3日目
1日経つごとに、ガウリイはヴァルガーヴにどう対処すれば良いか分かってきて、初日に比べればずいぶんと楽になった。
ただそれはヴァルガーヴのこの行動に対して自分が慣れてしまったのでは、という不安もある。
そして改めて思う。
「ロクでもないことに巻き込まれちまったなぁ・・・」
「?」
ガウリイの小さな呟きに、横を歩いていたヴァルガーヴは首を傾げた。
そのヴァルガーヴの手はしっかりとガウリイの服の裾を掴んでいる。
理由は単純。今日街に買い物に行くガウリイに着いて行ったら何度もはぐれてしまったからである。
ガウリイもわざと見失いやすいように行動するので、はぐれると次に見つけるのに散々苦労する羽目になる。
まあ、気配はしっかりと覚えているので見つからないと言うことは無いのだが。
3回目はぐれた後、もうはぐれないようにしようと手を繋ごうとガウリイに提案したが拒否された。
なので今は了承なしにガウリイの服の裾を掴んでいる。
ガウリイもその点については妥協したようで、ヴァルガーヴをくっつけたまま買い物を続けている。
ガウリイが足を止めたのは衣料品店。
今までの服がずいぶんくたびれてきたようなので、新しい物を調達しようと思っていた。
手ごろな値段で動きやすい服は無いかと店内を物色する。
ヴァルガーヴはものめずらしそうに店内を眺める。そして興味を引く物があったのかガウリイの服を引っ張る。
「なぁ、あれ」
ヴァルガーヴが指差したのは婦人服のコーナー。
「お前に似合うんじゃないか?」
「・・・はぁ!?」
指差した先にあるのは黒い膝丈ぐらいのワンピース。
ふわりと広がりレースのあしらわれたワンピースは、リナやアメリアが着たらきっと似合うんだろうな、というような中々デザインの良い物ではある。
「お前は俺に何をさせる気だ・・・」
あきれを存分に声に含ませヴァルガーヴに問いかける。
すると返ってきたのは真っ正直な答えで。
「えっ、あれはガウリイに似合うだろう?」
「・・・あれは女物だろうが!!」
「え〜っ、でもきっと似合うって!!」
(なにコイツ。天然?天然なのか?どんだけだよ!!)
ガウリイの脳内では、いや天然というより良識が無いのか、だからこんなことをやらかしているのか、誰か良識を教えろよ、などとグルグルと思考が巡った。
動きの止まったガウリイに、これ幸いと言わんばかりにヴァルガーヴはワンピースの方にガウリイを引っ張る。
店員のクスクス笑う声がやけに大きく聞こえる。その声に我に返ったガウリイはヴァルガーヴの腕を掴み店を飛び出た。
後ろのほうから「仲の良い兄弟ね〜」などと聞こえてきてそれから逃れるように、ヴァルガーヴを引きずったままずんずんと大股で歩いていく。
ヴァルガーヴが腕を掴まれて「ガウリイったら積極的〜」などとニマニマしているのをガウリイが知るのは数分後のことである。
〜 おまけ 〜
リナ「で、買い物できなかったんだ」
ガウリイ「・・・ああ(あ〜もう、あいつのせいで!!)」
リナ「でもさ」
ガウリイ「?」
リナ「客観的に見たら、2人で買い物してどの服が似合うとか言い合うのって『デート』よね」
ガウリイ「!?」
3日目end 2010.5.2掲載
4日目
夕日が沈む時間、ガウリイは宿の大浴場に来ていた。
ここしばらく浴場の無いシャワーのみ宿に泊まっていたので、久々の湯船に上機嫌で足を伸ばす。
まだ早い時間なので人も疎らだ。それもうれしい。
「あいつはついて来なかったんだな」
洗い場にいるゼルガディスから声が掛かる。
「ああ、部屋に入って着替えを用意したりしていたら、外に出たときにはいなかったんだ」
最初に言われた「部屋には入らない」、を忠実に守っているあたり中々好感度を上げている。
その分を別のところで下げてしまっているが。
体を洗い終わったゼルガディスが湯船に入ろうとした時、勢いよく浴場の扉が開いた。
「ガウリイ!!置いて行くなんてズルイじゃないか!!」
浴場を一通り見渡して湯船の中のガウリイを見つけたヴァルガーヴは、ずんずんとガウリイの元にやって来た。
周囲の他の客たちが唖然と見つめる。
その様子にガウリイはため息を着く。
「別にお前と風呂に行く約束したわけじゃないからいいじゃないか。大体いつの間にかいなくなってたのはお前のほうだろう。俺は普通に部屋からここに来たぞ」
その言葉に、うっ、と動きを止めるヴァルガーヴ。
そして今度ははっきりと相手に伝わるようにガウリイはため息を着いてヴァルガーヴの足元を指差す。
「それ以前に風呂場に服はともかく靴履いたまま入るなよ。あとここは宿泊者用の浴場なんだから入りたいなら宿に部屋取ってこい!!」
「「・・・・」」
ヴァルガーヴはおとなしく浴場から出て行き、ばたばたという足音がするあたり急いで部屋を取りに行ったのだろう。
ゼルガディスは苦笑を浮かべ湯船に入るとガウリイの横に腰を下ろした。そして労いを込めてガウリイの肩を叩く。
「なんだか手間の掛かる弟が出来たみたいな感じだな・・・」
「それならそれでいいような気もするが・・・」
でもあれだけくっついて来られると疲れるんだよな、とこぼす。
ゼルガディスは乾いた笑い声をあげ、こちらもため息を1つ。
しばらく静かな時間が続いたが、すぐに脱衣所のほうから騒がしい音が聞こえ再び勢い良く扉が開く。
もちろんそこに立っていたのはヴァルガーヴで、嬉々として寄って来ようとするのを手で差し止め、まず体を洗って来い、と洗い場を指差す。
素直に洗い場で石鹸を泡立てている姿に、ついゼルガディスの口から笑いが漏れる。
「そう言えばあいつは旦那を口説こうとしてここにいるんだよな。でも実際は旦那に躾けられている、って感じだな」
ガウリイは否定できずにただ頷いた。
そうこうしているうちに体を洗い終わったヴァルガーヴが湯船のほうに向き直る。
苦笑を浮かべながらガウリイが手招きする。
「入ってもいいぞ」
ピシリ、と固まって動かないヴァルガーヴ。
「「・・・?」」
あまりに動かないヴァルガーヴに、2人がそろそろもう1回声を掛けたほうがいいのか、と思ったころ唐突にヴァルガーヴが叫んだ。
「・・・は、はだか〜!?」
「・・・!?」
「・・・当たり前だろ!!今までなに見てたんだよ!!」
思わずガウリイが怒鳴る。
瞬時に突込みが出来るあたり、ここ数日の経験がガウリイに蓄積された結果なのだろうか。
背を向けしゃがみこむヴァルガーヴがポソリと呟く。
「・・・跡、付けたい、寧ろ・・・」
小さな声であったがそれは二人の耳にも届いた。
「いきなり何を言い出すんだ、お前は!!」
「あー、もう!!今までのが台無しじゃないか!!」
勢い良く湯船から出たガウリイが、ヴァルガーヴの頭を容赦無く殴る。そしてそのまま脱衣所へと出て行った。
しばらく床に突っ伏しているヴァルガーヴを眺めていたゼルガディスだったが、1つ大きくため息を着くと自分も浴室を出て行く。
目を覚ましたヴァルガーヴはガウリイに「風呂に入って来るな」宣言をされることとなる。
4日目end 2010.5.3掲載
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