デザートタイム 7
※ガウリイ女体化ネタです。苦手な方は読まないでね。
真っ暗になった劇場に流れるのは、華やかな楽器の音色。
一気に空間が日常から非日常へと切り替わる。
劇の内容は恋愛物だった。
主人公が幼少期ひと夏をすごした保養地で1人の少女と出会い幼い気持ちではあったが結婚の約束をする。そして成長した後、別の場所でその女性を見かけた主人公は幼い日の記憶を思い出し、早速交際を申し込み、2人の関係が始まるというもの。
ゼルガディスが意外だったのは、女性陣が夢中になっているのは分かるが、ガウリイがちゃんと見ている。
てっきり開始10分もすれば眠ってしまうだろうと思っていた。
『まさか思考パターンまで女になってないよな……』
不吉な予想がよぎるがそれを頭を振って振り払う。
休憩を挟んで3時間の演目は無事終わり、盛大な拍手と共に幕を閉じた。
鼻を啜る音や、涙を拭う姿が見受けられる中明かりが点る。
「「「良かった(ですね)〜」」」
ため息と共に立ち上がるリナの目が若干赤くなっていることを指摘する気にはならない。それぞれも同じ状況だから。
それでも恥ずかしさがあったのか、リナがニィっと笑った。
「なによゼルまで涙ぐんじゃって」
「な、お前の方がひどいだろう。大体ガウリイだって……」
急に話を振られたことに驚いたゼルガディスは顔を逸らし、さらに話を逸らそうとガウリイに話を振る。
自分の名前が呼ばれて、ガウリイが顔を上げる。
「…えっ……?何?」
そこにいたガウリイはまだ座り込み、目をごしごしと擦り、それでも止まらないらしい涙が瞳から溢れていた。
その状態のまま、立っている3人を見上げる。
感情が昂ぶったためにわずかに上気した頬と赤く染まった唇。そして潤んだ瞳。
「「「………っ」」」
つつっー、と視線を逸らす3人。首を傾げるガウリイ。
「…リナさん、ゼルガディスさんをからかっちゃダメですよ」
「…うん、ゴメン…」
「いや、俺も…」
「……?」
わけが分からない、といった態で見上げるガウリイをリナが引っ張り立たせる。
そしてその背中をアメリアが押す。
「ほらほら、もう出ますよ〜」
明るく声を掛けるアメリアにガウリイは戸惑いながらも頷いた。
劇場の待合室に入って窓から外を見ると、空が茜色に染まり始めていた。
「もうこんな時間ですね。まあ、3時間も劇を見てたんですから当然ですね」
「そうだな。どうするリナ?」
ゼルガディスの問いかけに、ガウリイの手を引っ張っていたリナはわずかに考えた後頷いた。
「いったん宿に戻ってから晩御飯にしましょ」
その言葉にゼルガディスが疑問を投げかける。
「わざわざ宿に戻るのか?」
「……分かってませんね、ゼルガディスさん」
「顔とか洗いたいのよ」
というリナの言葉に、ゼルガディスも納得する。
そう言われれば、自分はともかく他の面々は明らかに泣いた後が顔に残っていて、食事の前にそれを何とかした方が良いのは一目瞭然だった。
劇場にも洗面所はあるので、顔を軽く拭くぐらいは出来るだろうが、きちんと洗うには宿に戻った方がいいだろう。
宿に着き、リナとアメリア、ゼルガディスとガウリイ、という最初の部屋割りのまま部屋に戻った。
部屋に入るなり、ゼルガディスが口を開いた。
「また靴擦れでもしたのか、ガウリイ?」
それは劇場を出てから、ずっと俯いたままだったガウリイを心配しての一言だった。
ガウリイは首を振る。
確かに、足元に異常は無いようだったが、相変わらず顔は伏せたままだった。
暫く沈黙が流れた。その沈黙を破り、ノックの音が響き、リナ達が顔を覗かせる。
「あたし達、ちょっと美味しいお店の聞き込みに行って来るわ!!」
「ゼルガディスさん、ガウリイさんを襲っちゃダメですよ!!」
「・・・!?誰が襲うか!!」
アハハ〜ッ、という笑いと共に2人は出て行った。
思わずゼルガディスの口元にも笑みが出る。
そのまま、さてガウリイも元気になったかと振り返れば、さっきと同じままのガウリイがいて。
思わずため息がこぼれた。
そしてベッドに腰掛けているガウリイに歩み寄ると、その頭を撫でた。
「どうかしたのか?」
「……、さっきの劇でさ…」
ぽそぽそとガウリイが言葉を発する。
「うん?」
「…あんなに泣いちゃって……、恥ずかしくなって……」
「……今更か!!」
思わずつっこっみを入れたゼルガディスだったが、確かにガウリイの耳は赤く染まり、確かに羞恥を感じていることは明白だった。
実際今のガウリイがこの姿だから泣いていても違和感は無かったが、男の姿で泣いていたら多分驚いていただろうとゼルガディスも思う。
再びのため息と共に、よく絞った濡れタオルを差し出すと、ガウリイは受け取って勢いよく顔を擦る。
「…誰もあんたが泣いてたことなんて気にしてないから、別にいいんじゃないか?」
「そう、かな……」
「ああ……、皆似たり寄ったりな感じだったしな」
その言葉に、ガウリイは照れたように笑いながら顔を上げた。
「ちょっとあの時は回りを見る余裕が無くて、皆がどうだったか覚えてなくて」
もしかして、ゼルも泣いた?と続けられ、泣いてない、とゼルガディスは答えた。
その言葉に、ガウリイはえへへ〜、と笑う。
「やっぱりちょっと恥ずかしいかも」
そのはにかんだ顔に、さっき見た涙を溢すガウリイの顔が重なり、ゼルガディスは赤面した。
「ゼル?」
不思議そうに自分を呼ぶガウリイの声に、このまま続けてはいけないとゼルガディスは思うのだが、意思の通りに体は動かない物らしい。
普段近づくことの無い距離まで近づいたゼルガディスの顔に、ガウリイは思わず目を閉じる。
チュ。
「!?」
驚いてガウリイが目を開ければ、まだすぐそこに顔があって、自分を見つめる瞳と視線がぶつかり、すぐに目を閉じた。
「…んっ、……ぁ…」
再び触れてきた唇は今度はすぐには離れず、唇を舐められつい請われるままにガウリイは唇を開いた。
「……ふぁ」
開放されたガウリイは、ベッドに倒れこんだ。
「……なんで、ゼル」
「…恥ずかしくなくなったか」
「えっ?」
「驚けば恥ずかしいのが紛れるかと思ったんだが」
そう言われても、ゼルガディスが赤面していては説得力は無い。
ガウリイは寝返りを打ち、ゼルガディスに背を向ける。
「泣いた分は紛れたかも……」
その分今のが何倍も恥ずかしいんだけど、とは胸のうちだけで続ける。
「…そうか……」
その後あからさまに様子のおかしい2人が、戻ってきたリナ達に何かあったのではと疑われるのは当然のことだった。
ちなみに、ガウリイは翌日無事に男に戻ったが、ゼルガディスとガウリイの間には暫くぎこちない空気が流れることになる。
おわり
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