garden×garden7 



 その声は太陽のように明るくて、朝のこの時間にはぴったりだった。

「おはようございます!!」

 元気よく飛び込んできた少女の笑顔は声と同じように眩しくて、ガウリイは目を細める。

「おはよう。今日も店の手伝い?えらいな」
 花の水遣りの手を止めて、ガウリイは少女に歩み寄る。
「手伝うって言っても、休みの日とたまに放課後、ですけどね」
 そう天真爛漫な顔を向ける少女にガウリイもいっそう破顔した。

 そして彼女から大きな紙袋を受け取る。
 その中身は大きさの割には軽くて、そして何よりの特徴の香ばしい匂いが袋を開けるまでもなく漂う。

「焼きたてのパンを配達してくれるから、いつも助かるよ。アメリア」

 彼女は近所のパン屋さんの娘。
 今は専門学校に通い、朝の時間にちょっと余裕があるので店の手伝いをしてから学校に行くのを日課にしている。
 そしてこの日課にはちょっとしたおまけもある。

「今日もお願いします」
 そう言いながらアメリアが差し出したのは、いわゆるマイボトル。
 可愛らしい水色の星がいっぱいちりばめられたボトルを受け取ったガウリイは、「はいは〜い」と少しだけ砂糖多めでカフェオレを淹れてそれを移し替えた。
 garden×gardenではマイボトルを持ち込めば、それに飲み物を入れて持ち帰ることもできるのだが、アメリアは学生料金ということで100円で入れてもらっている。

 ちなみに、garden×gardenには本来学生料金というものは無い。
 つまりはガウリイからのアメリアへのささやかなお礼なのだ。

 ガウリイからマイボトルを受け取ったアメリアは、それをバッグの中にしまう。
「行ってきま〜す」
「行ってらっしゃい」
 アメリアの家から駅に向かう途中にこのgarden×gardenはある。
 なので登校前にアメリアは立ち寄り、配達を行っているので店を出るときの挨拶も出かける時の挨拶となる。


 そうやってアメリアを送り出した後、ガウリイは焼きたてのパンで朝食をとるのが日課だった。





 garden×gardenは夜はあまり遅くまでは営業していないが、それでも人々の一般的な夕食の時間までは営業している。
 夜の営業は昼時のように一気に混み合うことはないが、客足が途絶えることは無い。
 そんな夜の営業時間に珍しくアメリアが来店した。

「こんばんは〜」
 ひょっこりとドアから挨拶と共に現れた姿に、ちょうどレジに立っていたガウリイが挨拶を返す。
「こんばんは」
 
「あ、アメリア。何それ?」
 聞きなれた声に、配膳を済ませたリナもやって来た。そしてさっそくアメリアが手に持っている物に気づき尋ねる。
「笹の枝です。うちの店で七夕の飾りをするために笹を用意したんですけど、設置している時にうちの父さんがこんな大きな枝をボキッと……」
「「あ〜」」とハモるガウリイとリナ。

 彼女が持っている枝は長さが1m近くあり、折るためには相当な力が必要なのだが。
 アメリアの父であるパン屋の店主は不器用で力持ちで、これぐらいの枝はうっかりで簡単に折ってしまうだろうことは容易に想像できる。
 ちなみに、その娘であるところのアメリアも相当な力持ちなのだが。

「このサイズなら笹飾りとして使えるかな、と思って持ってきました!!」
 ぶんぶんっ、と笹を振り回されて避けるガウリイとリナ。
 勿論、不器用という属性は受け継がなかったが、代わりに元気印、という場合によっては不器用と変わらないものを持っているアメリアである。
「ア、アメリア、ストップ!!」
「ごめんなさい〜っ」


 翌日からgarden×gardenに飾られた笹には、店員や客がいろいろに飾り付け、織姫と彦星が再会を楽しむころには、一杯の短冊と飾りで店内を明るく、元気にしていた。




end

 
 アメリア初登場です。彼女は学祭篇あたりからパン屋の娘、という設定で決まっていました。なので、あのときのサンドイッチもここのパンでした。本当はあの時に大量のパンを届けるアメリア、という話を書こうとしていたんですが、兄に持って行かれました……。
 アメリアは家を継ぐために専門学校に通ういい子なのです。なので、あのカフェオレを持って登校して、休憩時間とか昼食時間に飲んでいるんです。いい匂い〜、とか周りに言われながら。
 お姉さんは……、家は継がないでしょうねぇ(笑)



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