フィブリゾに連れて来られたのは、木が疎らに生えた林の中。
 ここでリナを待ち伏せするということらしい。

 この子の操られている姿を見せて、より確実にサイラーグへ導こう、ということらしい。

 いや、どちらかと言うと自分自身の楽しみなのだろう。
 順調に進んでいる計画に、さらにエッセンスを加ええようということか。





shelter 3





 状況は面白くないのだが、ガウリイの体を自分の意思で動かし戦えることには楽しみである。
 あの剣技を自分の物として戦えるのだ。


 フィブリゾが姿を消して間もなく、遠くにリナ達の姿が現れた。
 こちらには気づいていないらしい。

 警告代わりに加減をした剣の力を一行に向けて放つ。
 狙いを逸れることなくまっすぐ進む力に、ある種の感動を覚える。
 初めて使うはずの力に順応するこの体に。



 ああ、やはりこの子は私の物なのだ。


 自分は狂戦士タイプではないと思うのだが、早くこの体で戦ってみたいと気がはやる。

 リナたちが攻撃を交わし、こちらに気づく。
 足を1歩前に踏み出す。


 深く結びついた意識は、自分がどうしたいかと思うだけで、その通りにガウリイの体を動かすことが出来る。
 戦い方はこの体が知っている。
 私が少し力を貸すだけで、この子は他を圧する力を振るう。


 放たれる攻撃魔法はガウリイを掠ることとも無く、剣戟ははじき返す。

「ガウリイがいればいい勝負になっただろう」

 そう合成獣の青年が口にする。

 それはそうだろう。いや、私に操られていない状態のこの子と私も戦ってみたいが……。
 しかし、上手く連携をして戦う連中だ。
 間髪をいれず魔法が打ち込まれてくる。



「…竜破斬!!」

 どぅんんん………!!


 リナの声が響き、力が押し寄せる。
 かわせない位置からの赤眼の魔王の呪文か。
 ならば取り込むまで。


 本来の持ち主である闇を撒くもの様と同じ魔王という属性のせいか、すんなりと力を取り込める。
 こういう部分は純粋に道具となれる自分に、自身で苦笑する。

 そして取り込んだ力を放つ。
 迷い違わず進む力は、彼女らを凪ぎ飛ばしていった。


 止めを刺すつもりは無いが、冥王の手前それらしい行動を取っておかねばいけないだろう。
 その時、自分の中でガウリイの意識が僅かに動いた。


 今、意識が戻るのか……。
 なんというタイミング。いや、先程の竜破斬か……、あの制御に力を使いすぎたか。


 剣を振り上げた後に苦悶するこの体に、体勢を立て直すために後に下がった時、新手が現れた。

 この者は以前戦ったことのある剣士か。
 またこちらもいいタイミングだ。


 ただこちらは全力で戦うわけにはいかなくなった。
 力の一部は、目覚めかけているガウリイの意識を抑えるために使わねばならない。

「……!?」

 剣士が、驚いた表情をしている。
 こちらの正体に気づいたか。


 数度切り結んでいると、ガウリイの体が何かに反応する。
 その直後。

「神滅斬〜!!」

 上段からの切り込みを剣で防ぐ。
 さすがにあの方の力までは、攻撃として加えられた力を取り込むことが出来ない。
 防ぐので精一杯の状況となる。

 ただこの魔法は持続時間が短いのが救いだ。
 彼女が今までに使ってきたのを、ガウリイを通して見てきたから後どれぐらい耐えればいいかが分かる。

 その力が消える瞬間、一瞬力が爆発した。

 リナの小柄な体が宙に舞う。


『リナっ』


 自分自身も岩に背中から叩きつけられる。
 その衝撃でガウリイの顔を覆っていた仮面が割れ、地面に転がる。
 金色の髪が兜から零れ落ちる。

『リナっ、リナっ……』

 表面に浮上しようとするガウリイの意識を、なんとか押しとどめる。
 こうなる前に撤収するつもりだったのだが……。
 私の読みが甘かったのか。


 ズンっ。
『……!!』

 力が掛かる。
 それと同時に、ガウリイの意識が途切れたのが分かった。
 フィブリゾか……。


 さも得意げに宣言している声がする。
 それを腹立たしく思うのは、私の思い通りにはいかなかったからか、それともこの子に同調しすぎた所為だろうか。
 ただ私にはすでにこの場を収めきるほどの力は残されておらず、素直に空間を渡る為の闇にのまれた。






 冥王宮に戻った後、一時ガウリイの体に潜らせていた意識を離し、再び闇の触手となりガウリイの体を取り込む。
 戦闘中に意識を取り戻したこの子は、おそらく何が起こったか把握したのだろう。
 今は私の力が回復していないので無理だが、記憶を操作しておかねばなるまい。

「自分の力を存分に使ってみての戦闘はどうだった?」

「……ああ、楽しかったよ」

「そうかい?それは良かった」

 そう上機嫌な様子で冥王は後は用は無いとばかりに姿を消した。
 計画は順調に進んでいて、凝った趣向も上手く行った。上機嫌にもなるだろう。

 その計画が完了する前に、私も行動しなくてはならない。
 


今回は烈光の剣一人称で書いてみました。
ガウリイが意識が無い状態ですので、もうほとんど独白ばかりな状況に……。
そして戦闘シーン。効果音とかちょっと書くのが恥ずかしかったり。いまさら恥ずかしがるなよ、って感じですが。
あ、でも戦闘シーンを書くこと自体は好きです。(得意ではないですが)

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