マイ ワイフ(マイワイフ?3)
どたばた喜劇だった一日も終わり、今日はゆっくり休もうとガウリイが宿屋の部屋の扉を開けると…。
そこには明らかに宿屋の部屋とは異なる空間があった。
「………へっ?」
木造だったはずの宿屋は、部屋全体が石造りになっている。むしろ洞窟か何かのように。
明らかに街中に建っていた宿屋に存在するはずの無い部屋になっていた。
(……、ってか、この部屋、見覚えがあるんだけど…)
壁の岩の感じといい、床に敷かれている濃緑の絨毯といい、吊り下げられている質素なランプといい。
そして極めつけは部屋の隅に置かれた木造の古びたベッド。
どうも昨日一晩を過ごしたベッドのような気がするのは、気のせいだろうか。
(あれって、昨日俺が放り投げられたベッドだよな。あの時は近づいてきたあいつに思いっきり頭突きを入れて撃沈させたけど…)
ガウリイが困惑したまま後ろを振り返ると、そこにあるのは平凡な宿屋の廊下。
部屋に視線を戻せば、昨日のはた迷惑な景色を思い出させる景色。
「????…。
…………やばっ!!」
トンッ。
身の危険を感じたガウリイが部屋から離れようと身を翻す寸前、後ろに現れた人影がガウリイの肩を押した。
思わず部屋に入ってしまったガウリイが振り返ると、そこに居たのは暫くは顔を合わさなくてすむと思っていた人物だった。
「…部屋の入り口に突っ立っていたら、ほかの客の邪魔だろう?」
後ろ手に戸を閉めながらヴァルガーヴが言う。
それに対してガウリイは口をパクパクと開閉させるのみで。
「どうした?」
「えっ?、えっ?、なんで……?」
何故こんなことをしているのか、何故ここに居るのか、この状況はどういうことなのか、尋ねたいことはたくさんあったが、出てきたのはアバウトな質問だけで、でも返されたのは単純明快な答えだった。
「お前は俺の嫁なんだから、寝るときは同じ部屋に決まっているだろう」
「え゛っ……………」
たらり、と冷や汗が背中を伝わるのを感じる。
「もちろん同じベッドで構わないよな。これは2人で寝るには狭いがそのうちダブルでも買うから」
そう言いながら、ヴァルガーヴはガウリイの腕を取りベッドに歩み寄る。
「……!!嫌だ〜!!」
当然ガウリイは抵抗し、連れて行かれてなるものかと踏ん張る。
その様子にヴァルガーヴが微かに苦笑を浮かべる。そしてガウリイを引っ張っていた力を緩めた。
そうすると自然と、後ろのほうに力を入れていたガウリイが自らヴァルガーヴを自分の下に引き寄せることになる。
そのままヴァルガーヴの腕の中に抱き込まれるガウリイ。
「だ、だって、薬飲んだだろう、お前…」
ワタワタともがくガウリイの横で、ヴァルガーヴがクスリと笑いを漏らす。
「だからもう嫁とかなんとかの話は…」
「あの薬には感謝している。おかげで正気に戻れたからな。さすがに昨日や今朝の事は記憶が曖昧だし、さすがに恥ずかしいものがあるからな」
その言葉に表情を明るくしてヴァルガーヴを見るガウリイ。
ガウリイが見つめるヴァルガーヴは、少し照れた様な表情をしていて、それを正面から見つめてしまったガウリイもつられて照れてしまい視線を逸らす。
「まぁ、そうだよな…」
視線を逸らしたままポツリと呟くガウリイに、ヴァルガーヴは苦笑を浮かべてその頬に手を伸ばす。
それに気づいたガウリイが視線を戻すと、そこには自分をじっと見つめる金色の瞳があって、まるで絡めとられたかのように視線を逸らすことができない。そして頬に添えられる手に身を竦ませる。
「それに、お前をモノにするなんて、記憶が曖昧な時にしたら勿体無かっただろう?」
「えっ…?」
いつの間にか両方の頬に手が添えられていて、顔を逸らすことができない。
ヴァルガーヴはそのガウリイにいっそう顔を近づけ囁く。
「今も俺はお前を好きなんだぞ」
チュッ。
軽く触れるだけのキス。
「……、わぁーーーっ/////」
一瞬の間をおいて、一気に朱に染まるガウリイの顔。その直後、叫び声とともにヴァルガーヴから体を引き剥がした。
しかし動揺しているガウリイは、再び簡単にヴァルガーヴの腕の中に閉じ込められてしまう。
「そ、そんなこと、言われても……」
視線をあちらこちらと彷徨わせながら呟くガウリイを、ヴァルガーヴはよりいっそう強く抱きしめた。
そしてその耳に息が吹きかかるほどの距離で囁く。
「観念しろよ、ガウリイ」
「っ……、出来るかーーーっ!!」
ガウリイの受難(?)はまだまだ続く。
マイ ワイフ?・マイ ワイフ 終わり
マイワイフ?2
この前が相当どたばたで、ヴァルガーヴにぜんぜんいい格好させてあげてないな、と思いここは男前度を上げて書いてみました。
多分、この後ガウリイはヴァルガーヴの押しに負けちゃうと思われます!!
ssへ