私はこの世界に属するものではない。
 私にとってこの世界は仮の物である。
 だからこの世界の行く末など、どうでもいい。


 ただ、この子だけは。

 我が真の主の次に、我が刀を使い美しく戦った者。
 この世界に残していくのは惜しい。

 戻る時には、この子も一緒に連れて行こうか……。






shelter 2






 彼が剣として自分を扱ってきたときから分かってはいたが、彼と自分は随分と相性が良かった。

 今まで自分を扱ってきた者の多くは刀を振るうことは出来たが、私と同調できるものは数少なかった。
 それを人間は後継者の資質などと呼んでいたが。

 私の直接的な力を封じられていた時は、その相性の良さもただの刀の使い勝手程度の問題であったのだが、今は話が違う。
 私の力が開放されている今は、私次第で如何様にも利用者に影響を及ぼすことが出来る。

 そう、今のように。






 ガウリイが目を開けると、そこは以前と同じ異質な空間だった。


 青。

 青い壁、青い床、青い天井。
 そればかりが目の前に広がり、自分も青く染まるのではないかと思う。
 青に侵略された視界に眩暈を覚え、ガウリイの体が傾ぐ。

 その体を引き戻す力がある。

 その力に身を任せ、目を閉じれば青の替わりに闇が広がる。

「お前はただ、私に全てを委ねていればいいのだ……」

 そう響く声に、ガウリイはただ頷いた。
 今のガウリイの世界は、この烈光の剣が全てであったから。






 同調しやすいガウリイの精神面に力を使うのは簡単だった。

 今までの記憶、感情を封じると、ガウリイは従順になった。

 人の行動の基準がその2つであるということを、人の中に存在するうちに烈光の剣は知った。
 その2つが無くなれば、人は拠り所を無くす。
 そして拠り所を無くした人は、それを求める。


 烈光の剣がガウリイに示した拠り所は、烈光の剣自身だった。






「面白いことをしているね」
 そう声を掛けてきた子供の姿の冥王は、無造作に烈光の剣が作り出した闇に手を突っ込み、ガウリイの腕を掴んだ。
「……!?」
 不意に腕を掴まれたガウリイが怯えているのが伝わり、烈光の剣は闇を濃くしてフィブリゾの腕を排除する。
 その反応にフィブリゾは楽しげにクスクスと笑っている。

「この者は私に預からせて貰う予定だったのでは」
「ちょっと面白い趣向を思いついてね。その人間に協力してもらうよ」

 有無を言わさない言葉に、烈光の剣は歯痒く思う。
 この冥王と対立するには、本来の世界ならともかく、こちらの世界では明らかに烈光の剣の方が分が悪い。
 従わざるおえない。

 大体、この冥王にとっての面白い趣向というのがガウリイにとって不快でないはずが無い。
 そこも面白くない。


「ちゃんと君にも参加してもらうし、終わればその人間は返してあげるから。
 それに、最初に言ってあっただろう、時が来るまで、って……」


 自分まで頭数に入れられているのも不快であるが、ガウリイのみ持って行かれる方がより不安である。






 そして烈光の剣は、ガウリイに自分の力の一部を鎧に変え纏わせ、彼が扱いなれている剣の柄を握らせた。
 感情を封じてはいるものの、おそらく戦闘の途中に解けてしまうであろうことを予想しつつも。
 あの冥王はそこまで考えているのであろう。ガウリイの苦悩、あの少女の苦悩、そういった物を期待しているのだ。

 せめて、この子が怪我をしないよう、私も共に行く。




続く


烈光の剣としては、ガウリイの保護者の意識もあるのです。
子供の頃からガウリイを見ているので。
しっかし、フィブリゾ、すっごく悪役みたいですね……。ファンの方、すいません。
でも、魔族なんだしこれぐらいしないとね、とも思ったり〜。


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