執事事情

  木曜日


 ニンニクのいい香りがガウリイの鼻をくすぐる。
 その臭いにつられて台所に顔を覗かせれば、そこではシルフィールが昼食の用意をしているところだった。

「いい匂いだな?」
 その声にシルフィールは手を休めることなく、微笑みながらガウリイを振り返った。
「ありがとうございます。
 今日はベーコンと菜の花のパスタですよ」
 そして手元の切りそろえられた菜の花をガウリイに差し出した。
「ご近所の方から頂いたんです」
 へぇ?、とガウリイは菜の花を眺める。

 シルフィールがここで食事を作るようになって、色々な食材が食卓に上るようになった。それがガウリイには楽しい。

 シルフィールの横で食事のできる様子を見ていたガウリイが、ふと顔を上げると同時に玄関のチャイムが鳴った。

「ちょうどいいタイミングでお帰りですね」
 そう言って彼女はパスタを茹でている鍋に菜の花を加えた。
 ガウリイは、シルフィールに答えた後玄関に向かい主を迎える。


「お帰りなさいませ」

「ただいま」

 ヴァルガーヴから上着を預かったガウリイは、それをハンガーに掛け壁のフックに吊す。
 そして汚れているわけでもないのだが、軽く埃を払う。

「いい匂い」
「今日はパスタだって」

 口調が地に戻っているガウリイに、つい口元が緩む。
 ガウリイが食事を楽しみにしているのが分かるから。
 きっと美味しそうだったのだろう。

 食卓にはシルフィールによって、綺麗に3人分の食事が並べられていく。
 平日の昼食は3人でとるのが日課だった。
 食事は人が多いほど美味しくなると言うが、確かに2人の食卓よりも3人の食卓の方が美味しい気がする。
 シルフィールの料理の腕と、出来立てを味わえるという点もあるのだろうが。

 昼食は、ヴァルガーヴが自宅が職場の近くで良かったと思う時である。


 そして、美味しい食事と少しの休息をとった後、午後の仕事のためにヴァルガーヴは再び職場に向かうのだった。


 こうして優しく過ぎる木曜の昼。




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