三角帽の子
小さなかわいい女の子。三角帽の女の子。林檎のほっぺの女の子。
少女は玉を持っていた。七色きらきら輝く玉を
少女は玉を知っていた。両手で大事に持たないと アッと言う間に割れちゃう事を
片手を離してしまったら たちまち壊れてしまう事を 優しい女の子 目を逸らすことなんてできなかった
ゆっくり丁寧に歩いていると 同級生が自転車で近づいて
「そんなにのんびり歩いていたら どこへも着きやしないよ」と言って追い抜いていった
もう少し行くと近所のおばさんがすれ違って
「フラフラ歩いて危ない子ね、もっとキチンと前を見て。もっと周りに気をつけなさい」と言った
何でかバッタリ母さんと会って
「早く帰ってきなさいよ」何だか悲しそうな、泣いている様な声だけど少女の耳に届かなかった
野道は涼しかった。玉は さらさら風を受けると真ん中がちょっと凹んでまるで呼吸をしてるように見えた
気持ちよさそうだった。ずっとずっと歩いていける気がした。
少女は微笑った
橋を横切ろうとしたその時だった 猛スピードに唸りをあげた 大きな車が突進して
少女の身体は舞い上がり そのままあの世に飛び込んだ
そのあと たくさん人が集まってきた
おばさんは 冷たい目 同級生は 不思議な顔
母さんは 泣いていた
だけど誰も気づかなかった 誰の目にも見えなかった。
美しい玉の事 草むらの影で 虹色の玉は輝いていた