夢の夢(闇撒×ガウリイ)


 俺が久々に踏みしめる大地は、木どころか草一本生えていなくて、岩と空だけが広がる全く命を感じられず荒涼としていた。
 この光景が嫌で俺はここを離れたのだが、俺が離れている間に改善されることは無かったらしい。
 想像はしていたが、実際この目で見るときついものがある。それに先ほどまで、命がうるさいほどに溢れて、色鮮やかな所にいたのだ。余計につらくなる。

 烈光の剣にせがまれてこちらに来たのだが…。
 早々と俺は帰ってきたことを後悔し始めていた。


「わが妻よ〜〜っ!!!!!」


 後悔した。
 できるものなら過去を消したいと望むほどに。
 後悔した。


 満面の笑顔で突進してくる魔王なんてなかなか見られるものではないが、そのレア度よりも俺は身の危険の方を優先した。
 まあ、満面の笑顔自体は見慣れているし。

 俺がひらりと身を躱せば、あいつはあっさりと目の前を通り過ぎていく。
 基本的に「力押し」で戦う俺たちは「技術」というものに縁がなく、技術を身に付ければ有利になる。
 その光景が目の前で繰り広げられている。
 急には方向を変えることも、止まることも出来ずにあいつは突っ込んできた速さのまま通り過ぎ、遥か先まで走っていく。
 あの勢いで俺に飛びつくつもりだったのか、俺が怪我をするだろうが。

 あのバカ。

「さあ、帰ろうか、烈光の剣」
「はいっ」

「………ちょっ、ちょっと待て、なんで俺の指示より妻の指示を優先するんだ、お前は」
 素晴らしい速さで戻って来た魔王の発言に、俺は「妻」決定なのか、と、俺が帰ることより烈光の剣が俺の指示に従う方に突っ込みを入れるのか、どちらに反応するべきか迷っていると、矢継ぎ早にあいつが畳み掛けてくる。


「久々に再会したのだ。
 私も少しでも触れたい」

 そう言いながらおずおずと手を差し出されては、俺はその思いに応えたくなる。
「奥方様?」
 世界を渡るために手を握っていた烈光の剣が、俺に視線で問いかけ、俺は微笑みを返す。

 両手で魔王の身体を抱きしめる。そしてすぐに抱きしめ返される。
 相反するものであるから、抱きしめればそれなりに苦痛もあるが、それでも心地いいと思う。
 懐かしいと思う、守られていると思う。

 ここが自分の居場所だと思う。


「お前は……」
「わが妻よ」
 微睡みそうな時間の中、あいつが意外にしっかりとした声を掛けてきた。
「……なんだ」
 俺としては、もう少し微睡みの時を楽しみたかったので、口調がそっけなくなる。
「お前の、この世界に命を栄えさせたい、という望み。
 叶えてもいいと思う」

「本当かぁ!!!!」

 まずは水の流れを作らなくては。大気の流れも重要だよな。あと、あちらからいくつか命を持ってこられれば時間が随分短縮できるな、などと考えたのはほんの数瞬の出来事。
 俺の中でいくつもの未来予想図が展開されるのを中断したのは、あいつの声だった。

「お前が産んだ命ならば」


「「………?」」

「お前と俺の間に産まれるものなら、俺は受け入れられると思うんだ」

「………?」

「……っ!!オクガタサマ………」
 急に片言で話す烈光の剣に、俺の注意が向いた一瞬
 気付くと、俺は空を見上げていた。
 ただ青いだけの空。深みも、透明感も何もない空。
 そしてそこに空以外にあるものは、あいつの顔で。

「夫婦の営み、というものがあるそうだな…………」

 どこから取り出したのか、烈光の剣が持つ鏡に映されているのは、あいつと、俺の姿。
 その俺の胸が膨らんでいるのは気のせいだよな。
 思っていたより全体が小さくなっていたり、ウエストが細かったり、顔が丸くなっていたり…………。



「お前、何しやがった〜〜っ!!」」




 実のところ、力であいつに劣る俺では抵抗も出来ず……、その後のことは言いたくない。


end



 すいません、我慢できませんでした。
 だって、どこまでも脳内を占拠していくんですもの、このおばカップル。
 書かないと次に進めない気がして…、書いちゃいました。
 最強のようで、実はコロッと食べられちゃうガウさんのお話でした。


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