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タコさんの ぼうけん     
 きよらかな みずが うみに そそいで います。

 ふゆを うみで すごしたアユさんたちが ふるさとの かわに

のぼって いきます。

 つゆに はいると ウナギさんたちも のぼります。

 スズキさんを おっかけて タコさんも のぼって きました。

「おやっ スイカばたけが あるぞ」

 はたけのほうに タコさんが ゆっくりと やってきました。

「どれが おいしいかな」

 おおきなスイカを ころがして タコさんは どてのところまで

はこんで きました。

「いち にーの さん えいっ」

 かけごえを かけて したの いしのうえに スイカを おとし

たのです。スイカは かわのなかに かけらを とばして いしの

うえで パクッと われて しまいました。

「うわーおいしそう」

 まっかに うれたスイカを タコさんは むちゅうになって た

べはじめました。ガブリと くちに いれては ペッペッと たね

を はきだします。とっても あまいスイカでした。

「ああ おなかいっぱい」

 ふと タコさんは かわのなかを みました。どっから あつま

ってきたのか ドジョウさんが とびちったスイカを たべていま

した。

「やあー タコさん これ うまいですね。さーてと くりのみを

さがしに いこおーっと」

 ドジョウさんたちは くるっと はんてんして じょうりゅうの

ほうに およぎかけました。

「あっ ちょっとまって ぼくもいく」

 タコさんは ドホンと とびこみました。けれども ドジョウさ

んたちは どんどんおよいで いってしまいます。タコさんは け

んめいになって あとを おっかけました。

 どのくらい おっかけたでしょうか。いつのまにか タコさんは

ドジョウさんたちを みうしなって しまいました。

「ん やあー ヤマメさん こんにちわ」

 イワナさんや ニジマスさんも およいでいます。どうやら や

まおくの たにがわに タコさんは まよいこんでしまったようで

す。 すんだ つめたいみずが ながれていました。

「わあーっ シマへビだ。 シマヘビが おそってくるぞ。 むこ

うぎしに わたって にげよおーっと」

 あたまを もたげたシマヘビの むれが すいめんを するする

と すべるように およいで タコさんを おってきます。

「どっこいしょっと あっ あれはなんだ」

 きしの いわの うえから タコさんが さけびました。かわの

まんなかあたりで バシャバシャ バシャっと しぶきが あがっ

ていたからでした。

「わあーすごい。シマヘビたちを ニジマスさんたちが たべちゃ

ってる」

 またたくまに シマヘビのむれは ほねだけにされて かわぞこ

に しずんでしまいました。

「かわいそうだけど これも しぜんの おきてだから しかたが

ないのよね」

 すずしいかぜが このはのトンネルを さーっと なぜながら

ふいてきます。クロカワトンボがヒラヒラと とんできて いわの

うえに とまりました。

「ああー いいながめだな」

 ふと みると いわの あいだから みずが たきとなって な

がれ おちていました。つめたいみずが ながれてくるので タコ

さんは ぶるぶるぶるって ふるえてしまいました。

「おやっ サワガニだ。うまそうだな。たべちゃおーっと」

 サワガニが あまりにも おいしいので タコさんは おおよろ

こびです。

「さてと ぼちぼち うみに かえろうかな」

 つごうの いいことに りゅうぼくが うかんでいました。

「これに のって きゅうりゅうくだりだ」

 タコさんは りゅうぼくに びょこんと とびのりました。りゅ

うぼくは はやいはやい ながれにのって どんどん くだってい

きます。

「いわに げきとつしそうになったけれど もう ここまでくれば

だいじょうぶだな」

 かわはばも ぐっと ひろくなって ながれも ゆるかになって

きました。

「それにしても あついな。よし およいで いこおーっと。りゅ

うぼくさん さようなら」

 タコさんは はずみをつけて ながれのなかに どぼんと とび

こんでいきました。

「やあー ナマズのおじさん こんにちわ」

 かわのなかでは コイやフナも およいでいます。

 タコさんは どんどん くだっていきます。もう うみも ちか

いようです。

「なつかしいな しおの かおりだ。そうだ スイカをたべて か

えろうかなーっと」

 タコさんは かわぎしに スイカをおとして はんぶん たべま

した。のこりの はんぶんは おみやげです。

「このスイカ おいしいですよ。チヌさん たべませんか。ボラさ

んも どうぞ」

 もう かこうです。みちしおなので しおみずが かわに なが

れこんでいました。

「やっぱり うみっていいな」

 ざあーっ ざざーっと はまべのほうから なつかしい なみの

よせかえるおとが きこえてきます。

「はやく ねぐらに かえって ねよおーっと」

 あおい あおいそらに もくもくと オオダコのような しろい

くもが わきあがっています。あおいうみは あつい ひざしをう

けて きらきらと かがやいていました。

「イシダイさん ただいま。ちょっと そのがんしょうの あなを

かりますよ」

 うみのそこは タコさんにとって きけんが いっぱいあります。

いわのかげから どうもうなウツボさんが ひっそりと えものを

ねらっています。おおきなサメさんも ゆうゆうと やってきます。

「いわに へんしんだ。ええいっ」

 タコさんは いわのいろ そっくりに なりました。もう ひと

あんしんです。

「なんだか つかれちゃったな。おやすみなさい」




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著者  さこ ゆういち