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縄文杉のおじいさん
第一話ちょっと冒険イッシー君
  右へさーっと、左へさーっと、全員で向きを変えながらイワシの群れもやっ

 てきた。

  もう屋久島の沖なんだけど、人に見つかるとまずいので、夜になるのを待っ

 ているんだ。

  歌でも歌っちゃおうかなーっと・・・・・・・・。

 「ちゃんちゃらっこーちゃんちゃらっこー待つ身のかなしさーしみじみとーー

 ほいほい」

 「なかなかうまいじゃないか。こりゃーたいしたもんだ。いいぞいいぞ」

  デブキチ親分があんまりほめるもんだから、ついつい調子にのっちゃって、

 三曲も歌っちゃった。

  あくまでも青く晴れわたった空も、ぽっかり浮かんだ白い雲も、ゆらゆらと

 ゆらめく青い海も、今は夕陽にあかあかと染めぬかれて、そりゃあもういい景

 色なんだ。

 「もう一曲歌っちゃおうかな。デブキチ親分もいっしょに歌ってよね」

 「よし、やったるぜ。一、二の三、ほいほい」

 「夕やけこやけで日が暮れてーー空にはきらきら銀の星」

  ちょっとばらしちゃうとね、デブキチ親分は音痴でさ、歌はへたくそなんだ。

 だけど知らぬが仏、いい気持ちで歌ってるみたい。

 「うまい、うまい」

  さわらぬ神にたたりなし。へたくそだなんて、けなすと後が恐いからね。

  というわけで、いつの間にか夜になっちゃった。

 「それにしても腹がへったなあ」

 「いよいよ屋久島に上陸だ。イッシー君、全速前進とりかじいっぱい」

  左方向へ進路を変えて前進したんだ。しばらく進んだら宮之浦港に入っちゃ

 った。港から宮之浦川を上流に向かって、よっこらしょ、どっこいしょと、か

 け声をかけながら、さかのぼりはじめたんだ。

  ところがだ、川に入ったとたんに。

 「おれは先に行ってるぜ」

 「待って、右も左もわからないんですよ。あーあー行っちゃった」

  ぼくちゃんをおいてきぼりにしちゃって、まったく勝手なんだ。しかたがな

 いので、ぼくはとぼとぼと歩いて行ったんだ。

 「おっ、水草だ。こりゃーうまい、うまい」

  がむしゃらに食べまくっちゃった。

 「ああ満腹まんぷく」

  まっくらな木の葉の間からダイヤモンドをちりばめたように、きらきらっ、

 きらきらっと星が光りかがやいているんだ。

 「星ふる夜ってこのことか・・・・・・」

  あんまり美しいものだから、しばらくのあいだ見とれちゃった。

 「さて、出発だ」

  ぼくは黙々と川の中をさかのぼって行ったんだ。

 「だんだん山の中に入って行くみたい」

  もうまわりは樹木だらけでさ、枝や葉がトンネルみたいになった下を川が流

 れているんだ。

 「おやっ、これは獣道じゃないか」

  その小道に入りこんだとたん、ドーン。

 「あいたたった。なんだなんだ」

 「痛いなあ、もう。おまえはだれだ」

 「なーんだシカさんか。ぼくイッシー君」

  ちょっと暗かったのでシカさんと衝突しちゃった。

 「おいらはヤクシカというものだけど、おまえ恐竜じゃあねえか。たしか恐竜

 は六千五百万年前に絶滅したはずだぞ」

 「そうなんだけど、ぼくだけは卵のまま冬眠していたんで生き残ったんだよ。

 ヤクシカさんはそんな昔のことをなんで知ってるの」

 「この屋久島には七千年も経った大きな杉の木があるんだけど、その縄文杉の

 おじいさんから聞いたのさ。この川にそってもう少し進むと、立ってるから行

 ってみろよ」

  ヤクシカさんはそう言い残すと、森の中に消えちゃった。

 「それじゃあ行ってみようかな」

  川の水は冷たくって、とってもきれいなんだけど、ぼくには浅すぎて歩きに

 くいけれど・・・・・・・・。

 「やっぱり歩くのは、にがてだなあ。おおっと、あったあった。縄文杉のおじ

 いさんだ」

  それはれそは、でっかい杉の木なんだ。

  雑木林の中に立っているんだけど、巨体に多くのツルを巻きつかせちゃって

 さ、縄文杉のおじいさんはきっと屋久島の守り神なんだ。

 「おはようございます。恐竜のイッシーです。今日もいい天気になりそうですね」

  しらじらと空が明けてきちゃった。ひんやりと空気がすんでいて、とってもい

 い気持ち・・・・・・。

 「おお恐竜とはなつかしいなあ。わしのおじいさんの、それまたおじいさんの、

 おじいさんから昔ばなしは伝え聞かされたもんさ」

 「縄文杉のおじいさん、恐竜のことなにか知らない」

 「イッシー君とか言ったな。わしの聞いた話しでは、南の海のどこかに恐竜の

 島が今もあるらしいのだ。だが、まだ誰にも発見されていないということじゃ」

 「どうしたら行けるのですか」

 「それは、わしら一族の秘伝で秘密じゃよ」

 「そ、そんな・・・ぼく恐竜なんだから」

 「それはそうだな、まあーいいだろう。南の海のどこかで、うず潮を見たら呪    

 文を唱えるんだ」

 「なんという呪文なの」

 「たしかガラガラトントン・チュウセイダイだったか」

 「ありがとう。縄文杉のおじいさん」

 「幸運を祈ってるぞ。さらばだイッシー君」

  ぼくは川の方に引きかえしたんだ。

 「おそいじゃないか、どこをうろうろしていたんだ。待ちくたびれちゃったぜ」

  デブキチ親分が威張って、目を光らせたんだ。

 「ごめんごめん、でもそんなに怒ることないじゃん」

  ぼくをおいて先に行ったことなんか忘れちゃってさ、もう少し待たしてやれ

 ばよかったねえーだ・・・・・・。

 「おまえは寛大な親分をもって幸せものだぜ」

  なにが幸せなもんか、ただ威張ってるだけじゃないか・・・・・・。

 「縄文杉のおじいさんからいいこと聞いちゃった。南の海のどこかに恐竜の島

 があるんだってさ。さがしに行こうよ」

 「なにが恐竜の島だ。だまされちゃってさ」

  デブキチ親分はバカにして、まるっきり信用しないのだ。まあーいいか、後

 でびっくりしても知らないからな・・・・・・。

 「デブキチ親分、夜になるまで隠れ場所はどこかにないの」

 「ちょうどいい所がある。イッシー君いくぞ」

  ヤクスギやモミなどがジャングルのように茂った宮之浦岳に朝陽が照りつけ

 て、いいながめなんだ。だけど、ながめているばあいじゃない。人に見つかる

 とまずいからさ。この世で一番恐いのは人間なんだ。なんせ、どう猛でなんで

 も殺して食べちゃうんだもんね。

 「このほら穴さ。どうだ、いいだろう」

 「うわあ、でっかいほら穴だなあ。さすがはデブキチ親分だ。いいレーダーを

 装備しているんだなあ。さすが、さすが」

 「えっへん、なにしろ、おれさまのは八百ボルトのレーダー装置だからな。え

 っへん、えっへん」

  いやだなあ・・・。ちょっとほめただけで、すぐ威張るんだから。

  上流の奥に口を開けたほら穴で、ぼくたちは夜になるのを待つことにしたん

 だ。入口は木の枝や葉、それにシダやツルなどが覆いかぶさっているんだ。

 「このほら穴はちょっと見つからないだろうぜ。そう思うだろうイッシー君」

 「ここなら安心ですね」

  ところが昼すぎになって、サルの一家がやって来たんだ。屋久島にいるから

 ヤクザルというんだってさ。おかあさんザルのおなかに子ザルがぶらさがっち

 ゃったりしているんだ。

 「キッ、キキッ」

  ぶらんぶらんってブランコのようにツルをゆりうごかして、ヤクザルのボス

 が高い木の枝に飛びのっちゃった。

 「キキッ、キッ、キキッ、キッ」

  遊んでるサルたちを見ているのも楽しいけれど、ちょつと声がうるさいの。

 もう少し静かにしてくれないかな。サルたちを見ているうちに、いつの間にか

 宮之浦岳をあかあかと夕陽がそめてきちゃった。

 「そろそろ出かけるか。おれは先に行くぜ」

  デブキチ親分は川をくだって行っちゃった。いつものことだから怒るだけ損

 だよね。

 「今夜も星がきれいだな。さて、出発だ」

  水草を腹いっぱい食べたぼくは、宮之浦川から港の中に入ったんだ。レーダー

 でとらえているから、デブキチ親分はぼくの居場所がわかるらしい。

 「さっそく沖縄へ向かうぞ。全速前進、とりかじいっぱい」

  宮之浦港を出て、左方向に進路をとったんだ。

 「えんやーとっとっ、えんやーとっとっ」

  しっぽを左右にふりながら漕いでいるんだ。後へ折りまげたぼくの前足に、

 デブキチ親分は寝そべっちゃって、まったくいい気なもんだわさ。

 「警戒せよ、警戒せよ。潜望鏡を上げよ。前方を確認したら、ただちに報告せ

 よ。・・・・・・・・・これこれ、はやく報告せんかいなあ」

 「まっくらで何も見えません。報告おわり。・・・・あっ、ちょっと待って、ト

 ビウオの大軍がこちらへ向かって飛んできます」

  雲から月が顔を出したんだ。

 「いたい痛い、助けてくれ」

  トビウオが次から次に飛んできて、ぼくの頭や長い首を攻撃するんだ。体当

 たりで集中攻撃なんだ。

 「これじゃーたまんないよ」

 「イッシー号、おもかじ、とりかじ。いや潜水せよ」

 「デブキチ親分はちぐはぐな命令ばかり出して、なにを威張ってるの。バカに

 するんじゃあないぞ。攻撃されているのは、ほくちゃんだけじゃないか。まっ

 たくもう、いやになっちゃう」

 「おっ、こんどは左前方から小型ミサイルみたいなものがこちらへ向かってく

 るぞ。警戒せよ、警戒せよ」

  UFOのように色のちがう光りを点滅させながらヤリイカの群れが攻撃して

 くるんだ。

 「うひゃっ、これは危ない。イッシー号、エンジンをフル回転させろ。おもか

 じいっぱいだ。全速前進。あいたたったー」

  ヤリイカがデブキチ親分を攻撃するので大あわてなのさ。これで、ぼくの痛

 みをわかってくれるといいんだがなあ・・・・・。

 「はいはい、全速前進。おもかじいっぱい」

  右方向へ進路を変えながら、ぼくはシッポを左右にふって、ひっしに漕いで

 いるんだけど、なかなか速度が出ないの。だから、頭をちょっとひねって考え

 ちゃった。

 「うひょっ、急に速くなるから、おっこちるじゃねえか。・・・・しかしすごい

 スピードだ」

  うっひっひー・・・・。デブキチ親分をびっくりさせちゃった。

  スピードを出すにはシッポの先っちょを少しひねって、それを小さく、しか

 もより速く、ぐるぐるぐるって回転させるんだ。どうだい、いい考えだろう。

 「どうですデブキチ親分、いままでの十倍ぐらい速くなったでしょう」

 「ん、こりゃあいい、まるで原子力潜水艦だぜ。少しはイッシー君を見なおし

 ちゃったぜ」

 「少しはじゃないでょう。おおいに見なおして下さいよね」

  というわけで、ヤリイカの総攻撃から無事に逃げきっちゃった。

  ふと気がつくと、水平線のかなたに朝陽が浮かびあがっちゃって、あかあか

 きらきらと輝いていたんだ。

 「あさだ朝だよー朝陽がのぼるーああーなんとーすばらしい夜明けー南の海よー」

  きれいな海の景色を見つめていたら、つい歌が出てきちゃった。

  ぶおんぶおんぶおんって海水をかき回すものだから、速いのなんのってありゃ

 しない。

 「あっ、島だ。あれは奄美大島だぜ」

 「ところでデブキチ親分、恐竜の島の話しだけど、はやく行きたいもんですね」

 「そんなのあるはずがないぜ。縄文杉のじいさんがイッシー君をからかっただ

 けのことさ」

 「そうかなあ、ぼくはあると思うんだ。呪文まで教えてもらったんだから」

 「すっかりだまされちゃって、しょうのないやつだ。まあー勝手にそう思って

 るがいいぜ」

  そうこうしているうちにサンゴ礁が見えてきたんだ。

 「いやはや、なんと美しいのだろう」

  へぇ、意外いがい。デブキチ親分にもサンゴの美しさがわかるらしい。

  サンゴも美しいのだけど、その上を熱帯魚のコバルトスズメやクマノミなど、

 色あざやかな小魚さんたちが泳ぎ回って、それがまた美しくって奇麗なんだ。

 「もう昼すぎじゃねえのかい。潜望鏡をあげて確認。ただちに報告せよ」

 「はい、はい」

  ぼくは首をのばして海上を見たんだ。

 「暑い、暑い。太陽が照りつけています」

  陽光が小波に反射しているから、海ぜんたいがとてもまぶしいのだ。

 「左前方に島が見えます。報告おわり」

  もくもくと立ちのぼった入道雲の下に、ひょろ長く横たわった島が見えてい

 るんだ。

 「あの島が沖縄なんだぜ。シッポ回転に切り替えたもんだから、思ったより速

 く着いたじゃないか。イッシー君、ご苦労ご苦労」

  ほめられて、疲れがいっぺんに吹き飛んでしまっちゃった。

  沖縄の南部に糸満という漁業の町があるんだけど、そこの沖合いを航行中な

 んだ。

 「ピピーピピピー右後方を確認せよ」

  デブキチ親分のレーダに何かが映ったらしい。

  ぼくの潜望鏡で見たら、ひとりだけ乗った小舟がこちらの方にやってくるん

 だ。ひょろ長い舟なのに、わりかしスピードが出ているじゃないか。

 「カヌーみたいな舟が向かってきます」

 「イッシー号、ただちに潜水を開始せよ」

 「了解、了解。しかし、おもしろい形の舟だなあ」

 「いいかいイッシー君、あれはクリ舟でサバニというんだ。サバニに乗ってい

 る人は糸満漁師で一本釣りを誇りとしているんだぜ。マグロやハタなどの大物

 をねらっているんだ。・・かってはあの小さなサバニで太平洋からインド洋、地

 中海までも釣りに出かけていたらしいぜ」

 「デブキチ親分はくわしく知ってるんだね」

 「おいどんは南海うまれでごわんど。知っちょってん、なんの不思議はなか」

  なにしろ、デブキチ親分は長いあいだ池田湖で暮らしてきたから、ついつい

 鹿児島弁が出たというわけ。

 「まだ陽が高いので沖縄への上陸はできませんよ。どうします」

 「そうだなあ、いっそのこと西表島に直行するか。今から行けば夜には着くだ

 ろう」

 「それでは出発します」

  こーんこーんざぼんって音なき音をたてて、青い青いうなばらをイッシー号

 は突き進んでいるんだ。ふわあっすーうっと、大きなうねりが通りすぎちゃっ

 てさ、エレベーターで上がったり、下がったりしているような感じだ。

 「おい、あれを見ろよ」

  前方で人魚のような動物がうねりに浮きながら遊んでいるのを発見したんだ。

 「子供を抱いてるぜ」

 「あれはなんなの」

 「デブキチ親分さま、あれはなんでございますかと、ていねいにいうのだ。そ

 うしないと教えてやらねえぞ」

  まあ、いばっちゃってる。・・・・・でも知りたいなあ。

 「はいはい言いますよ。言えばいいのでしょう。デブキチ親分さま、あれはな

 んでございますか。どうぞ教えて下さい」

 「えっへん、あれはジュゴンというのだ」

 「へーえ、あれがジュゴンか。子供に乳を飲ませちゃったりして、人魚と見ま

 ちがえそうだね」

  ジュゴンさんさよならって別れをつげて先を急いだんだ。

  今日もまた真っ赤な夕焼け空になりつつあるんだ。

  いま宮古島の沖を通りすぎたところなんだ。

  すいすい、すいすいと快調にイッシー号は進んでいるんだけど、なにか不気

 味な予感がするんだ。

 「イッシー君、戦闘準備だ。いつの間にか海のギャングどもにとり囲まれてし

 まったぞ。いるいる、二十ぴきぐらいはいる」

  顔つきの悪いホオジロザメが、周りをぐるぐる回っているんだ。

 「人食いザメに狙われちゃった。怖い、怖い」

  ほとんどのやつが十二メートルぐらいで、まるまると太っているんだ。目玉

 をぎょろつかせちゃって、すごいのなんのってありゃしない。そのうちの一ぴ

 きが頭を激しくふりながら、ぼくに襲いかかってくる。

 「どうしよう、どうしよう」

  別のやつも襲いかかってくる。

 「イッシー君、こんな時は怖がってばかりいたんじゃだめだぜ。その太くて長

 い首とシッポで戦うんだ。おれが誘導するから指示どうり動け。シッポエンジ

 ン停止」

 「わかりました。シッポエンジン停止」

 「左下からくるやつをシッポでぶっとばせ」

  襲ってきたサメをばしっ、ぼーんって、ぼくはシッポでぶっとばしちゃった。

 「やったやった、やっつけたぞ」

  ぶっとばされたサメはくるくるっ、しーんと、海の底へ沈んでいった。

 「こんどは右前から襲ってくるぞ。首だ、首でぶて」

  どしーんばたーんって、こんどのやつは首でぶったたいたんだけど、そうし

 て戦っている間にサメの数がだんだん増えてきたんだ。

 「デブキチ親分、ぼくだけじゃとても勝てないよ」

  何匹もなんびきも、あらゆる方向から、しかもいっせいに襲ってくるサメど

 もを首とシッポで、ばった、ばったとぶっとばしながら、ぼくはしゃべってい

 るんだ。

 「よしわかったイッシー君。こうなりゃ最後の手段だ。おれさまが八百ボルト

 の電撃殺法をおみまいしてやるぜ。準備が整うまでもう少しがんばってくれ」

 「大変なんだから、はやくしてくださいよ」

 「準備完了だぜ。まず前方から襲ってくるやつらをぶっとばしてやるぞ」

  ぼくの前足に寝そべっていたデブキチ親分は、逆立ちするかのように腰を浮

 かして狙いをつけているんだ。

 「電撃砲発射」

  ビリビリバリバリードギャンドギャン、ドンパタピー。

  前方から襲ってきた十数ひきのサメどもは一撃を受けて、一瞬のうちに白い

 腹を見せて、ひっくりかえってしまったんだ。

 「なんとも電撃砲の威力はすごい、すごい」

  ぼくちゃんまで少しシビレちゃった。

 「よし、次は後方から襲ってくるサメどもだ」

  そうどなったデブキチ親分は、ぼくの後足に移動したんだ。

 「第二次電撃砲発射」

  ビリバリビリバリ・・・・・・・・・ギャフンギャフン。

 「またまた全滅、威力満点」

  まだ上下左右にうじゃうじゃサメがいたんだけど、恐れをなして逃げていっ

 ちゃった。

 「デブキチ親分のおかげで助かっちゃった。電撃砲って、すごい破壊力なんだ

 ね。なんと秘めたる力」

 「おっほん、ほんとうに強いものは滅多にその力を使わないものなんだぜ。ど

 うだ、わかったかねイッシー君。えっへん、えっへん」

 「あんまり威張られるのって好きじゃないんだけど、今からは大いに威張らせ

 てあげますよーっと」

 「今の戦いでエネルギーを使ったもんだから腹がへっちゃったぜ。西表島へ急

 ぐぞ。イッシー号、エンジン起動。全速前進」

 「了解」

  



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著者 さこ ゆういち