて最近人の姿も取るようになったから、今後はコミュニケーションも必要になることもあるだろう、ということで練習のための初めてのお使いでした。
建前は。
完全にガウリイのお楽しみ、と化してましたが。
そして、ガウリイさん、なんだか悪い人みたい(苦笑)