声追い、姿追い
(ミルガズィア×ガウリイ)
ふと視線を移すと、長身の男性の姿が目に入った。
その男性は、こちらに気付くと歩み寄って来る。
(あんまり近づいて来られると、困る…)
彼は敵ではない。仲間だ。
ただ、色々俺にも都合があって。
「そちらの買い出しは済んだのか?」
俺の前に立った「でっかいとかげの人」ことミルガズィアが尋ねる。
「…いや、まだリナが終わってないんだ」
そう言って俺は後ろの店を指差した。
なかなか店から出てこないリナに、俺たちは近くのベンチに腰を下ろして待つことにした。
俺としてはもう少し離れて座って欲しかったけど、ミルガズィアはすぐ隣に座る。
いや、普通そうだよな。わざわざ仲間同士で離れて座ったりしないよな。
「なあ、ガウリイ」
ビクッ。
(…今のはあからさまだったか……)
心配する俺をよそに、ミルガズィアは話し続ける。その様子に、ばれなかったんだ、と俺は安心する。
はっきり言ってしまえば、俺はこの声に弱い。
耳元で囁かれたりしたらヤバイ。
「リナは何を買いに行ったのだ?」
「さぁ。入って行くときは薬草を買うって言ってたけど、それにしては長いかな」
早く会話を終わらせたい俺は、それだけを言うと視線を前に固定した。
「お前……」
視線を固定したまま、うっかりぼーっとしていた俺は、再び肩を跳ね上げる事になった。
「な、なんだ……」
視線を横に向ければ、そこにはさっきよりも近づいている顔があって。
「顔が赤いぞ。どうかしたのか?」
(………え、そんな…)
顔には出していないつもりだったが、出てしまっていたのか…。
なんとか場を取り繕うと思うのだか、思いがけない状況に思考が回らない。
その結果。
「お、俺、リナの様子を見て来る!!」
俺はその場から逃げ出したのだった。
ふと視線を感じてそちらを見ると、長い金髪の青年の姿があった。
群集の中にあっても、目を引く姿に、私は引き寄せられるように歩み寄る。
「そちらの買い出しは済んだのか?」
店の前に立つ彼の様子から買い物が終わっていないのは分かったが、一応尋ねる。
そして案の定、ガウリイは後ろの店を指差した。
「…いや、まだリナが終わってないんだ」
まだ終わらないだろう、ということで、私達は近くのベンチでリナの買い物が終わるのを待つことにした。
(………)
座る時、ガウリイが若干私と距離をとるような仕草をみせたが、私は構わずすぐ横に座る。
「なあ、ガウリイ」
ビクッ。
私がかけた声に、ガウリイの肩が微かに跳ねる。それを私は見ていないふりをした。
私が急に声をかけると、ガウリイは度々こんな反応を返す。
正直、少し面白い。
「リナは何を買いに行ったのだ?」
「さぁ。入って行くときは薬草を買うって言ってたけど、それにしては長いかな」
なるほど、彼女なら品物を十分に品定めをしていそうだ。
私の問いに答えたあと、ガウリイは道行く人を眺めている。
(もう少し話し相手として付き合ってくれてもいいだろうに)
そして私はちょっとした悪戯を思い付く。
「お前……」
少し声を潜めて、さも深刻な話であるかのように声のトーンを落とす。
ビクッ、と跳ねる肩に私は機嫌を良くしつつ、それを悟られないように表情は真剣なままで、顔を寄せる。
「な、なんだ……」
少し不安げな表情を浮かべている様子に、私は内心満足する。
そして私は言う。
「顔が赤いぞ。どうかしたのか?」
嘘だ。
彼の顔色はいつも通りだったのだが、かまを掛けてみたのだ。
途端に顔に朱を走らせたガウリイ。彼は視線を彷徨わせながら口を幾度か開閉させるが、言葉は出てこない。
私は思わず笑みを浮かべていた。
そして流れに任せるようにガウリイに手を伸ばそうとした。
その時。
「お、俺、リナの様子を見て来る!!」
急に立ち上がったガウリイは、そう早口で言うと走る様に店へと向かった。
(逃げたか……)
店の中へと消える背中を見ながら、私は苦笑を漏らす。
そして胸の内で呟く。
(まあ、逃がすつもりはないがな)
おわり
ミルガズィアさんの声にメロメロなガウリイと、実はそんなガウリイに気付きながらそれを悟らせないミルガズィアさんの話です。
うちのガウリイは、ミルガズィアさんには弱いですな〜。