キール(リナ父×ガウリイ)
5周年企画




 この連れ合いと一緒に旅をして数日になるが、なぜ今までこいつが無事だったのか不思議に思う。
 確かに腕っ節は強いから、力ずくでどうにか出来るような人間ではないから、傭兵稼業で無事今まで生き抜いていたことについては疑念は無いが。
 世の中には力ずくではいかないことが多分にあるわけで。


「おっちゃん、串揚げ盛り合わせとロブスターのタルタル和えを2つずつと、ビール2つ追加な!!」
 自分も相当食べる方だと思っていたが、目の前で次々と消えていく料理を見ていると、俺は普通だったのかと思えてくる。何しろ、こいつは先に5人前以上の量を平らげているのだから。
 ふと、同じように平らげていく家族の姿が脳裏に浮かぶ。
 というか、こいつ大丈夫か。さっきからビールや果実酒やらとんでもない量を飲んでいると思うんだが……。

「へい、お待ち!!」
「…お前、ほどほどにしろよ」
 つい、小言が出たとしても誰も俺を攻めるものはいないだろう。
「大丈夫だって」
 笑いながら先に運ばれてきたビールに手を伸ばす姿に、俺は苦笑を浮べるしかない。
「ほら、あんたも」
 そう言って俺にビールを押しやるから、仕方なく俺も手を伸ばす。
 言っておくが、俺は酒には弱くないぞ。ただ、健康のために控えているだけで、別にかみさんに金が掛かるから酒は控えろ、と言われているのが身に染み付いている、ていうわけじゃない。

 あ、なんか泣けてきた。

 などと1人感慨に耽っていると、あいつのジョッキはすでに半分空いていた。

「酔っ払っても、宿まで運んでやったりしないぞ」
 上機嫌で、残っている料理をつついているガウリイに声を掛けても馬耳東風で。
「串揚げ盛り合わせとロブスターのタルタル和え、な」
 湯気を立てながらテーブルに置かれた料理に、嬉々として手を伸ばしている。
 その幸せそうな様子に、しょうがないと俺はその料理を一緒につつきながら見守ることにする。


 そしてロブスターを口元まで運んだ時に、俺の動きがピタリと止まった。

「ロブスターは食うな!!」

 しかしロブスターには食べた後があり、すでにガウリイは食べた後らしい。えっ?、という表情のままガウリイは固まっている。
 俺はすぐにこの匂いを、記憶の中から探る。
 一つはブルーリー、睡眠作用はあるが無毒だ。あと一つ入っているようだが…、思い出せない。

 見る間にガウリイの目がトロンとしたものに変わり、何度も目をしばたかせている。
 ブルーリーの症状しか現れていない辺り、即効性のある毒薬ではないらしい。


「おい、亭主。何混ぜやがった」

「い、いや、何も……」

 動揺している辺り、何かを混ぜたのは間違いない。
 俺達の金品が目的ならブルーリーだけで事は足りる。閉店して、他の客がいなくなってから眠っている俺達を殺すなりしてから荷物をあせればいいのだから。
 俺達を殺したい場合もそうだ。
 ブルーリーに何かをさらに混ぜたということなら、俺達を生かしておいてさらに何かをしたい、ということなのだろう。
 そこで思い当たるのは、すでに半分眠りに落ちているガウリイの容姿。

「あんたの狙いはこいつか」
「お、お客さん、何を……」

 周囲の客が何事かとざわめいている。
 そして亭主の顔は見る見る青ざめていく。

 こんな、街のしがない酒場の亭主がガウリイを手に入れようとするのは、人買いに売ろうとするのが目的だろう。
 もしくは、こいつに目を付けた何者かに頼まれたか。

 何はともあれ、長居は無用か。


「なあ、あんた。相手は選んだ方がいいぜ」


「……っ」
 ただ顔を歪めるだけで、向かってこないところを見ると個人的なただの出来心だったらしい。
 これでいつぞやの街ぐるみの陰謀だったら厄介だと思っていたので、内心胸を撫で下ろす。

「で、素直に答えたほうがあんたの身のためだと思うが、ブルーリー以外に何入れた?」
「……」

「……指、何本残して欲しい?」
「す、すまない、ほんの出来心だったんだ。見目のいい奴用意したら金を用意してくれるっていう話を聞いて…」
「……、……目は一つで足りるよな。あぁ、耳もそうだな」
「ま、待ってくれ、入れたのはただの幻覚剤だ」

 必死に叫ぶ亭主は、周りの状況など目に入っていないようで、ひそひそと客同士が話している。
きっとこの店は近いうちに潰れるだろう。
 亭主は、さすがにこの状況で嘘がつけるような人間ではなさそうだ。

 とりあえず保険は掛けておこうと、俺はガウリイを担いでから極上の笑顔で亭主を睨み付ける。


「あんたの顔は覚えといたから」

「……ひっ…」

 別にこんな小悪党に興味は無いから、すぐに忘れるけどな。



 会計することなく店を出た俺は、それでもこの街で宿を取ることは止めて、街の外で適当に野宿の出来そうな場所を探す。
 月の無い暗い森の中で、それでも何とか雨露のしのげそうな崖のくぼみを見つけとりあえずガウリイの体をそこに押し込んだ。

 そこら辺の小枝を集めて火を焚くと、その暖かさと匂いに眠気を誘われ俺もガウリイの横に身を横たえた。
 そのとき、ガウリイが身じろぎをした。

「……起きたか。今日は野宿することにしたから」
「………?なんでぇ?街にいたのにぃ?」
 少し羅列の回らない言葉遣いに、盛られた薬の影響を疑うが、すぐにこいつの飲酒量を思い出した。
「…飲みすぎだお前。宿に泊まる分まで飲みやがって」
「……うそだぁ〜、そんなに飲んでないぞ。多分」
 多分、を付けやがったこいつ。さては途中から酔ってたな。酔っても見た目変わらないなんて性質悪いな。

 とりあえず、薬の悪影響は無さそうで、一安心する。

「お前はもうちょっと人を疑うということを覚えろ」
 俺の小言が聞こえているのかどうなのか、ガウリイは笑いながら俺に腕を伸ばす。

「ガウリイ?」
 回された腕は痛くは無いものの、がっしりと俺の動きを抑えていた。



「だって、あんたは甘えてもいい人だから……」

 そのまま眠りに落ちたガウリイは、俺がどんな顔をしていたか知らない。



終わり

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 あけましておめでとうございます。2011年もよろしくお願いいたします。
 思いっきり前後してしまいましたが。前の話は書くのに夢中になってて、1月1日って言うことをすっかり忘れてて……、失礼いたしました。

 ようやく書けました。5周年記念の「リナ父×ガウリイ」です。思いついたのは、今。思いついてすぐに練らずに書いちゃいました。
 ガウリイほとんどしゃべってませんが。そしてリナ父×ガウリイなのかどうか…。とりあえずリナ父がガウリイを特別だと思ってる、というのは書けたかな、と。

 ちらり、と18禁的展開も考えましたが、自分ルールの「指定無しのリクは全年齢対象で」、に引っかかったのでそこは気が向いたらまた書きます。