「マスタ」
 そう言って、ガウリイは私に手を伸ばす。



夕日



 ガウリイは私のことを、「マスタ」と呼ぶ。
 「マスター」ではなく、「マスタ」。

 少し言い方が違ったとしても、私を呼んでいるのには間違いは無いので、そう呼ばれることに不満はない。

 不満はないが、不安がある。

 おそらくガウリイは俺のことを「マスター」と呼びたく無かったのだと思う。
 「マスター」と呼べば、それは一般的な主従関係に落ち着いてしまう。その他の大勢のものと同じ呼称。

 そして、私とガウリイを完全に主従として分けてしまう呼称。

 だからガウリイは使わなかったのではないだろうか。

 ガウリイが「マスタ」という単語を口にするとき、若干語尾が上がる。
 それは、甘え。
 ガウリイが一言の元で示した、私への信頼と甘えの意志。

 それはひどく心地よい。
 恐らくそれは、他人には見せることの無い彼の表情。それを私は独占している。他には向けられる事の無い一言の言葉で、私は彼の全てを独占している。

 更に私が幸福に感じる要素は、ガウリイは他の主従関係と私たちは別だと認識しているのだろうという事。
 言いようもない充足感が私を満たす。


 彼自身が望んでこの状況にいるのだという事。




 そして。
 私が不安に感じるのは。




 彼自身が望んでこの状況にいるのだという事。

 
 恐らく私は元の世界へと戻ることになる。
 それは遠くない未来。
 その時にこの子は。


 信頼と甘えを寄せる私を失うか、この世界を失うことになる。


 それはガウリイの心を二つに分けるようなもの。
 分けられた一つは確実に死に向かう別れ。

 そして私はガウリイがどちらを選ぶが分かっている。
 考えるまでも無いことだから。
 ガウリイの信頼と甘えを寄せられる箇所が無くなるのを知っている。

 
 その選択をガウリイに強いることになってしまった私は……。


 
 それでもこの子の「マスタ」という呼び声に歓喜を覚えずにはいられないでいる。




 そして私は、手を伸ばしてきたガウリイに答えてその体を抱きしめた。


end



 ちょっとシリアス風味の烈ガウでした。
 実はこの「マスタ」呼びは当初からの設定でした。
 語尾を上げる、というところも最初から。ガウリイさんは烈さんが傍にいる間は甘えまくりなのですよ!!
 そしてその事と今後のことに関して不安に思う烈さん、という。

 ……、まあ、でも、とりあえずは相思相愛のラブラブCPです!!

ブログにて2011年11月5日掲載


SSへ