私の目の前で蒼い結晶に包まれたガウリイは、儚くて、美しくて。

 力強かった。


shelter 6


「この結晶は命を変化させたものだ」

 蒼い結晶の柱に手を置きながら、自慢げに話す冥王の言葉は私には聞こえていなかった。
 ただ、目の前にある結晶を見つめる。

「この結晶が砕ければ、こいつは命を失う。この人間と引き換えならばリナ=インバースもあの呪文を唱えるだろう」
 陶酔したように呟かれた言葉は、冥王の見果てぬ夢を語っていたが、それよりも私には目の前の状況の方が格段に重要だった。
 結晶に捕らわれたガウリイは、死んでいるようであり、眠っているようであり。

 新たに生まれるのを待っているようだった。

「この結晶は………」
「だからぁ、僕の説明を聞いていなかったのぉ〜」
 嬉々として長々と話し始める冥王に、私は必要な情報だけを収集する

 この結晶は人の命を具現化したものである。
 この命の結晶を砕かれると、如何なるものであろうと命を失う。

「この完璧な力。さすがは僕、だよね」
 口数の多い冥王が、誇らしげに締めくくる。
「……そうだな」
 私が漏らした言葉に、冥王は満足げな表情を浮かべる。
 色々と人間の子供のような奴だ。
 私の真意も気づかないで。
 現状に気づきもしない。


 冥王が立ち去ると、すぐに私に語りかけてくる。
 かなり冥王に苦手意識を持っているらしい。

『マスタ、ここから出てもいい?』
『ダメだ』
 ガウリイの問いかけに、私はきつく答える。
 驚いたように萎縮するガウリイに、私は意志を伝える。
『私に考えがある。そのまま大人しくしていてくれ』
『……はい』


 すでに私に浸食されているガウリイは、人であると同時に魔族でもある。
 今、結晶にされているのはガウリイの人としての命であり、ガウリイの魔族としての部分は健在である。

 つまり、この結晶が砕かれれば、私配下の純然たる魔族のガウリイが生まれることとなる。
 そして、この結晶を砕くのは私にも出来るであろうし、ガウリイ自身も自分を包む結晶を砕くことが可能である。

 そして魔族となれば、冥王の力では命を奪うことは難しくなる。異世界の魔族である私の配下であるから、こちらの世界の魔族には手が出しにくい存在。
 ある意味、身の安全が保障される状態になる。

 今のガウリイを望むか、魔族となったガウリイを望むか。


 どちらも捨てがたい、というのが本音ではあるが。
 悩んだのは一瞬だった。

 流れに身を任せる、というのもいいかもしれない。

 この騒動の中でガウリイが人としての命を失うのであれば、そのまま魔族として私の傍に置けばいい。
 もし無事に人としての命を維持するのであれば、この危うい存在を見守るのも悪くない。
 必要なら、ガウリイの主としての私なら、冥王の方法を見ていたからいつでも人としての命を分離して消滅させることは可能だ。


 ただ、かの少女に託すのも面白いだろう、とそう思ったのだ。

「ガウリイ、あの少女に委ねてみようか」
『はい、マスタ』

 決戦の時が迫る。

 つづく



 相変わらず、マイ設定で突き進んでいます。
 この状況で烈光の剣さんは余裕があります。
 ついでにガウリイも。ガウリイが外に出たがったのは、動けないのが嫌だった、という単純な理由です。そして冥王は苦手だから、いなくなるまで大人しくしていた、という。
 まあ、事態としては深刻ですけどね。
 当事者が、それを楽しむ気が満々という……。
 最初の「力強かった」という表現は、人の命が除かれて魔族状態のガウリイを見て、という意味でした。と補足説明を入れてみたり。