空気




「ガウリイさんは、僕とピーマンとどっちが嫌いですか?」
「はっ……?」

 それは午後の日差しもいくらか弱くなった時間に、唐突にゼロスの口から発せられた。



「ですから、僕とピーマンとどっちが嫌いですか?」
「……ピーマン」

 その答えのあと、しばし固まる2人。
 固まっている理由はそれぞれで。

「それはピーマンより僕の方が好きということですか?」
 確認のように問いかけると。
「好きなのは、ピーマン」
 と、返された。
「だいたい、食べ物の比べるということに疑問は感じないのか?」
 と、さらに畳み掛けられる。

 彼の言動が理解できないのはいつものことで、あやふやな答えを返すのもいつものことではあるのだが、さすがにこれには納得がいかない。
 まあ、最後のはもっともと自分でも思うが、とりあえずは最初の答え。

「僕のことがピーマンよりも嫌いじゃないなら、ピーマンより好き、ということでしょう?」
 彼の表情は明らかに、「なんで、そんなことにこだわるんだ」と言っている。
 それでも僕の好奇心を刺激したのだから、貴方には答えてもらわないといけない。

「別に……」
 別に、は答えになっていない。
 貴方が答えたつもりでも、僕には伝わらない。
 それでは、答えにならない。
「ちゃんと教えてくれないと、お仕置きしちゃいますよ〜」
 ガウリイさんは心底うんざりした顔をしている。
 そして溜息を1つついた。

「嫌いじゃない=好き、じゃないだろ」
 まるで子供を諭すかのように話す彼に、自分はどのように映っているのだろう。
「つまり、嫌いではないけれども、好きでもないと?」
 それは理解できるものの、ピーマンという対象物があるときに、果たして有効な考え方であるのか……。
 彼の中ではそれで完結しているようだが、僕は納得がいかない。
 しかし、これ以上の説明を彼に望むことを出来ないことも僕は知っている。

 多分、彼は肝心な部分は隠している。

 つまり、内面を知りたいなら自分で探求して見せろ、ということなのだろう。


 その挑戦とも思える意思は、彼の自我の孤独さに所以しているのだろう。
 そしてそれを自分はまだ理解できてはいない。


「いまいち分からないですねぇ。なので、分かるまでご一緒させていただきます」
 露骨に嫌そうな顔を彼がしている。

 僕はしぶといですからね。
 覚悟をしてもらわないと。


 貴方は、僕の興味をどこまでも掻き立てて下さる。



 end

空気のような存在。


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