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ブレインジム(能力アップ、脳梗塞、自閉症など)(2016.09.30.)(2017.01.31.更新)

  

(「発達障害」情報は《補足①》をご覧ください)

  

1.【はじめに】   
2.【ブレインジムが脳を活性化する原理】   
3.【ブレインジムのエクササイズ】   
4.【インターネット上の情報】   
5.【ブレインジムの参考書籍】   

  

1.【はじめに】   
ブレインジムは、1970年頃のアメリカで始まったそうですが、日本でその存在が知られるようになったのはほんの10年ほど前のこと。学習障害の子供達をサポートする教育活動の中で発見された効果的な体操やセルフマッサージのやり方が、体系づけられています(26種類)。一度覚えれば、準備のための時間も、そこで使う道具も必要ありません。子供達とシンプルな体操を繰り返すだけで、学習に向けて心と体を集中させることができるという手軽さが評価され、現在、世界80カ国で、教育に取り入れられています(多くの人は、心身ともにバランスが崩れ、思考と感情の間に隔たりができています。ブレインジムは自分にとって自然なバランスを再発見させ、離れてしまった思考と感情をつなげてくれます。そのことによって、「必死にがんばる」自分を手放すことができます。学習遅延者をサポートする為に開発されましたが、今日では、運動選手から子供達、日常生活や人間関係の改善を目指す人、現在の職業や仕事に活かしたい人に至るまで、誰にとっても活用できる効果的な学習方法へと進化しています)。   

  

2.【ブレインジムが脳を活性化する原理】   
脳は、私たちの「体の動きのメカニズム」に密接なつながりを持ち、成長していきます(極論すれば、逆に体を動かさなければ、脳は無用の長物となるでしょう)。しかし、もし私たちがサバイバル状態(ストレス、不安、欲求不満)に入れば、体は条件反射的になり、生き残る為だけの反応しか起こらなくなります。このような状態になると、脳の活動が停止し、全体を見て理解したり、計画を練ったり、共感や博愛を感じたりなどができなくなります。   
ブレインジムのシンプルなエクササイズがこのような状況においてどんな働きをするかというと、体を動かすことにより、脳と体が密接につながり、脳全体の機能を再び活性化させるのです。左右の動きだけではなく、体の上下や前後の動きを使って、三次元で脳と体と心のバランスを統合させることを目標としています。なお、脳と体と心の動きがどのように関連しているかは、以下のように大雑把に捉えています。   
〇左右の動きは、右脳と左脳の連携   
(コミュニケーションを取る能力、道具を使う能力に関わる)   
〇上下の動きは、大脳辺縁系や脳幹と大脳皮質との連携   
(思考をまとめる能力に関わる)   
〇前後の動きは、脳幹と前頭前野の連絡   
(理解力と意味付けに関わる)   

     

以下一つ一つの動き(次元)に対して、さらに説明を加えていきます。

     

〇左右統合次元(ラテラリティ)   
ストレス下では、目、耳、手、脚(足)の優位な側だけを酷使し、結果として効率は悪くなり、心も体も行き詰まります。体の左側と右側がバラバラに動くのではなく協調して働くことは、画像と言語の統合につながり、コミュニケーション能力とも関わると考えられています(考えたり、読んだり、話したり、聞いたり、書いたりといった、とにかくあらゆるコミュニケーションスキルや技能を、どれくらい使いこなしているか知ることが、左右統合次元につながることができているかどうかを見極めるヒントになります)。   
なお、個々人の優位性のパターン(利き脳、効き目、聞き耳、利き手、利き足)を知ることは、教職にあるものや親にとって役立ちます。なぜなら、個人の学習スタイルについて重要な情報を得ることができるからです。これにより、素質に反するのではなく、素質に合う学習環境を作り出すことができるのです。ちなみに、脳の優位性パターンは人によって異なり、以下の3パターンに分けられます。   

  

・ユニフォームパターン   
(例えば、左脳優位で、右目、右耳、右手、右足が優位)・・・特に問題なし   

  

・混合パターン   
(優位の目、耳、手、足が同じ側にない)・・・学習障害を持つ人の50%以上   
が混合パターン。左目が優位   
で、右手が利き手の場合、こ   
の問題は特に深刻なものとな   
ります。   

  

・ワンサイドパターン   
(例えば、脳含めてすべてが右側優位)・・・このパターンの人がストレス状   
態にあると、途方に暮れて、に   
っちもさっちもいかなくなり、   
考えながら、同時に手、目、   
耳、足にアクセスすることがで   
きなくなります。   

  

左右統合におすすめのエクササイズは、例えば、クロスクロール、DLR。   
クロスクロールは、この左右統合に、おそらく理想的な体の動きでしょう。経験や知識をもとに、あれこれと頭を働かせ(思考)、そして実際にその頭の中のことを実行すること(行動)に役立つもので、この思考と行動は運動皮質で学習され、機能します。DLRは、身体の左右両側を協調させるための5つのステップからなります(クロスクロールと片側だけを使う片側クロールという動きを行います)。身体の中央領域にアクセスして視覚や姿勢に働きかけるバランス調整法です。   
*対応するエクササイズ群は、「ミッドライン・ムーブメント」読む、書く、聴く   
エレファント、Xを思い浮かべる、ネック・ロール、 ダブルドゥードゥル、   
アルファベット・エイト、ベリー・ブリージング、レイジ―エイト、   
クロス・クロール・シット・アップ、エナジャイザー、ロッカー、   
クロス・クロールの11種類   

     

〇上下統合次元(センタリング)  
上下統合次元を統合するということは、感情的知性の源となり、また、喜び、情熱、遊び心、社会的な心の触れ合い、思い出、人とのつながりの基礎となり、そして自我や自己感覚そして個性が形成されるという意味があります。  
上下統合次元が、前後統合次元や左右統合次元と共にバランスが取れていれば、今この瞬間に自分が存在していて、自分は感情豊かに生きていて、自分としっかりとつながり、効果的な行動を起こすための段取りができていると感じることができるのです。  
上下統合におすすめのエクササイズは、フックアップやポジティブポイント。このエクササイズは、私たち自身を再びまとめ上げ、私たちが感情的知性を取り戻すサポートをしてくれるのです。そうすれば、もっと効果的にストレスをやりくりすることができ、それによって、大脳半球を動かし続けることができるのです。   
*対応するエクササイズ群は、   
「エナジー・エクササイズ」計画する、まとめる、調整する   
水、エナジー・ヨーン、シンキング・キャップ、スペース・ボタン、   
アース・ボタン、ブレイン・ボタン、バランスボタンの7種類   
「ディープニング・アティテュード」遊ぶ、働く、協力する   
ポジティブ・ポイント、フックアップ(パート1、パート2)の2種類   

     

〇前後統合次元(フォーカス)   
この次元は、私たちが注意力を向ける能力に働きかけます。前後統合次元は、恐怖に妨げられることなく私たちの目標の展望が存在する前頭前野と、脳幹との相互関係にかかっています(脳幹には、最も原始的な生き残り本能があり、自我や自己感覚にとって脅威となるような危険を冒すのを避けるために、体を固めさせたり、隠したり、身を引かせたりします)。   
前後統合にお薦めのエクササイズは、フットフレックス。このエクササイズをすると、私たちを押し止めている腱の反射を解くことができ、もっと自分を理解して、受け取り、表現する自由を得ることができるようになるのです。   
*対応するエクササイズ群は、   
「レングスニング・アクティビティ」集中を保つ、理解する、参加する   
アウル、アーム・アクティベーション、グラビティ・グライダー、   
フット・フレックス、カーフ・ポンプ、グラウンダーの6種類   

     

以上をトラウマティックストレスを低減するための例で説明します。   
トラウマ体験は、再現される度に、過去のショックや恐怖のストーリーにくさびが打ち込まれていきます。危険がまだそこにあると体が信じる限り、心と体は壊れたレコードのように負のサイクルを繰り返します。しかし、体が変化して安全だと感じられるようになれば、心の状態も自然に変化します。   
解剖学的にみると、トラウマの影響を受けて滞っている脳幹や大脳辺縁系は、例えば正中線を越える統合的な動きをゆっくり行うと安全だと感じられるようになり(左右)、大脳皮質との連携回路が改善され(上下)、そして脳幹による反射が前頭前野のコントロール下に置かれ(前後)、抑制された呼吸を開放し、体温を高め、動悸が鎮まる好循環が生まれます。そのことによって、恐怖感が低減される結果、非言語的記憶や言語的記憶に置き換えることができるようになり、トラウマ記憶を処理するネットワークが始動し始めると想定されています。   
こうした視点に立つと、トラウマ体験者が、より安定するためには、左右の動きだけではなく、上下や前後の動きも必要であると思われます。   

  

尚、この統合に不可欠な要素となっているのが「意図」(事項参照)。この意図が、全要素をまとめる働きをします。目標に向けて自分の位置をはっきりと決めれば、自然と体の中で意図をはっきりと表現する動きが生まれます。意図は前頭前野で生まれ、脳の後ろと前をつなぎ、自分がどこへ向かいたいのかをはっきりさせる助けとなります。   

     

3.【ブレインジムのエクササイズ】   
[1]まずは、目標を設定する   
ブレインジムは身体を動かせばよくなるという魔法の道具ではありません。   
まず、「目標」を設定し、どうありたいのか?を明確にしてから、体を動かします。例えば、息を吐きながらゆっくりとふくらはぎを伸ばしていく「カーフ・ポンプ」というエクササイズは、姿勢を良くしたいという願いにも、部屋を片付けるという思いに対しても行うことができます。エクササイズをするときに、「自分は今、何のために、どういった意図をもって、この動きをするのか?」ということが問われます。意図をもって動くことにより、自分が望む状況に対しての体の動かし方や身体的スキルを再教育しているのだといえます(明確な目的意識を持つことで、脳や体の中にある利用可能なものをすべて集め、引き出すことができるのです)。   
*否定的な表現を含む目標は、動きの効果を弱めることが知られています。ブレイ   
ンジムでは、必ずポジティブな言葉遣いをするように心がけます。   
意図をはっきりさせます。   
意図は、目的にとっては小さな妹のような存在であり、ブレインジムにとっては   
カギとなる要素です。私たちの人生における意図の役割を明確にするために、湖   
のたとえ話で説明したいと思います。   

     

広々として、クリスタルのように水が澄んでいて、きれいな魚、色とりどりの水生植物、光り輝く石がたくさんある湖を想像してください。この湖には、あなたが欲しいと思うものは全てあります。   

     

あなたが湖のほとりに来ると、そこには船頭が待っています。彼はあなたの全ての要望を叶えてくれます。この船頭は、なかなか面白い人物です。彼はこの湖についてあらゆることを知っています。そして湖であれば、あなたが望むならどこへでも案内してくれます。しかし彼には、一つだけ風変わりな癖があります。それははっきりと希望を伝えなければ、あなたをどこにも連れて行ってくれないし、何もくれないのです。   

     

彼はすばらしい湖の専門家なのですが、絶対に曖昧な要望を理解しようとしません。もしあなたが彼に「湖で取れる良いものをすべて下さい」と頼めば、彼はあなたをボートに乗せ、湖の真ん中まで連れてゆき、それから、船をあてもなくフラフラと漂わせるだけでしょう。彼はあなたに何も見せてくれないし、何もくれないでしょう(「魚が欲しい」と言っても、ほぼ同じことが起こるでしょう)。   

  

一方、もしあなたの要望がとてもはっきりした表現であれば、船頭は見事にあなたの役に立ってくれるでしょう。 もしあなたが、「私は夕食にニジマスを3匹食べたい」と言えば、彼はすぐにあなたをマスを釣るのに最適な場所に連れて行ってくれるでしょう。そして、ニジマスが水面下で、まるであなたを待っているかのようにスイスイ泳いでいるのを目にするでしょう。数分後には、あなたの夕食がバケツの中でパタパタしているでしょう。   

     

はっきりした表現であることに加えて、あなたはその要望にエネルギーと情熱を注ぐ必要があります。「ダイヤモンドが一握り欲しい」と軽い気持ちで言ったとすると、一体何が起こるでしょうか?もとからあなたは本当にダイヤモンドを欲しいと思っていないかもしれません。もしかするとあなたは一握りのダイヤモンドを欲しいと思っているけれども、本当に手に入れることができるとは信じていないかもしれません。どちらにしても、船頭はあなたを完全に無視します。まるであなたが何も言っていないかのように!   

     

これは、私自身の人生でも同じことが言えます。もし、私があるプロジェクトについてあまり気乗りしていなければ、たいてい不十分な結果に終わります。もし、私に熱意とやる気があり、明確な意図があれば、すごく集中して仕事に取り組めるだけでなく、まるで全世界が私の協力者になってくれたかのようなことが起こるのです。必要な時に必要な人物が目の前に現れたり、必要な資金を賄えるだけの額面の小切手が思いもよらず郵送されてきたり、誰かが電話してきて、偶然私が探している情報をその人が知っていたりするようなことが起こるのです。目標が何であれ、明確ではっきりしたエネルギーに満ちあふれた意図は、その目標を達成するのに役立つのです(そのプロジェクトを企画したのはどういう考えで(意図)、さしあたって到達しようと目指すものな何なのか(目標)。最終的な到達点として目指すものは何なのか(目的)。ちなみに、目的が最終的に目指すもの、目標がその過程で目指すものであるため、目的は抽象的で、目標は目的に比べて具体的になります)。   

     

[2]準備運動としてPACE(ペース)・・・詳細は参考書籍⑤   
①水を少しずつ飲む   
②ブレインボタン(1分×2)   
③クロスクロール(1分)   
④フックアップ(1分×2)   
の4つのエクササイズで構成されるPACEは、心を落ち着かせ、脳がこれから学習す   
る準備を整えてくれるので、ブレインジムを始めるなら、まずはPACEからです   
(時間は5分ほど)。必要だと思ったとき、いつでも自分をペースして、それか   
ら、やるべき課題へと向かうとよいです。   
*参考動画《日本語》《英語》   

     

以下個別のエクササイズについて書いていきます(26個のうち12個抜粋)。   

     

[3]クロス・クロール(左右;左脳・右脳の協調性を高める)   
クロスクロールのような正中線を越える動きが楽にできるようになることは、右脳と左脳という二つの脳半球の間に活発な情報のやり取りが可能になっているということを意味しています。この能力は、子供たちが楽しく学びを積み重ねるためには、なくてはならないもので、反射の名残りが統合されると、感覚の独特な過敏さや、ちょっとした予定の変更にも不安や恐れ、怒りなどを感じてしまう、その人の個性と思われているような、いわば「生き方の癖」を、もっと楽に生きられる形へと変えてゆく、大きな助けとなります。   
*継続的に数週間、数ヶ月にわたって続ければ、正しい姿勢を保つための中心軸に   気づくこと、筋肉の固有感覚受容のシステム、内耳の前庭のバランスという人間   の動きを構成する代表的な3つの要素を取り戻したり発達させる助けとなるでし   ょう。   
*最も有効なエクササイズの一つとのことなので、詳細を《補足②》に記載。   
クロスクロールのやり方と効果(2分で分かる動画)   

     

[4]レイジ―エイト(左右;目の動きが変わってくる)   
ブレインジムでは、目をケアすることが、子供たちの成長に大きな意味を持つと考えます。私たちの両目がストレスを感じずに働くことは、子供たちの楽しい学びを支える大きな柱の一つです。レイジ―エイトは、視野を広げ両目で見る力を育ててくれる目玉の体操で、ゆっくりやることが大切です。目の動きが、視界の中央付近でスムースにいかない人は、体の動きでも、正中線を越えることが難しい傾向にあります。そのような場合、クロスクロールを先にやっておくと効果的です。   
*自然に左右の視野や、左右の視野が重なる範囲が広がります。それにより、両目   が協調して動くようになり、両目を通じて見ている物の中心に焦点を当てること   ができるようになります。また、静止物に視線を合わせるといった同調の動きが   軽減し、その結果、視覚系がリラックスします。   

     

[5]ダブルドゥードゥル(左右;両手の協働で右脳と左脳を活性化)   
「見る」を活性化してくれるレイジ―エイトを毎日続けていると、両目で見える範囲が広がり、遠くから近くまで焦点を変えながら、奥行きを楽に見通すことができるようになってゆきます。そしてその影響は眼だけでなく、人間の心と体、全てのバランスを整える方向に働きかけてくれるので、「もっと心の余裕が欲しい!」と感じる方にも、おすすめの目玉の体操です。   

  

さて、両目の協働が楽しくできるようになってきたら、次に書くことを考えましょう。漢字の書き取りがきれいにできないとか、字が下手だから手紙を書くのが嫌だとか、ノートがうまく取れない等々、「書く」ことにストレスを感じている人は、大人にも多いようです。   

    

書くことが得意でないと感じている人は、できたらここから逃げ出したいくらいのうしろ向きな気持ちでいますから、体は危機から身を守るために、自動的に手足をすくめて、身構えた前傾姿勢になっています。これでは、肩から背中の筋肉も、スムースに動いて協力してくれる体勢にはなれません。「書く」を整える ダブルドゥードゥルは、この点に働きかけます。   

    

なお、体操の効果を高めるには、動き始める前に、「自分はどんなふうにかけるようになりたいのだろう?」と思いを巡らせ、なりたい自分のイメージを目標(ゴール)して設定するとよいです。   

        

[6]エレファント(左右;視覚・聴覚・バランス感覚をまとめて同時に活性化)   
私たちの感覚は、視覚や聴覚それぞれが、ばらばらに世界を感じ取っているのではなく、全ての情報は、私たちの中でつながって、統合された一つの現実として感じられているのです。ですから、例えば書くことにストレスを感じている人の目と手の協働を活性化しようという意図で、上述の ダブルドゥードゥルを試してみて、もし本人に大きな変化が感じられないようだったら、「目と手のほかにも、活性化が必要なところがあるのでは?」と、考えてみて下さい。例えば、さらにアウルをすることで、腕と頭の間で両者をつないでいる僧帽筋が活性化されると、鉛筆を持つ手と前腕、上腕、首、頭までのつながりがスッと感じられるようになって、一回の体操だけで、本人もびっくりするほど、書くことのストレスがなくなったりします(ブレインジムは、二つ以上の動きを組み合わせて用いると、より深い効果が得られることがあります。 ダブルドゥードゥルとアウルの組み合わせは、多くの方から好評を博している「ゴールデンコンビ」です)。さて、「見る・聞く」に関わる目標に加えて、「自転車に乗れるようになりたい」「体育で側転がうまくできたらうれしい」といった運動に関わる目標や、「バランスのとれた文字を書けるようになりたい」という目標を持っている人などにお薦めなのがエレファントです。是非自分用体操目メニューの定番に加えて頂くことをお薦めします。   

     

[7]ブレインボタン(上下;両脳の交差機能が向上)   
ブレインボタンの目的は、首の後ろ側の筋肉、脳の視覚野がある後頭部の辺りに起始部がある筋肉の緊張を緩めることで、制限された目の動きを開放することです。これにより視覚認識力が向上し、正中線を越えて読むのが楽になります。   
ブレインボタンのポイントは、脳に新鮮な酸素を含んだ血液を送る頸動脈の真上にあるため、このポイントを刺激するととで、頸動脈を刺激し、脳に酸素を運ぶ働きを向上させます。それによって、今度は脳が刺激され、左脳と右脳のメッセージのやり取りが促進され、直線的で分析的な脳(多くの場合は左脳)と、立体的で直感的な脳(多くの場合は右脳)の統合につながっていきます。   

     

[8]シンキングキャップ   
(上下;耳が痛い話も聴けるようになる。乗り物酔いにも効果あり)   
聞くことにストレスを感じている人は、程度の差こそあれ、みんな耳が硬く強張っています。その強張っている耳をほぐす体操です。体操をするときは、見本を示す人が、肘を左右に大きく広げて、肩甲骨を外側に開くようなつもりで動きを見せてあげることが、大きな助けとなります(肩甲骨にも意識を向けることが重要)。肩甲骨を背中にあるもう一対の耳であるかのようにイメージして、耳と肩甲骨を同時に伸び伸びと広げてあげましょう。   

     

[9]フックアップ   
(上下;前頭前野、内耳の前庭、脳の全ての運動制御中枢を同時に活性化)   
ストレス状態にあるとき、すべての危険が過ぎ去ったことを確認できるまで取り組むか、それとも引き下がり、動きを止め、隠れるかという、どちらかの反応をする反射的な能力が備わっています。自分を取り囲む環境の中にいることが、比較的心地よく感じるようになるまでは、私たちは自分の居場所を見極め続けるので、その間は成長するための次の一歩を踏み出すことはできないのです。このような状態になったとき、最も有効で、一番よく知られ愛されているエクササイズが、フックアップです。フックアップをすると、私たちは、体の中心、核となる姿勢筋と生命維持に不可欠な臓器に注意を集中させることになります。また上あごに舌をつけることで大脳辺縁系と脳幹をつなぎ、深呼吸することで舌骨靭帯により内耳の前庭を活性化させます。このおかげで、脳は整然とした状態になり、今起こっていることを考え、気づくことができ、前頭前野を活用することができるようになるのです(前頭前野を活性化し、心の内を開放するので、感情的ストレスや環境によるストレスを受けた後にバランスを取り戻す働きをします)。外側から影響を受けてフラフラと揺れ動く感じがして、自分の立ち位置がよくわからないと感じながら後退してるときには、いつでもフックアップをしてください。バラバラになってしまったエネルギーを体の中心にひとつに集め、統合感を与えてくれます。呼吸が深くなり、脳波はゆったりとしてきて、緊張状態から抜け出し、脈拍数と血圧は安定し、その上、血液は生命維持に不可欠な臓器に戻るだけの圧力が残っています。   
*立ったままでフックアップをしたいと思う場合もあるでしょう。それは立位が内   
耳の前庭の構造バランスを活性化するからです。立ってやろうと、座ってやろ   
うと、寝転んでやろうとも、どれも同じように効果的です。   

       

[10]ポジティブポイント   
(上下;前頭前野の血流改善。明るく前向きな自分を呼び起こすツボ)   
勉強についていけないと感じていたり、友達と仲良く過ごすやり方が分からなくて困ったりしている生徒たちにとっては、「体操をしましょう!」と言われても、「とてもそんな気分にはなれません」ということは、実はよくあります。そんな時に試してほしいのが、安心や冷静とともに、今の社会に是非とも必要とされる「前向きさ」を呼び起すための動きです。それがこの ポジティブポイントです。ストレス状態になると、額の前頭筋が最初に収縮します。この筋肉が収縮すると、前頭前野に流れる神経血管の動きを妨げることになります。前頭筋に優しく触れて、前頭筋をリラックスさせることができれば他の表情筋もリラックスし、神経血管の流れが妨げられることもなくなるのです。理性的な思考を司る前頭前野への血流が増えれば、ストレス反応が起きないようになり、私達はどんな状況にも新たな活動や反応で対処できるようになるのです。ところで、ストレスが大きくなると、自分ではおでこに触ることすらできないことがあります。そんなときは、誰かに ポジティブポイントをそっと押さえてもらいながら、同時にフックアップをしましょう(座位でOK)。この二つの動きの組み合わせは、落ち込んだり、パニックを起こしたりした人が、混乱から抜け出すことを力強く応援してくれます。   
*あなたのピンチが自分の存在に関わるくらい深刻だと、そのピンチをあなたの体   
が感じているときには、おでこにズキズキと痛みを伴っていたり、左右の拍動が   
ずれて交互に出ていたりします。   
*人のおでこを触る場合、触っている自分も、いつもより多くの水分が必要になる   
ことがあります。触った瞬間に、喉がカラカラになったと感じることもありま   
す。そんな時は、相手にも水分補給を促しながら、自分も補給してください。   
長くても3分ほどで、おでこの拍動が微弱になってきますので、そのタイミン   
グで「今どんな感じが しますか?」と声をかけると、つい先ほどまで「どう   
せ自分なんてだめだ」と訴えていた当人が、「自分のできることをやればいい   
んだ!ベストを尽くします」と、内側で起こっている前向きな変化を言葉にし   
てくれるようになります。   

     

[11]カーフポンプ(前後;脚の筋肉をケアして、やる気につなげる)   
「やらなければいけない!だけどすぐ行動に移れない、やる気が起きない」。子供達や、もちろん大人でも、日々そんな状況に置かれて困ることがあると思います。「なかなか一歩前に踏み出せないな」と感じるときには、ブレインジムでは、「脚の筋肉をケアしてあげることが必要かも?」と考えます。具体的にはふくらはぎにアプローチするのですが、一歩踏み出すことに困難を感じている人のふくらはぎは、本人が気づいていないうちに、往々にして硬く縮まっているのです。自分のペースで何回かカーフポンプをして、ふくらはぎがしなやかになってくると、背中がすっきりしたり、肩こりが軽くなったりしたと感じる人もいます。その他「言葉が出やすくなること」、不安感を手放す効果もあります。   

     

[12]フットフレックス   
(前後;ふくらはぎの凝りほぐし。凝りや痛みは筋肉の記憶)   
ストレスが重なると、まるでそれを溜め込むかのように、私たちの体の筋肉は硬く凝り固まることがあります。肩こりは、この現象の代表的なものの一つですが、僧帽筋を活性化するブレインジムの「アウル(ふくろうの動き)」がその対策として効果的です。またその僧帽筋と同じくらいに、感情的な体験やストレスを溜め込める場所が“ふくらはぎ”です。脚が疲れやすくて元気が出ないと感じている人や、カーフポンプを試して、さらに足のケアが必要だと感じている方がいらしたら、ぜひフットフレックスをお試しください。   

     

4.【インターネット上の情報】   
日本教育キネシオロジー協会                  
トラウマ解消に効果を発揮!ブレインジムアクティビティ     
ブレインジムを取り入れた遊び(動画)             
スヴェトラーナMasgutova教育研究所             

     

5.【ブレインジムの参考書籍】   
①ビジネスマンのための脳の筋トレ ブレインジム   
(デニッソン夫婦、ジェリー・テプリッツ著)2008年★   
*ブレインジムエクササイズのカタログ的な本。全容を知っている人向け。   
②ブレインジムと私(ポール・デニッソン著)2010年   
*読みづらいですが、基礎情報が手に入ります。   
③こころのりんしょう 第30巻4号〈特集〉ブレインジム (2011年)★   
*臨床でどんな効果があるのかを知りたい人向け。   
④トラウマからの回復(S・マスコトーバ、P・カーリー著)2013年   
*ブレインジムを用いてトラウマ治療を行ったその全貌が語られています。   
⑤ブレインジム 発達に気になる人の12の体操(神田誠一郎著)2014年★★★   
*概要を知りたいならば、まずはこの本がおすすめです。   

     

《補足①》発達障害に関する情報

     

1.【はじめに】   
2.【原始反射とは】   
3.【原始反射例】   
4.【原始反射様の残存がある人に対して理解しておくべきこと】      
5.【発達が気になる人の感覚世界例】   
6.【原始反射の発達を促すブレインジム実施時の注意点】   
7.【脳神経学からみた発達障害情報】   
8.【腸からみた発達障害情報】   
9.【発達障害改善に寄与する可能性のある当サイト内関連情報】   
10.【発達障害に関する参考書籍】   

     

1.【はじめに】   
発達障害は、全児童の少なくとも6.5%(文部科学省2012年調査結果)という報告もあれば、日本国内では重度の自閉症は約36万人、知的障害をともなわない「高機能自閉症」まで含めると、120万人もの自閉症者がいるという“見解”もあります。   
また、アメリカ合衆国では、数百万人の若者がADD(注意欠陥障害)のための薬物療法を受けています(専門家は、この数百万人の若者のうち、本当に薬物療法が必要なのは5%に過ぎないと見積もっています)。しかし、ADDはメチルフェニデート(リタリン)が欠乏しているわけではないのです!注意力の焦点を合わせる能力が不足しているということであり、その多くは、脳と体の機能を統合するプロセスを行うことで、解消することができるのです。体を動かして、脳全体を使うことを学習すれば、こういった脳機能障害の多くは解消されます(脳幹、大脳辺縁系・・・とそれぞれきちんと存在しているが、神経網による連結がなされていないだけ。仮に損傷・欠損が生じても、それを肩代わりする新たな神経回路が生み出されることもあります)。   

     

*リタリンは、コカインやモルヒネやアヘンと共に乱用の可能性の高い薬物を示す   
スケジュールⅡに分類される薬物で、副作用として、うつ、神経過敏、高血圧、   
胃痛、成長抑制、引きこもり、食欲不振、免疫系の消耗などが起こる可能性が   
あります。この薬は、脳の中の運動調節や時間間隔に関連している大脳基底核   
や大脳基底核の線条体に影響を与えます。   

     

2.【原始反射とは】   
私たちは種の保存の法則により、「生き残るために、第一に生命を守るように設計されています」(危機的状況において、反射的に身体が動いて心身を守るように設計されています)。人間は、母親の体内から誕生後約1年間、生き残るために反射的な動きに守られています。例えばおっぱいを探し、乳を飲む探索・吸てつ反射、母親にしがみつき落ちないようにするモロー反射や手足の把握反射などが一般的によく知られている代表的な反射です。このような新生児が持っている反射的な動きは数十種類あり、“原始反射”と呼ばれています(脊髄や脳幹下部で起こる新生児固有の反射。脳の神経発達の成長により、協調した動き(身体全体を使ったスムーズな動き)を司る神経網へ組み込まれ、脳梗塞等により危機に即した時以外なりをひそめます)。   

     

3.【原始反射例】   
[1]バビンスキー反射(足元が安定せず、落ち着いて学べない)    
何もないところでよく躓いて転ぶ」という症状があれば、その人の足の親指を、それとなく観察してみて下さい。靴下を履いている指先、特に親指は、どんな表情をしているでしょうか?空を見上げるように上を向いている親指を見つけたら、その人に聞いてみて下さい。「靴下の親指に穴が空くことはありますか?」人によっては、靴下だけではなく、靴にも親指の辺りに穴が空いてしまいます、という答えが返ってきます。ここまでのチェックで、ほぼ目星はつきますが、確認のため、足の裏を触ってもいいかと聞いて(必ず許可をとってからやってください。もし、拒否する人がいたら、友好関係を保つために、次の動きは試さないでください)、足の裏を踵から小指の方に向かってこすってみます。もし親指が反りかえるように動くか、人によっては、他の四指が親指と逆側に反り返るように動いたら、これはバビンスキー反射という反射行動です。はっきりとそれとわかる反応を見せてくれる人もいますが、慣れないと足の動きに気づかないくらいの反応しか見せないこともあります。   
*バビンスキー反射は、程度の差はありますが、大人になっても持ち続けている人   
が結構いる感じですが、反射の名残を中学生、高校生になっても色濃く持ち続け   
ている人たちは、転びやすいことのほかに、運動することに対して慎重になった   
り、新しいことに取り組もうと文字通り一歩を踏み出すためにも、勇気をふり絞   
らなければならなかったりします。   

     

[2]モロー反射(ちょっとしたことに驚き、強い不安を感じてしまう)   
モロー反射は、ちょっとした音や光、唐突な接触や強い振動などがきっかけとなって、   
①腕や足を投げ出すように広げ、息を吸い込む     
②次に身を縮めて声を上げて泣き出す   
という現れ方をします。別名“しがみつき反射”ともいうそうですが、これが起きる   
と、親としては放っておけません。慌てて抱き上げにいくので、赤ちゃんは必要な   
ケアを得ることができますし、しがみつく動きによって反射が統合され、成長のス   
テップを先へ進めることができるという仕組みになっています。   
しかし、モロー反射を持ち続けている人たちは、日々生き延びるために乗り越えな   
ければいけない様々な困難を抱えています。例えば、触覚からの刺激が、このびっ   
くりする動きの引き金になっているので、何かに触るということに大きな緊張を伴   
います(例えば、その時包丁を持っていたら周りに危険が及びます)。ですから、   
彼らは新しいものには、こわごわと手を伸ばすようになります(バビンスキー反射   
の持ち主と同じように、外の世界へ勇気をもって飛び出してゆくことにためらう力   
が働いてしまいます)。    

  

[3]緊張性迷路反射(首の動きで姿勢が不安定になり、運動が苦手に)   
この反射を持つ人に首を縦方向に動かしてもらうと、みんなグラグラして安定を保   
てなくなっているのが一目瞭然。しかし、当人は無自覚なことが多いのです。こ   
の現象は、本人の意思に関係なく、自動的に起こっていますから、これは反射によ   
る動きです。自分で気を付けようとしても、うまく対応できないのが普通だと思っ   
て下さい。   
試しに上を向いてもらうと、“ちょっと嫌な感じがする”くらいの自覚しかない人   
でも、両足を気をつけの姿勢になるように揃えて、それから上を向くと、横で待ち   
構えている人が全力で支えないと倒れそうになるくらいふらつくこともあります   
(一人でやることは危険なので、試さないで下さい)。   
首を向ける角度がちょっと変わるだけで、姿勢が安定しなくなるわけですから、彼   
らが、上を見上げるバドミントンのようなスポーツに挑戦すると、シャトルをうま   
くラケットでとらえられずに、空振りするすることが多くなります。縄跳びも、姿   
勢が安定せずに、長く続けることが難しいと感じます。山登りに行って、ふと頂上   
を見上げると、足元がふらついてしまい先へ進めません。体を動かす遊びやスポー   
ツに関わって楽しむ経験が乏しいために、みんなだんだん運動から縁遠くなってい   
きかねません。   
なお、この反射は、前方と後方という2種類に分かれ、それぞれ別々に発達します。首を前に曲げた時と後ろに反らした時では、違う動きが現れるのです。   
緊張性迷路反射[前方]は、受胎後12週の頃から発達します。首を前に曲げてうつ   
むく姿勢をとると、赤ちゃんの胴体や腕、脚が曲がって縮こまります。これは、母   
親のお腹の中にいる時の胎位です。緊張性迷路反射[前方]は、生後3ヶ月ごろには   
見られなくなってゆきます。   
次に、緊張性迷路反射[後方]は、出生時に産道を通過する時が引き金となって現れ   
ます。赤ちゃんは、首を前後に動かすことで、胴体や手足の筋肉を曲げ伸ばしする   
この反射の動きを引き出して、成長に必要な刺激を得ていると考えられています。   
首を反らせる方向に動かすと、反射的に腕と脚が伸びるので、緊張性迷路反射[後   
方]を持っている人は、背中側の筋肉をいつも緊張させることになるかもしれませ   
ん。立っている時には、ふくらはぎや太ももの裏側が常に緊張してしまい、踵が   
地面につかない独特な歩き方をする人も見られます。   
この反射の名残りを持ち続けている人達には、姿勢の悪さ、例えば、猫背がよく   
見られます。   

     

[4]対称性緊張性頸反射   
(腕立伏せ、キャッチボール、板書の書き写しがうまくできない共通の原因)   
赤ちゃんが腹這いの体勢で首を上げて前を見ようとしたとき、両腕が伸びて、両脚   
が曲がり、お座りする格好になるのが 対称性緊張性頸反射です。腕と脚の動きが   
連動して起こります。四つん這いになって、ハイハイを始めるころ(生後6ヶ月ご   
ろ)に現れます(原始反射の中では、一番遅く現れる)。二足歩行ができるように   
なってから後には、現れる必要はなくなっているはずなのですが、この反射の名残   
りを持ちづづけているように見える人たちが、やはりいます。例えば、腕立て伏せ   
をしてもらうと、膝をついたままの四つん這いの姿勢でも、両腕を曲げようとする   
だけで、もう腕が震えだします。さらに、自分の膝を見るようにして首が前に曲が   
った姿勢になると、両腕が曲がってきて頭が床につきそうになってしまいます。   
「腕立て伏せなんてやったこともありません!」と言う人もいます(小学校でやる   
前転は、彼らにとって悩みの種です。前転をしようとすると、両腕で体重を支えら   
れずに、自動的に頭をマットにぶつけてしまうのです)。   
また、対称性緊張性頸反射の名残りは、「目測する」という目の機能にも大きな影   
響を及ぼすので、腕立て伏せがまるでできないというこの反射の兆候を持っている   
人達は、キャッチボールをするときに、「相手との距離を見ながら、投げる強さを   
加減してくれ」と頼んでも、よくわからなくて途方に暮れてしまうのです。   
腕立て伏せ、ボール投げ、どちらも生きていくのに困らないよと思うかもしれませ   
んが、 対称性緊張性頸反射の名残りを持ち続けている人達は、例えば、ノートを   
書き写すのにも、どても時間がかかるのです。黒板に書かれた文字を見ます。   
もし、教室の後ろの方に座っているとしたら、5,6mの距離があります。黒板とノ   
ートを見るという繰返しは、ボール投げの時と同じように、両目で近くや遠くに焦   
点を合わせる能力が必要とされるので、彼らはやはり不得意なのです。   

  

[5]ガラント反射(いい子で席に座っていることが難しい)   
教室で自分の席にじっと座っていられない人がいます。何か目についたものがある   
と、気になって、触らずにはいられません。物音にも敏感です。友達の話を遮って   
割り込むことが、よくあります。さらに、授業中に、先生の話に耳を傾けることは   
あまりありません。   
ADHD(注意欠陥・多動性障害)と診断される子供達の様子と、驚くくらいに重な   
るこれらの特徴的な行動は、「5.発達が気になる人の感覚世界例[3]触覚」   
に記載した、敏感すぎる背中を持つ子供達のものです。   
そして、敏感すぎる背中の持ち主には、同時にやはり原始反射の一つであるガラ   
ント反射の名残りがよく見つかります。   
この反射は、生後3~4ヶ月目で役目を終えて統合されると言われています。赤ち   
ゃんの腰の辺りで、左右どちらかの背骨から3cmぐらい離れたところを指先で縦に   
軽くこすると、赤ちゃんは同じ側に腰をくねらせて曲がるという反射です。   
ガラント反射は、平衡感覚を司る中枢である前庭器官を刺激して、その発達を助け   
るためにあると言われています。大人になっても左右どちらか片側だけ残っている   
人には、脊柱側弯が出やすくなると言われています。また、腰の両側にこの反射を   
残している人には、腰痛が起こりやすくなると言われています。   
腰の辺りに触られることで発現する反射ですから、子供たちが背もたれつきの椅子   
に座ると、胴体が左右にくねくね曲がる動きが起こってしまうのです。椅子にずっ   
と座っていたら、反射の動きも出続けるわけですから、立ち上がってソワソワして   
しまうのも、彼らには当然のことかもしれません。   

  

4.【原始反射様の残存がある人に対して理解しておくべきこと】      
原始反射様の動きは、生命の危機に瀕した時に生命を維持するために備わっている動きであるため、普通に生活している場合、意識的に認識されることはほとんどありません。この動きが残り、健全な発達を阻害している状況が長引くと、身体がスムーズに動かず、出来ないことが増え続け、劣等感等となり、身体面のみならず精神面にも困難な事態が多く現れ始めます。例えば、教師が生徒に   
「クレヨンを折らないように書きましょう」   
「字をきれいに書きましょう」   
「肩の力を抜いてリラックスして運転しましょう」   
と繰り返し指導しても、原始反射様の動きが残存していれば、生徒の活動は一向に改善しません。生徒は努力を怠っているわけでなく、生徒の意志だけで反射を止めることは不可能な“自動的なもの”なのです。指導者側の重要な注意点は、「反射的活動は、何らかの理由で生命維持のための動きが残ってしまい、ほとんど無意識下で起こり、生徒に責任はない」という事実を認識することです。   

     

5.【発達が気になる人の感覚世界例】   
[1]視覚(これらの不思議な見え方が、誰にでも起こる普通のことだと思って   
いる可能性がある)   
・両目で焦点を合わせて読み続けられない   
(両目を同時に一点集中させて、滑らかに文字を追えない)   
・行の真ん中辺りの文字が見えていない   
・読むとき、勝手に目線が飛んでしまう   
・文字が点滅したり動いたりするように見える   

  

[2]聴覚   
・全ての音が同時に聞こえる   

     

[3]触覚   
・触るのはいいが、触れられるのは嫌   
・背中が感覚過敏(教室の背もたれのある椅子で、もぞもぞしたり、横向きに   
座る原因のことも)   

     

[4]運動感覚   
・自分の動きを感じ取りにくい(例えば、腕を伸ばす時、伸ばす筋肉と縮ませ   
る筋肉の両方に力が入る)   

  

【5】平衡感覚   
・めまいがないのにバランスが悪い(平衡感覚を混乱させる原始反射の影響)   

     

6.【原始反射の発達を促すブレインジム実施時の注意点】   
子供達にブレインジムのエクササイズを提供するときに考慮する点は、子供達をじっくり観察し、子供達が動いて楽しそうな、また動きやすそうなエクササイズを選ぶことです。原始反射様の動きが潜んでいる場合の特徴は、子供たちはエクササイズをすぐにやめてしまいます(*1)。なかには指導者に気に入ってもらおうと無理してエクササイズをする子供達もいるので、このエクササイズが好きかどうか子供達に尋ねることも重要です(無理をさせずに楽しくするのがコツ。気が進まないままやらせると、あまり効果を期待できません)。自分自身の発達に即したエクササイズに出会った子供達は自然に笑顔になり、必要な期間エクササイズを続け、エクササイズを自然に終了します。子供たちの心身の活動に有用なエクササイズを十分に行うことによって、原始反射様のギクシャクした動きはだんだん統合され、姿を消していきます。   
(*1)すぐに止めてしまったり、嫌がったりするときには、原始反射様の動き   
が、本人の意志とは関係なく、勝手に起きていると判断し、エクササイズ   
を続けることをせず、座らせるか、床に寝かせるかして、身体を安定させ   
てから、発達を育てる動きを行う必要があります(床の上で、重力の動き   
を最低限に抑えて、適切に身体を動かすエクササイズ群を選択する)。   
動きたくない初期のころは「水を飲むだけ」、ブレイン・ボタンだけ、   
ポジティブ・ポイントとフック・アップだけなどを利用し、それからクロ   
ス・クロールに入ってみるなどの工夫が必要です。   

     

[その他参考情報]   
〇ブレインジムをしても効果の継続しない場合は、   
・病気が改善すると自分にとって都合の悪い方に物事が進む場合(疾病利得)   
・病気でいなければ環境に適応できない場合   
・生きる目標がない場合   
・薬物を多量に服用していたり、アルコール依存、喫煙習慣   
などが原因として挙げられます。禁酒・禁煙を目標にするのは悪いとは言えませ   
んが、その動機を曖昧にしたまま禁酒・禁煙そのものを目標にするとうまくいき   
ません。患者の意図や動機を明確にすると、禁酒・禁煙以外の目標が出てきま   
す。   
〇ブレインジムを始める以前に、みんなと同じ空間にいるだけで、へとへとに疲れ   
てしまう人には、強いリラックス効果のある「リズミックムーブメント」から始   
めると効果的です。   
怪我をして動けない人には動かすイメージを持ってもらうだけでもいい。治療者   
がエクササイズをするのをみてもらうだけでもよいし、目の見えない人には動か   
してもらいたい手足に触れて動かすイメージを持ってもらうだけでもよい。これ   
らを「観念運動」的動きという。観念運動というのは、観察者が他者の行動を知   
覚した時に、観察者の脳に同じような運動をしている情報が流れることである   
(ひとつの動作を何回も見ることによって、大脳辺縁系の中心部が活性化され、   
頭の中でのリハーサルがやがては実際の動作につながっていく)。   
〇トラウマティック・ストレスに対して解離性健忘を起こしやすい人は、顔を含め   
た身体全体の左右の動きや筋肉の力の入り方に顕著に差が現れ、動いた時の体軸   
の揺れが大きく、身体がへにゃへにゃで、強い疲労感が起きやすい。クロスクロ   
ールをしてもらうとよくわかる。クロスクロールができないか、できても左右の   
正中線を超えられないことが多い。その時にはDLRや3DRが有効である。   
「DLR」=デニッソン・ラテラリティ・リパターニング   
身体の左右両側を協調させるための5つのステップからなる(クロスクロールと   
片側だけを使う片側クロールという動きを行います)。身体の中央領域にアクセ   
スして視覚や姿勢に働きかけるバランス調整法。   
「3DR」=3次元リパターニング   
左右/上下/前後次元の観点を加えたDLRのバリエーション。脊椎を重力から   
フリーにして行う調整法(仰臥位)。   
〇集中して注意力を払うことができないということは、焦点を合わせる能力や、体   
の前後方向の正中線を中心として前後に体を動かす能力に問題があります。   
〇過去のつらい時間に浸っている人は、椅子に座っていながら爪先立ちをしている   
人が多い。   
〇現代社会では、命の危機がないのにも関わらず、ストレス刺激で反射刺激を起こ   
し、無駄に爆発的で持久力のない筋肉群を使い続け、疲労して固まっています。   
こうして硬直した筋肉は脳に「サバイバル状態」としての情報を送り続ける悪   
循環を生むことになります。   
臨床経験から、伸びのエクササイズ群は、この悪循環をリセットする、簡単で   
パワフルなエクササイズです。体表にある、疲労して固まった筋肉のリセット   
は、体幹深部の持久力のある筋肉群を働かせ、身体と脳全体がバランスを取り   
戻す環境を作り出すのです。   

  

7.【脳神経学からみた発達障害情報】(参考書籍⑨より)   
大人の発達障害が社会的問題として登場してくるほど、日本の発達障害児は長年支援が受けられず、そのまま個人レベル、家族レベルの努力で成長し、成人した人が多くいらっしゃいます。その後も増加が続く発達障害児も、現在大学、高校、中学校、小学校で苦闘している子が多くいます。   
米国や英国に比べ、日本の発達障害児への支援は著しく遅れています。実態調査によると、日本の首都圏では親が「この子は何か違う」と気づくのが、平均2.7才、どこかに受診するのが平均3.9歳、最初の診断を受けるのが入学直前の5.9歳で、福岡では、気づき受診するのがさらに平均2年遅れ、最初の診断では4年も遅れ平均9.9歳で、これでは療育の適期を明らかに逃しています。子供は自分たちと違う者をかなり敏感に識別する性質があり、「いじめ」の下地になります。したがって、ただでさえ対人関係が苦手な発達障害児はいじめられやすく、本人はとりわけ友達ができにくくなり、学校生活でもトラブルが起こりやすい状況にあります。これらの発達障害児への対応の遅れの最大の被害者は、子供たち自身です。対人関係がうまくいかないための様々なトラブルに悩み、苦しみ、それで思春期に至るまでに二次障害、三次障害が起こりやすくなります。「感情障害、抑うつ、強迫、精神病様症状、PTSD、被害妄想、さらには摂食障害や自殺、行為障害、アルコール関連障害など、自閉症でない人でもわずかなリスクとして持っているものは全て、特に高機能の自閉症スペクトラムの人々は合併する症状のレパートリーとして持ち帰る」と言われています。また、養育者との関係もうまくいかないことが多く、虐待が起こりやすいケースもあります。   

     

このような状況が無視できるほど極々少数の話しかというと、残念ながらそういう状況になく、日本や韓国での自閉症と診断される子供の数の増加は著しく、2012年までの報告では、その有病率や単純なデータ比較で韓国が世界第一位、日本は世界第二位で他国より突出して多い状況にあります(三位英国、四位米国)。そして、単なる偶然の一致とは考えにくいですが、農薬の人体汚染度の指標である、単位面積当たりの農薬使用量(2008年OECD国別データ)と4位まで見事に一致しています(順位だけならまだしも、日本、韓国とも桁が違うのではというくらい極端に多い)。この農薬汚染は大きな問題で、一番脆弱な人の子供の脳で高次機能の発達を侵害し、自閉症など発達障害児の増加をもたらした主な原因である可能性があります(汚染された母体から、ほとんどの環境化学物質が胎盤を通過し胎児へ、母乳を通じて乳児へ移行しやすいことはすでに実証されており、その上胎児、乳幼児の脳の血液脳関門は未成熟なので、血中の毒物は簡単に発達中の脳に侵入してしまいます)。   

     

[発症メカニズム]   
人の持つ病気、ことに脳の疾患や発達障害の原因や発症メカニズムを考えるうえで重要な基本は、脳など人体の実際の構造や機能は遺伝子でなく(遺伝子変異が原因ならば、この変異が人の集合全体に広まるには数百年、数千年かかるはず)、最終的には環境要因で変わりうる遺伝子の発現が決めています(環境要因が、遺伝子スイッチのON・OFFに影響を及ぼしている)(*1参照)。   
具体的に書けば、人の脳の中で「外界からの様々な化学物質の侵入など、環境変化に最も脆弱なのはシナプスで、その形成・維持の異常」(シナプス症)が発症メカニズムです(*2~5参照)。   

       

(*1)自閉症やADHDなど発達障害の関連遺伝子の数は多く、しかも、どの遺伝   
子の変異も単独では直接発症に結びつかない。おそらく、天然の放射線に   
よる突然変異などで一つの関連遺伝子に自閉症発症につながりかねない変   
異があったとしても、他の多くの遺伝子の働きでカバーされて、簡単には   
機能が障害されないよう、システム的に頑健になっていると考えられる。   
様々な検証結果から、病気や障害、ことに脳の高次機能に関わる病気や障   
害の原因への遺伝要因の関りは意外に低く、環境要因が発症に大きな決定   
力を持っていると考えざるをえない。   
(*2)ほとんどの脳機能が保たれているにも関わらず、高次機能のごく限   
られた、しかも最も複雑な高次情報処理をしている神経回路のみが機能し   
ていない(146頁から7項目にわたって、脳神経科学的な証拠が記載され   
ています)。   
(*3)自閉症の脳が一歳前後に20%ほど大きい場合が報告されているが、   
これはシナプス形成の過多などの異常がまずあって、続くはずのプログラ   
ム細胞死がうまく進行しなかったためと考えられている。   
(*4)発達途中の脳でシナプス形成が盛んな時期と毒性化学物質が侵入し   
やすい時期は、因果なことに、重なっている。   
(*5)シナプス症と考えらえる病態を持つものは、自閉症、ADHD、LDなど   
の発達障害、統合失調症、うつ病、双極性障害、気分障害などの精神疾   
患、パーキンソン病、てんかん、筋萎縮性側索硬化症(ALS),アルツハイ   
マー病などの認知症などなど、多くの難治性と言われる精神神経疾患が挙   
げられます。   
子供ごとに異なる「発症しやすさの遺伝子背景」が「症状によって特異的   
に障害されるシナプスの、それぞれの発達神経毒性化学物質への脆弱性」   
を決めています。毒性化学物質ごとに起こしやすい症状、発達障害や精神   
疾患は異なっていることになり、それが一人一人異なる所以です。   

     

[発達障害発症の環境要因情報]   
以下にいくつか転載します。   
・環境要因による自閉症の発症には興味深い情報があります。   
それは、米国社会で異彩を放つアーミッシュという特殊なドイツ系民族集団の健   
康度で、彼らは移民当時の生活スタイルを堅持しており、近代文明を拒否してい   
ます。驚くべきことに、彼らの自閉症の発生率は、平均の米国人の10分の1く   
らい、ここ数十年で年数人しか発症せず、自閉症児は著しく少ないままだという   
ことです。   
このことから、化学物質環境だけでなく養育環境も問題になりそうだということ   
が言えます。   
・自閉症の環境要因に関わる多くの因子があるなかで、様々な疫学データから、   
達神経毒性を持った化学物質群の汚染が主な原因と疑われます。特に注目すべき   
なのが農薬因子かもしれません。有機リン系農薬は古くから、曝露後2~3週間   
経ってから発症する遅発性の神経症状が知られています。化学物質過敏症など神   
経系の障害ばかりでなく免疫系の異常も起こします。規制の厳しいヨーロッパで   
は現在ほぼ使用されなくなってきていますが、米国や日本では一時の使用量より   
は低くなっているものの、未だに多量に使用され続けています。   
その他、除虫菊の殺虫成分に近く残留性の高いピレスロイド系やカーバメート系   
等も、脳神経系を標的としています。ピレスロイド系農薬は、安全性が高いとさ   
れていましたが、動物実験では脳の発達に重要な遺伝子発現を変動させる報告   
や、脳内の血管形成に異常を起こす論文が出ています。最新の疫学研究では、ピ   
レスロイド系農薬曝露と子供の行動異常に相関関係があると報告されています。   
1990年代、慢性毒性の強い有機リン系農薬の代替として開発されたのがネオニ   
コチノイド系農薬で、現在世界中で使用量が急増しており、人への毒性も既に   
確認されています(いずれも人の脳の発達の重要部分に深く関わっていることな   
ど全く知らないで開発・販売され、しかも母親や子供に曝露しやすい農薬、殺虫   
剤として現在でも私たちの周囲で使用されています)。   
以前の有機リン系農薬の大部分は、非浸透性で農産物の表面に留まり、洗えば大   
部分取れたものが多かったのですが、ネオニコチノイド系農薬は水溶性で、種子   
内部に浸透した微量の農薬が成長後も葉や茎に拡がって、薄まっても殺虫効果が   
持続するという非常に毒性が強い浸透性農薬です。   
有機リン系農薬は果実も皮をむけばとりあえずリスク回避できましたが、ネオニ   
コチノイド系など浸透性の農薬は果菜内部に浸透するので、洗い落とせずそのま   
ま食べざるを得ないため、問題となっています。   
例えば、動物実験でニコチン曝露により、次世代にまで多動など行動異常を起こ   
すという発表がされ、ニコチンに類似しているネオニコチノイド系農薬もニコチ   
ン様の発達障害を起こすような影響が危惧されています。   
また、国内の人への曝露被害については、農地への空中散布や汚染のひどい食品   
の多食による大量曝露での比較的急性の毒性、すなわちネオニコチノイド系農薬   
中毒と疑われる全身倦怠感、記憶障害、心電図異常、瞳孔反応異常などの症例を   
発表されています(尿からもネオニコチノイドの代謝物、6-クロロニコチン酸が   
検出された)。   
ちなみに、ネオニコチノイド系農薬は、国内では農薬以外にも防虫剤として建   
材、ガーデニング、シロアリ駆除、家庭用殺虫剤、ペットの蚤駆除など多用さ   
れ、松枯れ防止に空中散布が実施されている地域もあります。   
・もともと自閉症の発症は、出生時の父親の高年齢化と相関することが明らかにな   
っており、父親の精子のDNA上の突然変異の蓄積が原因と思われ、精子のDNA   
は修復力が弱いため、放射線や遺伝子毒性を持つ化学物質への長期曝露が大   
きく影響していると考えられています。   

     

[まとめ]   
自閉症など発達障害の原因は、従来から言われてきたような「遺伝要因」では説明がつかず、近年の日欧米における急増の原因は環境要因が主要であること、ことに感受性の高い胎児期や小児期などに農薬やPCBなどの有害な環境化学物質を曝露すると発達障害のリスクが高くなります。環境要因としては、環境化学物質だけでなく、放射能があり、感染症、栄養状態、生活習慣、さらに家庭・学校・社会環境の著しい変化なども当然関わっており、さらにこれらが複雑に影響しあった相互作用の結果の発症と考えられます。   

     

8.【腸からみた発達障害情報】(参考書籍⑩参照)   
腸と脳とは無関係だと長い間考えられていましたが、今では腸内の健康と機能、とくに「腸内細菌」が脳の発達に関係していることが明らかになってきています。腸内細菌が自閉症といった脳疾患の発症と進行の原因になっている可能性があることもついに分かってきたのです。   

     

ここに誰もが納得できる証拠があります。   
自閉症の子供たちは腸内細菌の構成に特定のパターンがありますが、そのパターンは自閉症でない子供には存在しないのです。さらに自閉症の人はほぼ一様に、胃腸に問題を抱えているという事実もあります。その上、自閉症患者に見られるある特定の腸内細菌は、免疫系と脳に悪影響を及ぼす物質をつくり、免疫系を乱して炎症を起こします。   
脳が急速に発達中である若い人の場合、炎症の発生に加えてこうした細菌との接触は、脳障害の一因となる高い可能性があります。   

  

ここでファインゴールド博士の研究結果を紹介します。   
自閉症の子供たちはクロストリジウム属菌を9種類持っており、それらは自閉症でない子供達には見られない種類でした。クロストリジウム属菌の多さと自閉症との関係を理解するには、腸内での“短鎖脂肪酸”の役割を理解する必要があります。   

     

短鎖脂肪酸とは、私たちが食べた食物繊維を腸内細菌が分解する時につくる代謝産物です。腸内細菌がつくる主要な脂肪酸は 3 つ。酢酸、プロピオン酸(PPA)、酪酸であり、排泄されるか結腸に吸収され、体の細胞のエネルギー源として使われます。   

     

これらの脂肪酸の割合は腸内細菌の多様性や、食事のあり方に左右されます。つまり、異なる種類の細菌はそれぞれ異なる短鎖脂肪酸を作り、クロストリジウム属菌は“プロピオン酸(PPA)”を豊富に作ります。だが、このPPAが血流に流れ込むのはいいことではありません。脳がPPAに接触することは、特定の腸内細菌が作る他の分子と同様、自閉症発祥の重要なカギかもしれないからです。クロストリジウム属菌がつくり出すPPAは脳にとって毒性があり、その影響はこの菌が腸内で異常発生することから始まります。まず、PPAが腸壁の細胞をつないでいる結合を弱めて、腸の透過性を高めます。PPAは腸の反対側へ通り抜け、血流に入り、炎症を起こします。また、細胞が次の細胞へと信号を送る経路を使用不能にしてしまいます。PPAはミトコンドリアの機能も弱め、それが脳のエネルギーを使う能力を変えます。加えて、 酸化ストレスも高める為、タンパク質や細胞膜、重要な脂肪とDNAさえも傷つけます。そして、例えば抗酸化物質、神経伝達物質、オメガ3 脂肪酸など、脳が正常に機能するのに必要な様々な分子を浪費します。だが、最も特筆すべきPPAの影響は、自閉症の引き金になることでしょう。   

     

他にも証拠があります。   
糖質やグルテンたっぷりの炭水化物は、単に脳の神経組織の発生を妨げ、時間をかけて進行する認知症のリスクを高めるだけではありません。炎症性の炭水化物がたっぷりで、脂肪が少ない食事は心の状態にまで干渉してきます。認知症だけでなく、ADHD(注意欠如・多動性障害)、不安障害、トゥーレット症候群、精神的疾患、偏頭痛、 さらには自閉症などの一般的な神経病のリスクにつながるのです。   

     

また、母親の細菌をもらう機会を逸する“帝王切開”で生まれる場合の健康について、アレルギー/ADHD/自閉症のリスクが 5 倍/3 倍/2 倍に増加したという、衝撃的な統計結果が得られています。   

     

しかし、悲観することはありません。食べ物の選び方を変えて「脳の作り方」を少し修正しただけで、生き方や健康状態が変わったのです。それは炭水化物を減らし、健康的な脂肪分を増やしたことによります。 このちょっとした食生活の変化だけで、うつ病やそれに類する病気、すなわち慢性的な不安感から記憶力低下、ADHDまでもが消え去ってしまう数多くの例があります。   

     

[まとめ]   
新生児の一生の健康リスクは、乳幼児期の経験が影響力を持つこと、および分娩方法が関わりますが、生まれた時の分娩方法や、最初にどんな食事を与えられていたか、子供の頃に体内に(体外も)どんな細菌が育ったかについて、今から変えることはできません。しかし、まだ間に合います。何を食べるか、どんな環境に身を置くか、どんなライフスタイルで過ごすかによって、これから健康的な腸内フローラを育てることができ、改善させられます。   

     

9.【発達障害改善に寄与する可能性のある当サイト内関連情報】   
腸内環境を整えることで、今からでも可能性があります。   
A-2.砂糖の摂り方で健康レベルは変わる    
A-12.味噌の魅力              
B-2.あなたは、お風呂が先?ご飯が先?    
C-1.ゼロ/低カロリー、低糖、微糖と表示されている商品って大丈夫?    
C-2.ブドウ糖果糖液糖、果糖ブドウ糖液糖はどうなの?   
C-3.小麦食品(パン、麺類など)の心身破壊力はすごいのかも!?                     
C-4.誰にでも起こりうる栄養失調起因(ミネラル欠乏)症状を改善させる、おすすめの天然ダシ!                        
D-9.腸を元気にする、おすすめの豆乳ヨーグルト                       
D-10.腸についての参考情報         

     

10.【発達障害に関する参考書籍】   
⑥食事でかかる新型栄養失調(小若順一著)2010年 ★★★   
⑦食べなきゃ、危険!―食卓はミネラル不足(小若順一著)2010年     
⑧給食で死ぬ!!―いじめ・非行・暴力が給食を変えたらなくなり、優秀校になった      
長野・真田町の奇跡!!(大塚貢、西村修、鈴木昭平著)2012年     
⑨発達障害の原因と発症メカニズム―脳神経科学からみた予防、   
治療・療育の可能性(黒田洋一郎、木村・黒田純子著)2014年★   
⑩腸の力であなたは変わる   
デイビッド パールマター、クリスティン ロバーグ著)2016年 ★★★   
⑪いつものパンがあなたを殺す   
(デイビッド パールマター、クリスティン ロバーグ著)2016 年   

     

《補足②》クロス・クロール   
クロス・クロールは、同じ場所で足踏みするだけというシンプルな手法です   
(所要時間:1分)。   
(1)胸鎖関節すぐ下のポイント(鎖骨内側の骨が出っ張った所から1,2cm   
下。ほとんどの人はここに柔らかい部分、もしくは窪みがある)をタッピン   
グをして、あなたのエネルギーが間違いなく自然な方向に流れるようにして   
おきます(補足Ⅱ参照)。   
(2)立った状態で右腕を上に伸ばし、同時に左脚を上げます。   
(3)上げていた右腕と左脚を下げると同時に、今度は左手と右脚を上げます   
(この動作ができない人は、座ったまま右膝を上げ、左手で右膝に触ります。   
右膝を下げたら今度は左膝を上げ、右手で左膝に触ります)。   
(4)自分が心地よいと感じる速度で、同じことを繰り返します。   
ただし、今度は、脚の上げと腕の振りを大げさに誇張して行ってください。   
脚と腕をできるだけ大きく振りましょう。   
(5)最低1分間、この大げさな足踏みを続けます。   

     

*クロス・クロールの本質を一言で説明すると、「動きが誇張されたウォーキン   
グ」。これを行うと、右脳と左脳間のエネルギー交流が促進され、以下のような   
効果があります。   
◇バランス感がもたらされる。   
◇思考が明晰になる。   
◇より良い調整がなされる。   
◇エネルギーの調和がもたらされる。   
*クロス・クロールはあなたの左脳が情報を身体の右側に送り、右脳が情報を身体   
の左側に送っているという事実に基づいたテクニックです。もし、エネルギーを   
反対に伝達できない場合、身体に対して上下に動く、いわゆるホモラテラル(同   
側性)・パターンによってエネルギーが動き始めるようになります。このような   
状態になると、身体の治癒力が著しく減退してしまいます。   
*ホモラテラル・パターンは新生児にとって自然なものです。新生児のエネルギー   
は反対側に伝達されず、右脳は身体の右側を、左脳は身体の左側を司っていま   
す。そして、這い始めることによって、身体の反対側に向けてエネルギーが伝達   
されるパターンが作られます。幼児がはいはいできるようになると、急激に知能   
が発達し、学習曲線が急上昇する理由はここにあります(はいはいを全くしない   
幼児は、学習障害を持つようになることも多いのです)。幼児にとってのはいは   
いの重要性への着眼から生まれたこのクロス・クロールは、あなたの全てのシス   
テムをより効果的に機能させ、ヒーリングのプロセスをも促進してくれます。   
*私たち人間は毎日多くの時間、クロス・クロール運動をしています。歩くこと、   
走ること、泳ぐことはすべて自然なクロス・クロールです。しかし、今日の私た   
ちは座った状態でいることの多い生活を送っていて、自然が意図したこれらの動   
作をする時間がとても少なくなっています。その上、歩く時もあまりクロス・ク   
ロールの動きをしなくなっています。例えば、ショルダーバッグを持つと、腕が   
振りにくくなりますし、肩にある主要な経絡の流れを妨げてしまいます。けれど   
もクロス・クロールをすることによって、反対側への伝達パターンは回復します   
(比較的バランスが取れ ている人であれば、30~60秒も行えば元に戻るで   
しょう)。   
*クロス・クロールをすると元気になるどころか疲れてしまう人は、おそらくエ   
ネルギーがホモラテラル・パターンになっていて、片側の脳から反対側の脳へエ   
ネルギー伝達できない状態にあると思われます。そのような場合は「ホモラテラ   
ル・クロス・オーバー」(補足Ⅰ)を先に行って下さい。   

     

(補足Ⅰ)ホモラテラル・クロス・オーバー   
自分のエネルギーが適切にクロス・オーバーしているかどうかを調べる一つの方法は、クロス・クロールをしてみることです。クロス・クロールの動きが難しく感じられたり、片方の腕と反対側の脚を同時に動かせない場合、またはクロス・クロールをすると混乱したり、疲れてしまう場合、あなたはおそらくホモラテラル(同側)の状態にあります。そんなとき、   
・あなたの機能の効率は50%以下になっています。   
・あなたは明晰に物事を考えることができなくなっています。   
・身体の全てのプロセスは緩慢になるので、あなたはうつ状態に陥りがちになりま   
す。   
・感覚が鈍り、見たり、聴いたり、匂いをかいだり、触ったり、味わったりするこ   
とが以前ほど良くできなくなります。   
・身体的な健康を回復するためにどのようなことを行っても、その効果は長続きし   
ません(慢性的な疲労や病気があり、回復しない理由が分からないという場合に   
は、おそらくエネルギーがホモラテラルになっています)。
・あなたは歩いただけで疲労を感じるかもしれません。歩くことは自然なクロス・
オーバー効果 をもたらしますが、あなたのエネルギーがホモラテラルになって
いる場合には、歩くことはあなたのエネルギーの流れに逆らうことになってし
まうので、効果をもたらすはずの運動が逆にあなたを打ち負かしてしまいます。   
しかし、幸いなことに、エネルギーを再びクロス・オーバーさせることは難しくありません。まず最初にあなたの身体を現在エネルギーが流れているホモラテラルパターンに、物理的に調和させればよいだけです。すると、エネルギーが徐々にクロス・オーバーし始めます(所要時間:4分)。   

     

(1)以下の各ポイントに指をセット(補足Ⅱ参照)。   
a)胸鎖関節すぐ下(1,2㎝下。ほとんどの人はここに柔らかい部分もしく   
は窪みがある)   
b)胸腺ポイント(胸骨の中心にある。上記ポイントから約5センチほど下)   
c)脾臓ポイント(胸腺に置いた指を乳首に向けて移動し、更に真下に下ろ   
す。乳房のすぐ下にある肋骨の上がそのポイント)   
ゆっくり深い呼吸をしながら、このポイントを力強くタッピング、もしく   
はマッサージ(aは30秒、bは15秒、cは15秒)。こうすることで、   
ホモラテラルな状態の停滞したエネルギーに刺激が与えられます。   
なお、それぞれのポイントの正確な場所については、あまり神経質にならな   
くてもOK(およその場所を何本かの指でタッピングすればOK)。   
(2)天地結合をします(補足Ⅲ参照)   
(3)その場で足踏みをします。右手と右足を上げた後、左手と左足を上げるとい   
うようにしてください。この全課程を繰り返す間、深い呼吸を続けます。   
(3の手順は、座りながら行っても良いですし、横になって行っても構いませ   
ん。もし、身体の具合がとても悪かったり、四肢を動かせないほど衰弱して   
いる場合は、誰かにあなたの四肢を動かしてもらっても大丈夫です。でも、   
なるべく相手がいなくてもできるような方法を探してみてください。横にな   
ってこのエクササイズをする場合は、大きな枕の上に足を置いてもよいでし   
ょう。椅子に座って行う場合には、スツールに足を置いた状態で行うと、足   
をそれほど高く上げる必要がなくなります。このテクニックは楽に行ったら   
効果が得られないというわけではありません。自分自身に無理がかかると、   
エネルギーがホモラテラルに戻ってしまいますので、楽に行うことを心掛   
け、必要に応じていつでも休憩をとるようにしてください)。   
(4)手足をホモラテラルのパターンで上下させる動きを12回繰り返したら一度   
止め、今度はクロスクロールのパターンに切り替えます。つまり今度は右手   
と左足、左手と右足というふうに反対にあるもの同士を同時に上げること   
を、また12回繰り返して下さい。クロスクロールをするのが難しいと感じ   
られる場合、右手で左膝に触れ、左手を右膝に触れるだけでも構いません。   
(5)ホモラテラルを12回行った後に、クロスクロールを12回行うというこの   
パターンを、さらにあと2回繰り返してください。そしてその後、さらに   
クロスクロールを12回行うことによって効果を定着させます。   
(6)最後に1を繰り返して終わります。   

     

新しいパターンが構築されるまで、この一連の手順を一日2回行ってください。クロスオーバーのパターンが定着するまで10~30日かかるかもしれませんが、即座に感じられる効果もあると思います。病気が回復し始める、抑うつ状態が希望に満ちた感覚に変化するといった長期的な恩恵が得られることもあるでしょう。   

     

(補足Ⅱ)各タッピングポイントについての参考情報   
三か所のポイントにタッピングすると、疲れを回復させ、活力を高め、ストレスのさなかでも強い免疫力の維持を助ける一連の反応を引き起こします。   

     

a) 胸鎖関節すぐ下   
全ての経絡に影響を及ぼす要となるポイントです。   
このポイントにタッピングやマッサージをすると、より機敏に効果的に行動す   
るためのエネルギー調整を行うようにという信号が脳に送られます。以下のよ   
うな効果があります。   
・眠気があるときに、エネルギーをもたらす。   
・集中するのが困難な時に、集中力をもたらす。   
・難読症やその他の学習障害にも効果的   
・目の激しい移動を伴う他のあらゆる活動、例えばテニスや読書   
をする際にも効果的。なお、あなたのエネルギーの流れがすでに逆行していた   
場合、このポイントをタッピングすると、その流れが「ひっくり返る」、つま   
り正常化されます。   

     

b) 胸腺ポイント   
ネガティブなエネルギーに襲われたり、風邪・感染症にかかったり、もしくは   
その他の原因で免疫システムが試練に直面している時などには、この胸腺ポイ   
ントが役立ちます。あなたが自分の身体の必要性や仕組みにそぐわない選択を   
取り続けると、胸腺の監視機構は混乱してしまいます。そのような場合に胸腺   
を叩くと、監視機構が刺激されリセットされます。以下のような効果がありま   
す。   
・身体のエネルギーを目覚めさせる。   
・免疫力を高める。   
・体力と活力を増大する。   

     

c) 脾臓ポイント   
脾臓は免疫機能の中枢ですから、脾臓の神経リンパ反射ポイントをタッピング   
すると、あなたの身体の様々なリズムの足並みがそろい、エネルギーとホルモ   
ンに調和がもたらされ、解毒効果や感染への抵抗力などが生じます。また、ス   
トレスの最中やストレス後の不定愁訴の軽減、めまいの軽減、血液の化学作用   
の調整、食物代謝の向上なども起こります。以下の効果が迅速にもたらされま   
す。   
・エネルギーレベルの上昇   
・血糖バランスの改善   
・免疫力の向上   

     

(補足Ⅲ)天地結合   
このエクササイズは、脾臓を活性化して、全ての臓器とエネルギーシステムを調和させるスイッチを入れるだけではありません。強いストレッチをすることによって過剰なエネルギーを解放し、同時に細胞に新鮮な酸素を送り込んでくれます。経絡を開き、有毒なエネルギーを排出し、関節に新鮮なエネルギーが流れるように促します(所要時間:2分以内)。   

     

(1)両手をこすり合わせたあと、両手を振り払います。   
(2)両手を大腿の前面に置き、指を開きます。   
(3)息を深く吸い、孤を描くように腕を身体の横に広げます。   
(4)息を吐きだしながら、両手を胸の前に持ってきて、両手を合わせて祈りの   
ポーズをします。   
(5)もう一度、息を深く吸いながら左右の手を離していきます。一方の手はあな   
たの頭上の高い位置まで伸ばし、掌を後ろに反らして、何かを押し上げる時   
のような形にします。もう一方の手は下に伸ばし、同じように掌で同じ何か   
を地面に押し付けるときのような形にします。そして、天を見上げます。気   
持ちよいと感じられるだけ、この姿勢を保ってください。   
(6)口から息を吐きながら、再び両手を祈りのポーズに戻します。   
(7)今度は上げる手と下げる手を反対にして、もう一度同じ動作を繰り返しま   
す。ここのまでの動きを1セットと数え、さらに数セット繰り返してくださ   
い。   
(8)最後の一回が終わったら、両手を下に垂らしながら上半身を腰の位置で前屈   
させます。膝を少し曲げて、上半身をだらりとさせたまま、二回深呼吸をし   
ます。そのあと、両肩を後ろ向きに回しながら、ゆっくりと通常の立つ姿勢   
に戻ります。   

 
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