コミックZ。  業界一の発行部数を誇るコミック誌。 とある街のとある一角。  その中のとあるビル。  全面改装でもしたのだろうか、または新築 なのだろうか。 一面白の外壁。  絶え間無く出入りする人々。  新しい、若しくはそう見えるビルの4F。  コミックZの編集部は、そのビルの4Fに ある。  私の名前は澤田真紀子。  肩書きは「コミックZ編集長」。  周りじゃいろんな事を言われてるようだけ ど、関係ないわ。 「コミックZ編集部」  そう書かれた、4Fのとある一角のドア。  そこから、仕事がスタートする。  さて、今日はどんな1日になるかしら……。 「今日も……頑張るぞ!」  私は軽く両頬を叩き自分に気合を入れる。  そして、編集部へのドアを静かに開ける。  ガチャ……。  ドアの向こう側は、喧騒で溢れていた。 「○○先生の原稿、まだ上がんないの!?」 「……うーん、やっぱり13Pの4コマ目は インパクトが薄いと思うんだけどなぁー?」  みんな、いつもながら頑張ってるわね。 「うっぎゃー! 忘れちまったよぉー」  そう思ってると、入り口から賑やかな声が 聞こえてきた。  飛びこんできたのは……あら? 「おはよ、坂口君。なに? また忘れ物?」 「ふぇー、編集長すいませんー!」  その声を聞いて、ハッとしたかのように、 数人の編集者たちが姿勢を正して大声で挨拶 する。 「編集長、おはようございますっ!」 「おはようございますっ! 今日もばっちり 頑張りましょうねっ!」  みんなの挨拶に負けじと、私も思いきりの 笑顔で答える。 「えぇ、皆、今日も頑張りましょうね!」 「ハイッ!」  一同が、一斉に答えた。  フフ……なんだか楽しい1日になりそうな 気がしてきたわ。  その日の午後10時。  最後の編集者が帰ってから30分ほど経っ ただろうか。 「さて、私も帰ろうかしら」  帰り支度を終わらせ、ハンガーのコートに 手をかけたとき、静かにドアが開いた。 「……澤田君、いいかね?」  説明しておくと、今来たのはうちの社長。  連日のようにやって来るの……疲れるわ。  ホントに仕事してんのかしら、コイツ。  そういえばなんて名前だったかしら?  ま、こんなやつの名前、覚える価値なんて 無いけど。 「澤田君、いい加減、ワシに付き合ってくれ てもいいんじゃないかぁ?」 「社長、仕事が立て込んでおりますので後に して頂けませんでしょうか?」 「またかね。そろそろワシの誘いに乗った方 がいいと思うぞ、君のためにもな……」  しつこい……。 「申し訳ありません。私は社長と付き合う気 などございません」  コートを取り、足早にドアに向かう。 「気が強いな…… ワシに逆らうとどうなる か、身をもって教えてやるよ……」 「それは楽しみですね。期待しております」 「ふ、楽しみにしておきたまえ」  ハイハイ、クソオヤジめ、吠えてなさい。  翌日……。  昨日もあのハゲが来るなんてついてない。  と、元気元気! 元気出していかなきゃ!  そう思い、編集部へのドアを開ける。  ガチャ……。  ドアの向こう側は、喧騒で溢れていた。 「××先生のクイズ、まだなのぉー?」 「うーん……ジャンルが音楽関連に偏り過ぎ だと思うんだよね」  ……何? 何なの?  きっと、戸惑いの顔が出ているであろう私 を見つけた編集者達が元気に挨拶してきた。 「澤田クイズ長、おはようございますっ!」  ……クイズ長??  そして、隣の部屋に居たクソ社長が、私に 言い放った。 「君は今日から晴れて『クイズ長』なんだ。 頑張って『コミックイズZ』を引っ張って行 ってくれたまえよ! ハッハッハー!」  私は、完全に呆れていた。  ……というよりも、キレていたのかも。 「冗談じゃない! ……本日限りで、会社を 辞めさせて頂きます」 「クイズ長、辞めないで下さいっ! 私達は クイズ長の下で働きたいんです!」  そう言ってくれるのは嬉しいんだけど…… 「素晴らしい部下が居て幸せだね、澤田君! 頑張ってくれたまえよ! ハッハッハー!」  アンタが最悪なのよ……。  ……絶対、独立してやる……。  私の春を返して……。  その前に1つだけ聞いておかなければ…… 「社長、ちょっと宜しいでしょうか? なぜ クイズなんですか?」 「電波だ」  ……聞くんじゃなかった。 後記  結局オチてません(汗)