あの人の背に流れる金の髪は、夜目でも良く見える。
 ましてや、あの人独特の気配は遠く離れいてもすぐに見つけることが出来る。


揺らぎ


「ゼロス、俺はそろそろ眠りたいんだが」
「どうぞ、遠慮なくお休みください、ガウリイさん」
 ベッドに腰掛けて深々とため息をつく。
 彼がこのぐらいのことで、感情を乱したりしないことは経験で良く知っている。
 彼はよく表情を変え、感情のままに行動しているようであるが。
 絶対に、その奥底にあるものを表に出そうとはしない。
 感情を制御することが剣士としての能力に係わるからなのか、周りに自分の動揺のせいで影響が出ないように気を使っているのか。

 自分の感情で自分が保てなくなるからなのか。

 どうであるのか自分にはまだ分からない。
 そのうち調べてみてもいいかもしれないが、とりあえず今は、その奥底にあるものの揺さぶり方さえ分かればそれでいい。
 彼が奥底にあるものを揺さぶられて発する、不安、恐怖、とかそういったものは独特の甘露だった。
 強さと弱さを表裏一体としているのは人間らしい点なのだが、これだけの感情を内に持っている人はなかなかいない。
 彼の守護している少女であっても、その内封している力や希望を捨てない強固な意志などはなかなか類を見ないものではあるが、その内に秘めているものには影はない。
 きっと彼の奥底にあるものは彼の影なのだろう。

「お前がそばにいると眠れないんだけど」
 あきれたように言う口調には、僅かな不快感があるだけでたいして感情が動いた様子もない。
「もうしばらくしたら失礼しますよ」
 別に今は空腹でもないし、この人から負の感情を引き出さなくても問題ない。
 もし負の感情が欲しいときは、それなりに揺さぶりをかけさせてもらうが。
「あっそ……」
 相手をするのに疲れたのか、それまで腰掛けていたベッドに横になりこちらに背を向けた。

「僕に背を向けちゃっていいんですか〜」
 それに答えたつもりなのか、ああ、という答えだけが返ってきた。
 きっと背を向けていても、こちらに全神経を集中させているのだろう。
 これ以上待っていても、彼から甘露が流れてくる様子はないが、とりあえずいつもの儀礼のように言葉を続ける。
「襲っちゃいますよ〜」
「はいはい」
 最初のうちこそ驚いたり、怒ったりしていたが、今ではさらっと流される。
 結局、彼の人並み外れた勘は、こちらにその気があるかどうかぐらいはすぐに分かるのだろう。
 それを逆手にとって、ここで本当に襲うという選択肢もあるが。
 今日のところは飢えていないから、まあいいか、と思う。
 彼は、ここまで気配を読んでいるのかもしれない。
 そう思う度に人にしておくのは惜しい、などといった考えが頭をよぎる。
 ちなみにこれを口にしても、僅かにだが彼の感情を揺さぶることが出来る。
「つれないですねぇ。それじゃ、僕は失礼しますよ」
 早く出て行ってくれ、とばかりに手を振られる。
 それに答えるように僕はその場から姿を移した。


 闇の中、僅かな月光を受けて乱れる金の髪が鈍い輝きを放つ。
 負の感情をこぼすその人の体に牙を立てる。





end



 あんまり意味のないSSです。何が書きたかったのかも分かりません。
 思いつくままに書いちゃったので。
 ゼロガウの私のイメージってこんなのです。怠惰な感じ。



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