ウィスキーボンボン(ゼロガウ)


 首筋から肩、二の腕と滑っていく指先。
 そのまま指先まで滑らせた指を絡めて体を密着させてくる相手に、ガウリイは気怠い体で首だけをひねり僅かに視線を向ける。
 それに気づいたゼロスは、それでも自らは発せずただ微笑むだけで促す。


 ふいっ、とゼロスに向けていた視線を逸らしてガウリイは呟いた。
「………・・・…、お前にはさっきのは気持ち良くないんだろう?」
「ええ…、僕にはあなた方の感覚は備わっていませんから」
 まあ、苦しくもないんですが、と言葉を続ける。

「俺の負の感情を食べる代償か?」
 先ほどよりも強い声。
 そして、指を絡めていない左手で握りしめられている枕。

「いいえ」

 その声は思ったよりも響いて。

 「僕がしたいんですよ」
 貴方に。
 そう囁かれる言葉に、ガウリイは握りしめた枕に顔を埋める。
 絡ませた手とは反対の手で、ゼロスは闇に浮かぶ金髪を手に取る。

 指に巻きつけた金の糸は、指の動きを止めれば解けてシーツの上に落ちて行く。
 代わりに新しく髪を一房、指に巻きつければそれもまた己の動きを止めれば微かな感触を残して消える。
 その繰り返しをふと止めて、そのまま体をガウリイに密着させる。

「貴方は、手を放したらすぐに離れてしまいそうで。僕との関係に少しでもメリットがあれば、引き留められるのなら、と思うのですが」

 耳元で囁かれる声に、ガウリイはただ更に強く枕を抱きしめるだけで。
 顔を上げることは無い。

 ただ、与えられる擬似的体温に仮初めの安らぎを得て。
 己にかかる重量に、擬似的充足感を得て。

 紡がれた言葉には、何の価値も見いだせずに浅い眠りに落ちようとするガウリイに、ゼロスは言葉を続ける。
 
「・・・…まあ、ガウリイさんの『抵抗できなくて悔しい』とか、『魔族なんかに感じたくないのに』といった感情は美味しく頂かせて…」
「そっちか!!」

 先ほどの倦怠感とは打って変わって、素早く身を起こしたガウリイがゼロスの肩に掴もうとするが、ゼロスは空間を渡り部屋の隅に移動することでそれを躱す。
 ガウリイの腕は空を切り、ベッドに落ちる。
「ゼロス〜〜!!」



 己から洩れる笑みの意味をゼロスは知っている。 
 ただ、理解は出来ない。
 それでいいのだ。

 理解をしてはいけない。

 その一線を越えれば。

 己の破滅か。崩壊か。

 無か。


 べしっ。

「……痛いです…」
「それは良かった」

 与えられたでこピンと、苦笑するガウリイ。

 意識の端にかかる「痛いの痛いの飛んで行けー、でもしてやろうか」というガウリイの声はゼロスの耳には入っているが、認識はされていなくて。
 楽しそうに笑う彼も目に入っていなくて。


「結局、僕は・・・…」


end

 たまにはシリアスを。
 でも、ゼロスさんは結局魔族であるという事が最優先なので、結局無難な結論にたどりつくのです。
 タイトルでいつも通り思い悩み「闇鍋」なんてアホな事も考えてました(笑)



ブログにて2015年1月5日掲載


 こういう関係もある意味幸せな関係なのかな、と思ったりもします。
 だって双方納得した関係ですから。


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