執事事情
月曜日
それは、どこかにあるかもしれない街の、ちょっと変わったお屋敷での物語。
「お帰りなさいませ、旦那様。」
「ただいま、ガウリイ」
頭を下げて出迎えてくれたガウリイに、ヴァルガーヴは鞄を預ける。
「夕食の用意にはもう少し時間が掛かりますので、お待ち下さい」
ヴァルガーヴは鞄を持って去ろうとするガウリイの肩を掴まえその体に手を回した。
包み込むように。
「夕食よりもガウリイを、ゲフッ……」
「さっさとリビングにでも行っててください」
冷静に、そして鮮やかに肘鉄を決めたガウリイは、腹を押さえて蹲っている主人を放置して去って行く。
(今のはかなり痛かったんですけど〜っ)
ちょっと涙目になっているヴァルガーヴ。
とはいえ、肘鉄なんて日常茶飯事なので、あっさりと立ち直りぺたぺたと廊下を歩いていく。
シャワーを浴びて、夕食を食べて、リビングでボケーっとしていると、目の前に氷の入ったグラスが置かれ、ウィスキーが注がれる。
「1杯だけ?」
ちょっと上目遣いに見上げれば、そこにあるのは平然とした執事の顔で。
「この前たくさん飲んだばっかりでしょう」
とウィスキーのボトルは下げられてしまう。
主人だけど自分は彼には逆らえない。
(まあ、はっきり言って、惚れた弱みってやつ?)
ボトルを下げてきたガウリイは、ストン、とヴァルガーヴの横に腰を下ろした。
おやっ、と顔を向けるヴァルガーヴの口に軽く暖かいものが触れる。
それはガウリイの唇で。
「今日はこれで我慢してください」
そう彼に微笑まれると、どうしようもなくなる自分がいて……。
「ひどい……、ガウリイ……」
結局その晩ヴァルガーヴは、本当にそこまでで我慢させられてしまった。
それは、とある屋敷での月曜日の風景。