うたた寝の執事さん
肩に落ちてきた体温にそちらに目をやると、目を閉じ静かな寝息を立てている姿があった。
(珍しい……)
自分がいつの間にか眠ってしまいガウリイに寄りかかっていることは良くあるが、彼から寄りかかられたことはほとんど無い。
(いや、今まで無かったんじゃないか?)
記憶を探ってみても、彼のこんな姿を見た覚えは無い。
彼の寝顔と言えばベッドを共にした時にしか見たことは無い。ソファーで寛いでいる時、というのは覚えが無い。
初めて彼から寄りかかられたのが今のようだ。
このせっかくの機会を逃すまいと、ガウリイが起きないように慎重に手を伸ばし、テーブルの上の携帯を掴む。
勿論この光景を撮影するために。
シャッターの落ちる音が静かな部屋に響き、ガウリイが目を覚ますのではないかと様子を伺うが、その気配は無く安心する。
画像を保存してから携帯をテーブルの上に戻し、今度は自分の頭をガウリイにすり寄せる。
頬に当たる彼の髪の感触が心地いい。その気持ちのままに髪を啄ばむと彼が僅かに身じろいだ。
「んっ……」
ガウリイが体を起こし、瞬きを数度繰り返す。
それを眺めながら、肩に残った彼の体温を確かめていると、ふとこれだけでは全然足りないと感じる。
もっとガウリイの体温を感じたい。
「……あ、ごめん」
状況が把握できたのか、ガウリイが目を逸らして謝る。どうやら照れているらしい。
そんな様子にも触発される。
(今日は俺もガウリイも寝るだけだし、明日は別に早くは無いから大丈夫)
などと考えてしまうのは、日頃ガウリイから「考えて行動しろー」、と散々言われ続けた成果である。
こんなことを考える余裕はあるのだが、目の前の彼に対しての余裕は無い。
勢いのままにソファーに押し倒せば、普段だった上手くいかないところだが、まだ頭がしっかり覚醒していないのだろうガウリイは、コロン、とソファーに転がった。
「何いきなり盛ってんだお前!!」
仕事モードのすました顔ではなく、素の表情に笑みが深くなる。
勿論ガウリイの抗議など聞く気は無く。
「いきなりスイッチを入れてくれたのはガウリイなんだけど」
その言葉にガウリイはきょとんとした表情を浮かべたが、何のことを言っているのか察すると、戸惑い動きが鈍くなる。
そうなると自分のペースに巻き込むのは簡単で、頬を撫でるとガウリイは目を閉じた。
日常の中の幸福。