小ネタ 4

アニメ「スレイヤーズTRY」17話が元ネタです。ガウリイが人魚の格好をした回です。













 俺自身もどうかと思うこの状況。
 客観的に見ている者が居たら、きっと滑稽な風景だろう。


 秘宝を手に入れるために、それを守るガーディアンを呼び出さないといけないというのは分かる。
 そして呼び出すために生贄が必要と言うのも分かる。
 生贄を逃げないように岩に鎖で拘束するというのも、まあ、お約束だろう。
 その生贄が俺と言うのも……、まあ良しとしよう。納得はいかないが。


「しかしなぜ女装?それどころか人魚?
 ふつー、男はしないだろ!!」


 2度あることは3度ある、とよく言うが、こんなことが3度もあるとは……。しかも人魚。露出は高いしパッド入れる余裕なんて無いし、明らかに男とわかるだろう。
 こんなのが生贄ではガーディアンも出て来ないんじゃないか、と思う。

 そんなことを考えながらも、しょうがない付き合ってやるか、とぼんやりと海面を眺める。



 実際、このままガーディアンが現れず、アメリアたちが諦めてくれる、という展開を予想していたのだが、海面に揺らめく影が視界に入ってしまった。
 ガーディアンの目は節穴だったらしい。


 などと冷静に状況を観察している場合ではなく、一直線にこちらに向かってくる影は予想外に大きく、命の危険をひしひしと感じる。


「ちょっ…、あれはやばいって……」


 助けてくれるはずのアメリアを見ればまだ助けに来る様子は無く、もうちょっとがんばって、なんていう雰囲気を出している。

「無理、あれは無理だろ〜!!」

 逃げようと暴れても、頑丈な手枷は外れる様子も無く、鎖の方も緩くなる気配も無い。
 その間にも接近してきていた黒い影は、岩の直前まで来ると激しい水音と共にその姿を水中から現した。
 その巨大な体により、日差しが遮られて影が落ちる。

「うわっ……」

 大きいのは分かっていたが、見下ろされる立場になると一層大きく見える。

 上げた視線の先には大きな口と逸れに相応しい牙。そしてさらにその上には鋭い目と光を反射していいる赤く輝く石の様な物。

 秘宝と言うのはあれか〜、などとじっくり観察している暇など無く一層激しく暴れて逃れようとする。
 そのとき背後で、ぱらっ、という小さな音がした。

 鎖をどうにかするよりも、岩をどうにかした方がいいな、これは。

「あんなのに齧られてたまるか!!」

 その言葉とともに一気に全身に力を込める。
 ばらばらと岩の砕ける音がする。

 あと一息、と更に力を込めようとしたとき、目の前、ガーディアンと自分自身との間に人影が立った。
 こんな所に、しかも空中にいきなり現れることの出来る人間が居るはずも無く。


「ゼロス……」

「素敵な格好をされてますね〜」


 見慣れた姿が突如目の前に現れ驚く。

 ゼロスの暢気な声とは裏腹に、今にも俺に飛び掛りそうだったガーディアンは身動きを取れないでいた。
 まあそうだろうなぁ、いきなりこんな高位の魔族に出てこられたら体も竦むだろう。

 「……生贄、ということですか。しかし貴方ごときにガウリイさんを生贄とは、不釣合いもいいところですね……」

 ガーディアンに背を向けたまま、ゼロスが一瞥を送り、ガーディアンはその巨体を震わせる。
 しっかし、ゼロスは状況の飲み込みが早いな。

 目の端に駆け寄ってくるアメリアの姿が映る。
 その後ろに続く人間と魚人。


「まあ、僕から見たら、『据え膳』という感じですけどね」


「……、んな訳あるか!!」

 一瞬ゼロスの発言に硬直した俺だったが、それなりの付き合いの中で免疫もついている。すぐに復活して怒鳴る。
 軽く叩いてやろうかともがくが、まだ拘束から開放されておらず鎖を引っ張っただけだった。

 その時、ゼロスの背後にいたガーディアンが硬直から開放されたらしく、水しぶきを上げ水中に潜り遠ざかっていく。
 その速さは俺に向かってきていたとき以上で、やぱり命の危機を感じたんだろうなぁ、などと少し同情する。

「「「あーっ!!」」」


 そう叫んだのはアメリアと他2名。

 それはそうだ。必要があって呼び寄せたものを簡単に追い払われては困る。

「ゼロス、あいつの頭にある秘宝とやらを取って来てくれ」

「え〜、僕が、ですか?」

 不服そうな振りをしながらも、内心楽しんでいるのが分かる。
 だからこそ頼めるのだが。

「逃がしたのはお前だろ。頼む」

 ちょっと小首を傾げた後、了解、の言葉と共にゼロスは姿を消した。

 その直後遠くの海で壮大に上がる水しぶき。
 何があったかは聞かないほうがいいな、うん。

 ゼロスが手に赤い石を持って現れるのと、アメリアたちが俺の元に辿り着くのはほぼ同時だった。


「ゼロスさん、一体どうしたんですか!!」

「ちょっとこの辺りを通りかかったら面白い物が見えたので。
 ところでこれ、どうぞ」

 面白い物、とは俺のことなんだろうな。


 アメリアは差し出された秘宝を少し警戒しながらも、礼を言い受け取った。
 そしてそれを後ろの二人に渡すと、二人もゼロスに礼を言い早速使うつもりらしく陸に戻っていく。


 「ゼロスさんは……」

 問いかけるアメリアの言葉を遮り、ゼロスが答える。

「僕は野暮用がありますので、これで失礼します」

 野暮用ってなんだよ、と尋ねたところで答えるはずも無く、それが分かっているから俺もアメリアも聞きはしない。

「アメリアさ〜ん」

 魚人から掛けられた声に応えると、それじゃ、とアメリアも陸地に向かって走り出した。






「……えっ?」

 俺、このまま…?

「おやおや、そそっかしい方ですね、アメリアさんも」

 そう言って俺の正面に立ったゼロスは、俺を上から下までじっくりと眺め手を伸ばしてきた。
 俺が身を竦ませていると、伸ばされた手は胸の部分に巻いている布に触れた。


「僕としては、青よりもピンクとかの方が良いと思いますが。あと、髪も下ろしていた方が良いですよ、貴方は」

 その言葉と同時に布が解かれ海面に落ちる。

「うわっ……」

 髪も解かれて下に広がる。俺としてもこちらの方が楽でいいのだが、他人にされると結構気恥ずかしいものである。
 とにかく、髪よりも先に解いてもらいたいところがあるわけで。


「それより、鎖……」

「この状況は、本当に据え膳みたいですねぇ」

 その言葉に身の危険を感じるが、悲しいかな状況は先程と変わらず岩に拘束されたままなので動くことさえままならない。
 いっそアメリアを呼ぼう、と声を上げようとするとその口を塞がれた。
 ゼロスの口で。

 すぐに進入してきた舌が口内をまさぐり俺の舌を捕らえようとする。俺は掴まえられないように逃げるものの、すぐに掴まり後はゼロスの独壇場となる。

「ふ……、んぅ……」

 抵抗したくてもこの腕を拘束された状況では頭を振る程度しかできない。それも頭を抱え込まれてしまえばそれまでで、せめて声を漏らさないようにするのが精一杯の抵抗だった。


 そろそろ息も苦しくなった頃、ようやくゼロスが離れた。

「いきなりすぎるだろ!!」

 そう苦情を言う俺にいつもの笑顔を返して、俺に向けて手をかざした。
 ガチン、という金属音がした直後からだが落下する。

 バシャッ。

 急な落下にバランスをとる事が出来ず、両手を底につけた。
 手首がビリリ、と少し染みる。さっき暴れたときに擦ってしまっていたらしい。
 それは別に良いとして。


「これも急すぎるだろ!!」


 顔を上げれば、いつの間にか同じ目線にゼロスも降りていて、「でも外せって言おうとしてましたよね」なんて言ってくる。
 それは間違いじゃないが、急にされることが問題なんだ、とは思ってもどうせこいつは分かってやってるんだから、と諦める。

「手を出してください」

 今度は諭すように優しく言われ、思わずその言葉に従い両手を差し出す。
 カチッという音を立て手枷が外れ水中に落ちた。それと同時に手首の治療も行われたようで、痛みも消えた。


「……、ありがとな」






「いえいえ、これは先程頂いたキスの分ですから」

「…えっ!!」



「ち・な・み・に、先程ご依頼の秘宝の件についての報酬はまた後で頂きに来ますね」



 それでは、と唐突に姿を消したゼロスに、勿論俺は抗議をする暇も無くただ海の中に座り込むだけだった。
 ゼロスに礼を言って損をした気分。



「やっぱりゼロスに頼むんじゃなかった!!」


 八つ当たりでその辺の海底の石っころを遠くに放りなげる。
 それが水中に水音と共に落ち、その音と一緒に自分の迂闊さ加減に深い溜息を一つ零した。





end


 一応これはずっと前からネタとしては考えていたんですが、今回ようやく書いてみました。
 こんなバカなことばかり考えてます。
 この量は小ネタなのか何なのか……。そんなことを思いながら書きました。
 今回もアニメネタです。そして女装ネタ。しっかし、人魚って女装というより仮装だと思うのですが……。
 あの回は、あの格好で動き回るガウリイに感心した回でした。そして人魚はさすがに無理じゃない…、とか……。

 CPですが、TRYネタなのでヴァルガーヴでいこうかとも思ったのですが、あの人は本気でしゃれにならないことをしそうなので、そこまで無茶なしなさそうなゼロスで。
 あと話のあらすじ上、ヴァルガーヴが出てこれないところですしね。(それでも出すときは出しますが)

 


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