トピックス(健康関連)
舌ストレスは、年齢に関係なく全身に影響する(2019.12.08.作成)
口腔内には様々なストレスがありますが、ここでは「舌ストレス」についてだけ
触れます(詳細は参考書籍やこちらもご覧ください)。
1.【まずは、あなたの舌ストレスをチェック!】
以下のセルフチェックをしてみて下さい。3つ以上当てはまるものがあれば、あなたの
の舌は、不定愁訴を起こしかねないレベルのストレスを受けている可能性があります。
検査をしても何の異常も見つからない場合、そして以下のチェック項目のうち3つ以上
当てはまるものがある場合には、「舌ストレス症候群」を疑ってみてください。
□ 舌に歯の跡がついている
□ 舌がよく口内炎になる
□ 咬んだ時のカチカチの音が小さいか、二十音である
□ 口が開きにくい
□ 口を開けるとアゴが痛い
□ 口を開ける時にアゴで変な音がする
□ 活舌が悪い
□ 歯ぎしり、食いしばりがある
□ いつも、肩や首など、アゴの周りの筋肉が凝っている
□ 虫歯がある
□ 口の中にある歯の尖りが気になる
□ メタボ気味である
□ 歯科で詰めた被せ物が高いと感じている
2.【舌ストレス症候群の症状例】
鼻炎、難聴、めまい、歯ぎしり、食いしばり、活舌が悪い、声に伸びが出ない、言葉が
こもる、聞き取りにくいと言われる、特定の音が発生しにくい、母音の発生が悪い、
腰痛、手足に汗をかく、背中の痛み、手足のしびれ、口・頬の筋肉のこり、口が開きに
くい、顎の関節が痛い、首のコリ・痛み、肩こり、花粉症、睡眠不足、冷え性、体がだ
るい、むくむ、高い音が出にくい、舌が常に緊張している、話すと疲れやすい、息がも
れる、早口になるとうまく言えない
3.【なぜ舌は、ストレスを受けるようになってしまったのか?】
現代人は、著しく咀嚼回数が減った為にアゴが小さくなり、歯のアーチの形や大きさも
ずいぶん狭く、小さくなっています。同時に、歯が摩耗しなくなり、生えてきた時のま
ま鋭利に尖っている歯が非常に増えています。
これは、歯のアーチの中で暮らしている「舌」にとっては大変なストレスです。特に
1960年代以降生まれの方は、多かれ少なかれ、この「舌ストレス」を抱えています。
繰り返しになりますが、大事なことなので、その要因を箇条書きに羅列します。
□柔らかい食べ物だらけになり咀嚼回数が激減
➡噛まないと、アゴが成長しきれず、舌の住む部屋が狭くなる
➡噛まないと、歯は直立していられなくなり、舌側に倒れ込んで更に狭くなる
➡噛む回数が少ないと歯がほとんどすり減らずシャープな形のまま。言うなれば、
舌に常にナイフを突きつけているような状態
□育児法の誤り
□入れ歯の構造上の問題(辺縁と呼ばれる端っこの部分がどうしても大きくなる)
□栄養状態が急速によくなったため(メタボな人は舌も肥大化する)
□水分の摂り過ぎによる舌の肥大化
4.【セルフケア】
舌が動き回れる空間が少なくても自由に動ける機能を保持しておくこと、且つ舌先が
上顎についている正しいポジションにあれば、ある程度の舌ストレスを減らせます
(奥歯は、入れ歯などの問題で物理的に無理な場合があります)。
しかし、舌や舌骨の機能が低下してくると、安心して動き回れなくなり、舌ストレス
は増大します。同時に、食べ物や飲み物、ツバと一緒に口の中の虫歯菌や歯周病菌が
気管に入り、肺に炎症を起こしてしまうこともあります(睡眠無呼吸症候群のリスク
も高まります)。
そうならないためには、
◎「ベロトレ(改良版あいうべ体操)」
◎「頭部挙上訓練(シャキア訓練)」[1][2]
で口の周りの筋肉や、舌筋、舌骨上筋群などの筋肉を鍛えておくことが大切です。
また、
◎足指のストレッチ「ゆびのば体操」(解説動画・あいうべ体操との関係性)
も合せて行うとより効果的です(◎は、全年齢層にとって、健康に過ごす為の基本とな
る体操だと思います)。
*ベロトレが効く理由
「あ」➡口の周囲の多くの筋肉に加えて、舌の根元の舌骨筋群が鍛えられます。舌の根
元まで強くすることでアトピーや鼻炎、花粉症などアレルギー疾患の改善に効
果があります。
「い」➡笑筋や口角挙筋など口周りの筋肉から首の筋肉までを強化。のどを強くするこ
とで、風邪やインフルエンザ、気管支喘息等の呼吸器系疾患や誤嚥予防になり
ます。
「う」➡口輪筋が鍛えられ、うつ病対策になります。疲労感も軽減されます。
「べ」➡舌を思いっきり出すことで舌そのもの(舌筋)が鍛えられ、直腸反射によって
便秘改善などにつながり、お腹の病気を遠ざけられます。
「い」「う」「べ」の口は、唾液や腸液の分泌を促すので、便秘にもいいです。
*「ベロトレ」実施時、こんなときはどうする?
◎口を開けるとアゴが痛い、舌が動かしづらい
この場合、「いー」「うー」だけでOK。アゴの関節に負担がかかりません。
一日3分を目安に行ってください。慣れてきて、口が開くようになったら本来の「ベ
ロトレ」を行いましょう。
◎鼻が詰まっていて苦しい
「ベロトレ」前のツボ押しがお勧めです。
左右の目頭と鼻のつけ根の間にある「晴明」と、左右の小鼻のすぐ横のくぼみにある
「迎香」を人差指の腹で押えると、鼻が通るようになります。それぞれ両手の人差指
の腹で、20秒ギューッと押すだけです。
*ゆびのば体操について
既に内反小指の方は必須の体操だと思いますが、ゆびのば体操による改善例は、以下
通りです。
猫背、反り腰、O脚、X脚、膝痛、腰痛、脚のしびれ、むくみ、下肢静脈瘤、お肌、
冷え、血圧、肩こり、頭痛、顎関節症、つまずき・転倒予防など。
特に便秘に効く方が多いようです。
ところで、女性の場合、むくみに効果的と言われる加圧タイプのストッキングやタイツ
を利用される方も多いようですが、足指の動きを抑制してしまうのでおすすめできませ
ん。加圧タイプのものを穿くなら、足指を覆わないレギンスタイプを選ぶようにしまし
ょう。
なお、さらに効果を上げるには、ゆびのば体操後、その状態を体に記憶させるためにち
ょっと歩くことです。これを繰り返すことで、「足指をのばす」ことが体に記憶され、
定着していきます。
詳細はこちらや参考書籍⑤をご覧ください。
《補足》舌や口の老化について
項目3で「特に1960年代以降生まれの方は、多かれ少なかれ、この舌ストレスを抱えて
います・・・」と書き、セルフケアの必要性を説きましたが、老化まで考慮すると、
上記セルフケアは全世代生涯に亘って必要不可欠なものと言えます。
それを補強する情報を以下に少し抜粋しておきます。
◆舌の老化が、全身の老化を招いていく!
舌の筋力不足は、大きく以下2つの弊害の原因となります。
①全身の筋力低下につながる
舌をはじめ口の機能が低下すると、嚥下能力が低下します。食べにくくなるのでだ
んだんと食が細くなり、消化吸収の力も低下して全身に影響し、体力も筋力も落ち
ていきます。舌の力が弱い人は、握力や脚力も弱っているというデータも発表され
ています。
②口呼吸になって病気を招く
舌はリンゴほどの重さがあり、舌の位置が下がると重みで口が開いてきます。する
と口で呼吸するようになり、細菌の侵入、冷えや乾燥によって、万病を呼び込んで
しまうのです。
さらに、口呼吸は、取り込む酸素の量も少なくなります。イランの研究では、口呼
吸患者の65%の人は低酸素状態にあるというデータも報告されています。
◆舌を鍛えることで改善する症状例
①死亡原因となる誤嚥性肺炎を防げる
②アトピーや喘息、花粉症もすっきり!
③風邪やインフルエンザを予防
④難治性の腸炎も改善
鼻呼吸に戻すことで腸内環境が改善することによります。
⑤関節痛の改善
骨や関節に痛みがある、体がこわばる、こんな症状と同時に、いびきをかき始めた
り、歯茎に腫れや出血があったら要注意。口から病気を招いている可能性がありま
す。
⑥認知症の原因物質「アミロイドβ」の排出を促す
脳のゴミ、アミロイドβは、睡眠中、脳内のリンパの流れによって洗い流されるこ
とが分かっています。ただし、口呼吸だと脳が冷やされずに睡眠が浅くなったり、
無呼吸状態で酸素の供給が低下するため、脳のクリーニングがスムーズに進みませ
ん。睡眠中は口を閉じることが必須条件です。
また、しっかり噛むことがアミロイドβの排出に関係することも明らかにされてい
ます。
「ベロトレ」で舌と顔の筋肉をしっかり使うと、脳内でもリンパや血液の流れが促
され、アミロイドβの除去に役立ちます。
また歯周病によって生まれる毒素が脳のゴミを増やし、認知症を悪化させるメカニ
ズムも判明しています。
認知症を防ぐためには、舌をしっかり鍛えて、オーラルケアを心がけることが不可
欠です。
⑦糖尿病の予防
歯茎から出た炎症関連の物質は、体の中で血糖値を下げるインスリンを出にくくし
ます。このため、糖尿病が発症、進行しやすくなるのです。
糖尿病になると口の中が乾燥し、唾液の糖分濃度が上昇、細菌に対する抵抗力も下
がりますが、これらの症状がまた歯周病を悪化させ、相乗効果で糖尿病も進行して
いくのです。
そもそも、口内環境を悪化させる大きな要因は、舌の筋力低下により、舌が落ちた
状態が定常化していること。
口が閉じていなければ、どんなにオーラルケアをしても、口から菌やウイルスがど
んどん入ってきて、歯周病を招くのです。
⑧脳梗塞や心筋梗塞の予防
血栓の予防には、しなやかな血管とスムーズな血流が必須条件です。
ここで思い出してほしい物質が「NO(一酸化窒素)」です。NOは血管の筋肉を
柔らかくして広げ、血流をスムーズにするので、血管内の詰まりを抑えます。
そのため、血流と血圧が整い、高血圧や脳出血も防いでくれます。このNOを生み
出すのが鼻呼吸です。
⑨自律神経を整えられる
鼻からゆっくり呼吸をすると、自然と深い呼吸となって、酸素を十分に取り込むこ
とができ、自律神経のバランスが整います。
⑩二重アゴやほうれい線が消え、血色のいいツヤ肌に!
舌が衰えると、顔の筋肉もどんどん衰えますから、顔全体がだらんと垂れ下がって
きます。
⑪天然の殺菌剤である唾液で、虫歯、口臭を予防できる
唾液が主に分泌されるのは、耳下腺と舌下腺と顎下腺の3ヶ所。ここをしっかり動
かすことができるのが「ベロトレ」です。
⑫美しい歯並びと姿勢をつくる!
舌は、筋力が衰えると前に垂れ下がってくるためアゴが細くなり、歯が圧迫されて
歯並びが悪くなります。すると鼻腔も狭くなって、呼吸の邪魔をします。
また、口が開いている人は猫背になりがちですが、これは口呼吸の場合に気道が狭
くなってしまうことから起こることで、首や肩こりを招きます。
舌が垂れ下がるだけで、アゴの変形や歯並びの悪化、体の歪み、痛みにもつながっ
ていくのです。
⑬深く眠れるようになる!
◆舌や口の衰えの兆候
◎食べこぼす
◎誤嚥する、むせる
◎舌や頬を噛む
◎口角が下がってきた、ほうれい線が濃くなってきた
◎ノド仏が下がってきた
◎舌苔の付着
◎ブクブクうがいをした時、出てくる食べかすが増えた
◎人と食事をした時、自分だけ食べるのが遅い
◎話が聞き取りづらいと言われるようになった
以上の症状は、舌をはじめ口腔機能が衰え始めているサインと言えるでしょう。
◆窒息事故は、舌の衰えが原因
窒息事故で毎年1万人近くの人が亡くなっていますが、その原因は次の3つです。
◎嚥下機能の低下
◎認知機能の低下
◎咀嚼機能の低下
窒息するということは、のどが詰まるということですから、嚥下機能だけの問題であ
るととらえられがちです。「お年寄りだから嚥下機能が落ちて、のどに詰まってしま
ったのだろう」ということになるわけです。
しかし、認知機能も、窒息事故の原因となるカギを握っています。
例えば、認知機能が低下すれば、丸飲みや詰込みが多くなります。認知症が進むと食
事のスピードがうまく調整できず、いわゆる早食いになってしまう人が少なくありま
せん。食べるという動作をうまくコントロールできないために窒息事故につながると
いうわけです。
そして窒息事故は、咀嚼機能の低下が最も大きな原因である、という研究結果が出て
います。よく噛めないために、食べ物を十分に噛み砕かず、そのまま適当にのどに送
ってしまうわけです。
以上をまとめると、窒息事故はのどで起こりますが、その原因は噛む過程にあったと
いうわけです。
舌と歯を使って食べ物をしっかりと噛み砕いていれば、そして舌の力がしっかりと働
いて、食べ物を食道へ送り込むことができていれば、防げる窒息事故はたくさんあっ
たはずです。
(参考サイト・書籍)
① 肩こりなどの体の不調は“舌ストレス”が原因だった
②「あなたの老いは舌から始まる」菊谷武著(2018年)
③「原因不明の体の不調は舌ストレスだった」安藤正之著(2019年)
④「免疫力を上げ自律神経を整える舌トレ」今井一彰著(2019年)
⑤「足指のばしで腰もヒザも肩・首も痛みが消えた!」今井一彰著(2019年)