小ネタ 1
それは、夜のひと時をのんびりと過ごしていたときのこと。
その爆弾は、珍しくガウリイから落とされた。
「俺って、かわいい?」
「……、え?いや……、え……?」
「あははっ、それはないですよ」
どう答えればいいかしどろもどろになるヴァルガーヴと、対照的にあっさりと否定するゼロス。
ゼロスがあっさり否定したのにつられ、ヴァルガーヴもこっそりと「かわいい、ではないよな…」と呟いている。
「ふ〜ん、そうなんだ」
意味深、ともとれる言葉ではあるが、実際その言葉にはたいした意味がないことは、彼の口調でわかる。
ただ分からないのは、なぜ彼がこんな質問を投げかけてきたかということで。
「いきなりどうしました、ガウリイさん。かわいくなりたい、とかですか?」
こういう場合にすばやく言葉を返すことが出来るのはゼロスで、少し茶化すような言葉でガウリイが答えやすいように導いている。
「いや、ちょっと疑問に思ったことがあって」
そこで言葉を一度切って、ガウリイは目の前にある2人の顔をちらりと見た。
「お前らが俺を抱くのはなんでだろう、と思ってな」
今更疑問に思ったのか、と二人同時に思ったが、それは口に出さないでおく。
「……、とりあえずガウリイはクール系だと思うけど……」
少し控えめに言うヴァルガーヴに、ゼロスが横から「貴方の場合、ガウリイさんに父性や母性まで求めてるでしょう」と茶々を入れるが、ヴァルガーヴは聞こえない振りをする。
「ああ、でも……」
急に声を大きくしたゼロスは、すいと近寄りガウリイの顎に手を添えた。
「かわいい、ということでしたら、今からでもかわいくして差し上げますが?」
そのまま口付けをしようとするゼロスに、ヴァルガーヴの蹴りが飛ぶ。
もちろん、その蹴りは空を切り、少しあきれた顔のガウリイと、楽しげな顔のゼロス。
「ゼロス!」
「ま、ガウリイさんの質問に関しては、それは秘密です、ということで」
いつものポーズをして消えていくゼロスにヴァルガーヴは厳しい目を向けながらも、動くことはなく、かわりにガウリイに向き直った。
「俺はガウリイのことがもっと知りたいから、俺のことを見て欲しいから、そうすることで安心できるから抱いてるんだぞ」
ガウリイの体に手を回し、その耳に囁くように言葉を告げる。
ゼロスがいなくなった途端、急に饒舌に真剣に答えるヴァルガーヴにガウリイは少し笑みを浮かべる。
彼はきっと、ゼロスがいるときには手札をさらすようで、言いたくなかったのだろう。
そういうところが幼くて、ガウリイは気に入っている。
『さて、これをこいつに言うかどうか……』
自分の投げかけた問いに一生懸命答えてくれた彼には悪いが、これは彼には告げないことにした。
幼いところが気に入っているなんて言えば、きっと幼いがゆえに拗ねるであろうし、きっと彼は自分をそう思っては欲しくないのだろうと思う。
特に何かの問題がない限りは、望む答えを返していた方がお互いのためにいいと思う。
でも、何故かちょっと悪戯心が疼いた。
「俺は、お前の事はかわいいと思うけど……」
それまでガウリイを抱きしめていたヴァルガーヴは、その体を離し、まじまじとガウリイを見つめた。
そしておもむろにガウリイをベッドに押し倒す。
「かわいい、じゃないだろう?」
不満に思っていることがありありと分かり、そこがかわいいと思う所以なんだけど、とガウリイは心の中で思い、つい頬が綻んだ。
結局その日、自分のまいた種のせいでガウリイは、「カッコイイ」とヴァルガーヴに言うまで寝かして貰えない事となる。
end